原子力資料情報室声明:九州電力川内原発1・2号炉への発電用原子炉設置変更許可処分は違法であり無効である
九州電力川内原発1・2号炉への
発電用原子炉設置変更許可処分は
違法であり無効である
2014年9月17日
NPO法人原子力資料情報室
2014年9月10日、原子力規制委員会(以下、規制委)は、「九州電力株式会社川内原子力発電所の発電用原子炉設置変更許可申請書(1号及び 2号発電用原子炉施設の変更)に関する審査書」(以下、審査書)を全会一致承認、発電用原子炉設置変更許可処分を行った。
審査書については、規制委が7月16日に案を承認し、7月17日から8月15日までパブリックコメントを実施していた。パブリックコメントには17,819件の意見応募があったが、承認された審査書は若干の文言修正は見られるものの、ほぼ原案どおりの内容である。
今後、工事計画認可、保安規定変更を経て審査は終了することとなる。しかし、パブリックコメント応募意見においても多数の指摘がある通り、今回の審査書には大きな欠陥がある。
特に、原子力防災計画を今回の審査書の対象外としていることは、福島第一原発事故の教訓を踏まえて、事故の発生を想定して住民の生命、健康、財産の保全を達成するとした規制委設置法1条および組織理念に反している。また、震源を特定して策定する地震動の策定において、プレート間地震および海洋プレート内地震について過去実績を材料にして検討対象外とした九州電力の対応を審査書が追認したことは規制委規則第5号に違反している。
よって、そのような欠陥のある審査書に基づいて出された今回の処分も、当然無効であると私たちは考える。
また、規制委は、2013年6月に新規制基準を策定し、それに基づいて今回審査を行ったが、福島第一原発事故の原因調査は事故から3年半を経た今なお完了しておらず、不明点も数多く存在する。パブリックコメント応募意見にはそのような新規制基準の不十分性を指摘するものが数多く見られた。
応募意見への回答では「東京電力福島第一原子力発電所事故を踏まえた知見は新規制基準に反映」されているとしているが、規制委は、こうした指摘に対して、真摯に対応するべきである。
なお、国は規制委により川内原発の安全性は確認されたとして再稼働を進める方針を掲げるが、地元同意を得る手順については法的には規制する権限はないとして示さず、実体的には、事故前に締結された九州電力と鹿児島県、薩摩川内市の安全協定に一任している。
一方、福島第一原発事故後、避難計画を策定する必要がある原子力災害対策重点区域は5kmから30kmに拡大され、多くの自治体は電力会社に立地自治体並みの安全協定締結を要求していたものの、電力会社は言を左右にして受け入れを拒否している。そのため、たとえば、30kmに市全域が含まれるいちき串木野市で住民の過半数が再稼働に反対し、市域の一部が含まれる姶良市も市議会が再稼働に反対する決議を行っているにもかかわらず、こうした声が川内原発再稼働の諾否に及ぼす影響力は極めて限定的なものに留まっている。
しかし、原発の再稼働は国や電力会社ではなく、再稼働に大きく影響を受ける市民・住民こそが最終的な決定権を持つべきである。
よって、国は原子力災害対策重点区域の範囲内にある自治体が立地自治体並みの安全協定を電力会社と締結できるよう働きかけるべきである。また、当該自治体は、原発の再稼働にかんする住民投票条例を策定するべきである。
以上