クリプトン85は放射性のクリプトンで、自然界には存在しない-再処理工場の被ばくに影響のないものなどない!

クリプトン85は放射性のクリプトンで、自然界には存在しません-再処理工場の被ばくに影響のないものなどない!

 3月17日、青森県の『東奥日報』、『デーリー東北』紙上に、「青森県商工労働部資源エネルギー課」が『いっしょに考えましょう-原子燃料サイクル』という全面意見広告を掲載しました。その内容について、説明が不十分または誤解を招きやすいと考えられる点について、補足・解説します。

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【「青森県商工労働部資源エネルギー課」の意見広告】
●Q.1 再処理工場からはどんな放射性物質が出るの?
 A.1 再処理工場から出る主な放射性物質はクリプトン85、トリチウム、炭素14です。
  放射線を出す物質を「放射性物質」と言います。原子力発電所で使用した燃料を再処理するとクリプトン85、トリチウム、炭素14などの放射性物質が出ます。これらの放射性物質は、自然界でも絶えずつくられていて、もともと私たちの身の回りにあります。
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◆◆◆【クリプトン85は放射性のクリプトンで、自然界には存在しません】◆◆◆

◆放射線を出す物質を「放射性物質」といいますが、以下の解説では「放射性物質」と同様な意味で「放射能」と表記します。

◆自然界にクリプトンという物質は存在します。しかし自然界に存在するクリプトンは、クリプトン78、クリプトン80、クリプトン82、クリプトン83、クリプトン84、クリプトン86という6種類の、放射能ではないクリプトン(安定同位体)だけです。クリプトン85は放射能のクリプトン(放射性クリプトン)で、自然界に普通では存在しません。したがって、クリプトン85について言えば、【自然界でも絶えずつくられていて、もともと私たちの身の回りにあります。】という表現は明らかに間違いで、誤解を与えるものです。

◆放射能を持ったクリプトン(放射性同位体)はクリプトン85の他、クリプトン79、クリプトン81、クリプトン83m、クリプトン85m、クリプトン87、クリプトン88、クリプトン89などです。クリプトン85や他の放射能を持ったクリプトンは、核実験(核爆発)や原子力発電所の運転によって生み出される放射能(放射性物質)の代表的なものです。現在大気中で測定される放射性クリプトンの多くは、核実験(核爆発)や原発の使用済み燃料の再処理によって大気中に放出され存在するようになったものです。また放射性クリプトン81は、宇宙線によって生成され大気中に存在します。


高木『核燃料サイクル施設批判』p.173

◆放射能でないクリプトンは大気中の体積の0.000114%(1.14ppm)しか存在せず、地球上に存在する気体の中でも最も量の少ないものです。
しかし第2次世界大戦以降、核実験の実施、原子力発電や再処理工場の運転によって放射性クリプトン85の大気中の濃度はどんどん上がっています【図=大気中のクリプトン85の経年変化参照】。1955年から1970年の間に約15倍(北半球)に増加しています。この増加は核実験に起因するものでしたが、核実験が中止された70年代以降はほとんどが核燃料再処理工場を原因として増加しています。今日まで運転された大型の再処理工場は、英(セラフィールド)、仏(ラ・アーグ)など数ヶ所で、これらの工場によってそれ以前の核実験の量を上回るクリプトンが日々大気中に放出されています。六ヶ所再処理工場の運転によって大気中に放出される放射能の中でもクリプトン85は最大の量で、表1(下記参照)にあるように毎年3.3×10の17乗=330,000,000,000,000,000Bq(33京ベクレル)が六ヶ所村の上空に放出されます。放出の方法も、高さ約150メートルの排気塔から排風機を使って時速約70キロメートルの速さで大気中に放出されます。膨大な量の放射性クリプトンを放出するため放出口では許容濃度をはるかに超えているのですが、非常に高い排気塔から加速して排気し大気中に拡散することで薄めてしまうから、地上に降りてくるときに濃度が低くなり問題ないというのが国や日本原燃の説明です。

◆クリプトンは、無色無臭の気体状でしか存在しない放射能です。放射性のクリプトン85は半減期10.76年の放射能で、ベータ線を出して他の放射能(ルビジウム85)に変わります。気体なので閉じこめておくことが難しく大気中に漏れやすく、半減期が長いため大気中に蓄積するので、クリプトン85は大気中に貯蔵されるといっても過言ではありません。クリプトン85は原発の核燃料の中で発生し、再処理工場で最初に使用済み燃料を剪断(切断)する瞬間に開放されます。六ヶ所再処理工場では、開放されるクリプトン85を全量大気中に放出することになっており、毎年大量(330,000,000,000,000,000Bq=33京ベクレル)に放出され、広範囲な汚染を引き起こすと考えられます。またベータ線を出すので、工場周辺の住民の皮膚被ばくの原因となります。さらにチェルノブイリ原発事故の被ばく問題の解明から、血液中で染色体異常を起こす可能性も指摘されています。

◆クリプトン85を捕獲する技術は、東海再処理工場などでも開発され、回収作業が一部行われています。低温で吸着剤(活性炭など)に吸着させる方法です。六ヶ所再処理工場でも当初クリプトン85の回収施設が計画されていました。1988年に青森県議会に提出された資料(当時の北村知事名で出された「再処理施設予定地の地質に係わる『内部資料』」)には、「クリプトン処理建屋」が明記されていました。この資料には「トリチウム処理建屋」も記されていました。しかしこれらの施設は、費用がかさむこと、さらに回収したクリプトン85の貯蔵・処理などの問題が解決できないなどの理由から建設が放棄されてしまったのです。

