『原子力資料情報室通信』393号(2007.3.1)短信

『原子力資料情報室通信』393号(2007.3.1)短信

※情報は執筆時点のものです

■福島第一4号炉・出力変動をともなう原子炉水位異常で主タービン自動停止

 定期検査に入るため停止作業を行なっていた東京電力の福島第一原発4号炉(沸騰水型炉、78.4万キロワット)で、原子炉水位の異常により主タービンの保護回路がはたらき、主タービンが自動停止する、という事故が2月11日に起きた。
 同炉では2月11日午前0時に発電機を解列して原子炉の通常停止の操作を進めていた。発電の停止にともなって、発電所内のポンプなどへ送る電源を切り替える作業の際に、運転員が誤って原子炉給水ポンプの電源を切ってしまった。このため原子炉水位が一時急低下した。その後、水位を回復しようとしておこなった操作で原子炉水位が上がりすぎ、「原子炉水位高」の警報が出て午前0時26分に主タービンが自動停止した。
 福島第一原発の説明によると、この26分の間に原子炉の水位は(蒸気乾燥器スカート下端の位置から測った値)、通常の1150ミリの位置から、430ミリの位置に下がり、その後、タービン自動停止設定値である1500ミリに上昇したという。その間にも小刻みに上下に変動したものとみられる。この変動にともなって、原子炉の出力も、最初10%であったものが6%から23%の間で揺れ動いていることがあきらかになっている。原子炉は約4時間後に手動で停止された。
 福島第一原発では、今回の事故と類似の事故として、2号炉で1981年5月と1992年9月に、電源操作のミスから高圧復水ポンプ・給水ポンプなどが全部停止し、緊急炉心冷却装置が作動するという重大な事故が2度も起きている。

■東北電力:使用済み燃料で放射能計算を誤る

 東北電力が女川原発の使用済み燃料の放射能量と発熱量の計算で誤りをおかしていることが2月16日に明らかになった。女川原発では2月7日、低レベル放射性廃棄物の放射能濃度の検査装置でも設定ミスが発覚している。この不祥事をうけてコンピュータの点検中に、今回の設定ミスが確認された。このミスは約14年も前から続いており、誤ったデータの使用済み燃料が国内外の再処理工場に輸送されていたのである。同社の安全確認体制に大きな欠陥のあることは明らかだ。
 東北電力によれば、2006年度の第4四半期(2007年1月?3月)に六ヶ所再処理工場に輸送することになっている使用済み燃料88体のデータについて確認したところ、放射能量・発熱量ともに1割以上小さな値として計算していたこと がわかった。発熱量にいたっては、誤って計算した方を基に考えると約16パーセントも過小に評価していたことになる。これらの使用済み燃料の輸送は中止される可能性もある。
 間違いの原因について東北電力は、燃料の燃焼を計算するプログラムORIGEN2への入力データの指定を誤ったためと説明している。使用前の新燃料の段階でのデータの入力で、ウラン238とウラン235を取り違えて指定していたのだという。このプログラムは、国などの基準変更に伴ない93年5月に同社社員が改造しているが、この時点で作成ミスがあった、と東北電力は説明している。
 この計算ミスによって、93年以降約14年間もの長い期間にわたって、同原発から686体の使用済み燃料が、計11回、六ヶ所再処理工場、東海再処理工場、ラ・アーグ再処理工場(フランス)、ソープ再処理工場(イギリス)へ誤った放射能量と発熱量のデータによって搬出されていた。経済産業省原子力安全・保安院は同日、「ミスが長年放置されてきたのは遺憾だ」として、東北電力に対し原因究明と再発防止策の提出を求めている。
 東北電力は「使用済燃料輸送容器の制限値を十分下回っていることから、輸送に関する安全上の問題はない」としている。
 この使用済み燃料のデータは、再処理工場の再処理工程で、臨界の計算、処理する使用済み燃料の量の管理、排出する放射能量の計算・測定などに使われる。実際よりも10パーセントも低いデータでは、まったく使いものにならないばかりか、臨界事故のような大きな事故を引き起こす可能性もある。しかも今回問題になっているのは計算の中の話であり、計算が実際のものと合っているかどうか、また別の問題もある。(※計算値、制限値などの情報は東北電力URLのページを参照)

■スウェーデン・フォルスマルク原発でも放射能データ改ざん発覚

 スウェーデンのフォルスマルク原発で、いままで事業者(バッテンフォール社の子会社フォルスマルクグループ)が報告していた値よりずっと多い量の放射性物質が環境中に放出されていたことがあきらかになった、とスウェーデンの『Ny Teknik』誌の2月14日発売号が伝えている。それによれば、現在わかっているだけでも、2004年以降に放出されたストロンチウム90やセシウム137の量は、事業者の報告の3?4倍の量であったという。事業者が発表していた放出量は、故障した測定器による値であったらしい。
 フォルスマルク原発には3基の沸騰水型原子炉がある。2月2日の検査で、1号炉(101.6万キロワット)の格納容器のシール部に使われているゴム製のパッキンが、劣化していて密閉機能の基準を満たしていないことがわかった。半年以上にわたって欠陥のあるパッキンを使用していた。このため1号炉は運転を停止し、1号炉と同じ構造をもつ2号炉(101.6万キロワット)も2月3日に運転を停止された。
 パッキンは格納容器のドライウェルとウェットウェルをつなぐ部分に使われているもので、1号炉と2号炉に3つずつあり、1号炉に設置されているうちの1つに異常が見つかった。
 スウェーデンの原子力規制機関SKIは2月14日に、劣化していないものも含めて1号炉と2号炉のすべてのパッキンを交換するように指示命令を出した。
 フォルスマルク1号炉では、昨年7月25日に、原発の電気開閉所のトラブルから外部電源が喪失した際に、4基ある非常用ディーゼル発電機のうち2基が起動に失敗する事故が重なり、安全性が問題視されている。

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