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【「青森県商工労働部資源エネルギー課」の意見広告】
●Q.3 再処理工場から出る放射性物質の影響はどうなんだろう?
 A.3 再処理工場周辺で受ける放射線の量は、自然放射線よりもかなり小さいものです。
 再処理工場から出る放射性物質は、できるだけ取り除き排気筒(気体)や海洋放出菅(液体)から出されますが、その人体への影響は、最大でも年間約0.022ミリシーベルトと評価されています。
 (中略)
 この年間約0.022ミリシーベルトという値は、法令で定められた基準年間1ミリシーベルトの約50分の1、自然放射線の約100分の1、国内地域差の約10分の1です。再処理工場周辺で受ける放射線量は、私たちの日常生活には影響がないレベルと言えます。
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◆◆◆0.022ミリシーベルトは単なる計算値◆◆◆
 
◆六ヶ所再処理工場から放出される放射能は、気体、液体が下記の表のように放出されます。

表1

気体廃棄物中の放射能量
測定項目事業指定申請書記載の数値(Bq/年)
クリプトン853.3×1017
トリチウム1.9×1015
炭素145.2×1013
ヨウ素1291.1×1010
ヨウ素1311.7×1010
その他核種 
α線を放出する核種3.3×108
α線を放出しない核種(注1)9.4×1010
(注1)クリプトンー85以外の希ガス、ヨウ素-129、131以外のヨウ素は除く

表2

液体廃棄物中の放射能量
測定核種判定基準(Bq/年) (事業指定申請書記載の数値)
トリチウム1.8×1016
ヨウ素1294.3×1010
ヨウ素ー1311.7×1011
その他核種 
α線を放出する核種3.8×108
α線を放出しない核種2.1×1011

◆国や事業者、青森県は【再処理工場から出る放射性物質は、できるだけ取り除き】としていますが、クリプトン85の例にあるように、技術的に除去可能な放射能の除去を日本原燃は怠っています。また国もそれを認めています。気体廃棄物としては表1にあるようにク放射性リプトン85が33京ベクレル、トリチウム(三重水素:放射能の水素)は1900兆ベクレル、放射性炭素14が52兆ベクレル、放射性ヨウ素が280億ベクレルなどです。これらの放射能は、高さ約150メートルの排気塔から排風機を使って時速約70キロメートルの速さで大気中に放出されます。

◆同様に廃液として海に捨てられる放射能は表2にあるように、トリチウムが1.8京ベクレル、ヨウ素2130億ベクレルなどです。六ヶ所村の沖合3キロ、水深44メートルに設置された海洋放水管の放出口からポンプを使って時速約20キロで放出され、十分に希釈されるのでこれも安全性に問題はないというのです。

◆放射能の量というのはほとんど計算です。しかし問題は例えば「計算コード(ORIGEN)」の信頼性や、様々な入力数値の誤差の考え方、仮定の不確実性などさまざまにあります。何重もの仮定と計算コードを使って仮定に仮定を重ねた計算をするという評価の方法は、確実なものではありません。これらの仮定が正しいのか、はっきり実証されているデータはわずかです。さらにこの不確実な放出放射能量から、国や日本原燃はさらに恣意的な仮定を重ねて年間0.022mSv(22マイクロシーベルト)という被曝量を計算し「問題ない」と言っています。放出量さえこの値に収まる保証もなく、被ばく量は事業者の都合のよい条件で計算したものでしかありません。

◆放出放射能量は単なる計算値にすぎず、この値に収まる保証はどこにもありません。国の計算は、例えばヨウ素フィルターは99.9%の効率で放射能を除去する前提で計算されていますが、フィルターがこのとおり機能するかどうかわかりません。さらに排気塔や放水管から放射能が放出されると、それはどこかへ飛ばしたり流してしまうだけで、放射能が無くなるわけではないのです。むしろ放射能を拡散することによって、汚染を青森県以外の広い範囲に拡大することになります。飛ばしてしまう放射能、流してしまう放射能は、どこでどのような汚染や被ばくを引き起こすのか、調査されてもいません。

◆六ヶ所再処理工場から排出される放射能は、すべて原子力発電によって生み出されたものです。ほとんどのものは、自然界には存在しない人工放射能です。なぜ【法令で定められた基準年間1ミリシーベルト】という”被ばくの基準”があるかと言えば、日本で55基もの原子力発電所を運転しているため、自然放射線以外の人工放射能による被ばくを予定しなければならないからです。日本に原子力発電所や再処理工場がなければ、このような放射能からの被ばくを問題にする必要もなく、法律で被ばく量を定める必要もないのです。

◆被ばくに許容量などない!

 さらに一番重要なことは計算の値がどのようなものであっても、「被ばくが認められる量」などというものはない、ということです。【自然放射線の約100分の1】や【法令で定められた基準年間1ミリシーベルトの約50分の1】の比較は、それがどのような数値であっても六ヶ所再処理工場の稼働によって、毎年毎年これだけの被ばくを六ヶ所村の人々に押し付けるものです。さらに国の審査の対象にならなかった、膨大な量の”飛ばしてしまう放射能、流してしまう放射能”については、全く考慮されていません。これらの放射能は必ず自然の中で汚染を引きおこし濃縮され、人間社会に戻ってくるのです。このような汚染や被ばくを強要することなど、誰にも許されないことは自明です。