原子力長計策定会議意見書(第10回)

長計策定会議意見書(10)

2004年10月14日
原子力資料情報室 伴英幸

1.マスコミ先行報道への文書による抗議を行ってください。
2.結論の前に再処理路線へ進んだ場合のリスクを議論すべきです。
3.六ヶ所再処理工場か稼動させてはなりません。再処理政策を転換するべきです。
4. 市民から寄せられた意見を適宜まとめて策定会議に報告してください。また、全文はホームページで公開してください。

1.  10月7日付日本経済新聞報道に対しても文書による抗議を行なってください。

10月18日の共同通信が報じた記事および「原子力委員会は使用済み燃料を再利用する再処理政策を維持する方針を固めた」と報じた10月7日の日経新聞の記事に対して、文書で抗議してください。前者については、委員には事実無根の文書が配布されました、また、後者については策定会議の席上、口頭で抗議があったのみで、文書抗議が出されていません。策定会議が蔑ろにされ、これから議論して決定することを、原子力委員会の方針として2回にもわたって報道されることは異常事態というほかありません。文書による抗議を行なってください。

2. 六ヶ所再処理工場の稼動がうまくいかず、破綻状況に至った場合のリスクについてはなんら議論が行なわれていません。その議論をなしに結論を出すことはできません。

2-1. 隠蔽されてきた直接処分コストをめぐる議事録を読みますと、核燃料サイクル政策に都合の悪いデータを隠蔽する様子が伺えますが、このことは同時に、直接処分方式の研究開発を封じてきたことを示しています。再処理工場の建設にあたり、電力会社は経営資材を割いてでもサイクル路線を進めるべきだと主張していましたが、この策定会議では再処理は事実上の義務であったと責任を国に押し付ける発言をしています。他方、再処理が国の現行の基本政策であることも事実です。
六ヶ所再処理工場の同工場の稼動がうまくいかないことは、推進している人たちでさえ心配の種になっていることです。同工場が破綻状況に陥る可能性は高く、その場合に誰が中止の判断をするのか、責任の所在を明確にしておく必要があります。

2-2. 六ヶ所再処理工場から抽出されたプルトニウムの利用計画はまったく不透明です。1998年に電気事業連合会が公表した海外貯蔵プルトニウムの利用計画すら、住民の反対で実現していないのが現状です。余剰プルトニウムを持たないという日本の国際公約を守るために、六ヶ所再処理工場の稼動を強行しても、実際には操業できない事態になると考えます。机上の利用計画があれば余剰ではないという理屈は成り立たないと考えます。この点も明確にしておく必要があります。

3. 六ヶ所再処理工場の稼動を前提としたシナリオ1およびシナリオ2は取りうる選択肢ではありません。安全性の面、コスト面、核不拡散の面などから再処理路線を転換するべきです。 

3-1. 安全性:ExternEに基づくシナリオ評価では、300年評価については割引率3%と10%で行っているのに対して、10万年評価では割引率0%で行うことで、再処理による核分裂生成物の環境放出を意図的に低く扱っています。しかも、直接処分の場合の線量ピークが2万年あたりに出てくるのに対して、ガラス固化体の安全評価(核燃機構2000年レポート)では80万年後あたりにピークが来ることを考えると、ExternEの評価が適切かどうかはなはだ疑問です。さらに、再処理に伴う集団被曝線量が自然放射線による被曝線量の10億分の1というのも、事業許可申請書による被曝線量評価(その評価にも疑問がありますが )、からすれば疑問が多く、判断の根拠とすること適切ではないと思います。
古川論文(参考1)は六ヶ所再処理工場から放出される放射性物質について詳述しています。日常的に放出される放射性物質によって、地元住民はその環境下に晒されて生まれてから一生をすごすことから、放射性物質による人体への影響が心配されます。これらの影響に関する議論は分かれているものの、非再処理シナリオとの比較では、確実にリスクは高くなます。このように放射性物質を環境に放出するシステムを「リサイクル」と呼ぶことは誤りです。

日本原燃はこれまでの不始末から、再処理工場の運転者としての資格がないと考えられます。第1に、使用済み燃料受け入れプールの不正溶接を見抜くことができなかった。第2に、建設費の高騰を止める有効な手段を持ち得なかった。安全面でも経営面でも事業者としての資格が疑われます。仮に日本原燃がこのまま再処理工場を運転するなら、大事故の恐れは高いといわざるを得ません。シナリオ1、2では、再処理工場のみならず、MOX燃料加工工場の事故リスクも増大します。また、シナリオ1は将来の高速増殖炉の開発を夢見るものですが、1995年の「もんじゅ」事故に見られるように、研究開発過程での事故リスクも増大します。規制があるから安全が確保されるという考えは、度重なる事故をみれば破綻していることが明らかです。
さらに、2001年9月11日以降は確率論的な事故評価だけでは十分でなくなりました。原因のいかんにかかわらず、大事故による災害は非常に大きなものになります 。

3-2. コスト:技術検討小委員会で明らかになったことは、トラブルなしと仮想してすら再処理のコストが直接処分にくらべて非常に高いということです。その結果、再処理路線に進むことで消費者負担が増加します。
増加する消費者負担に対して、再処理が止まれば原発が止まるといった無為無策による火力の焚き増しを対置し、それによる消費者負担増と比較することは、無責任極まりない恥ずかしい論理です。このような稚拙な論理で政策を決定しても、原子力に対する「国民合意」は得られません。平山前新潟県知事は、長計へのご意見を聞く会(9月28日)において、原子力への国民理解が未だに進んでいないと明快に発言されたことを真摯に受け止めるべきです。
使用済み燃料対策は、情報を隠蔽してまで強行に再処理政策を進めてきた国および事業者の責任において、誠意をもって手順を踏んで対応策を決めていくことだと考えます。

3-3. 上にも述べたように、六ヶ所再処理工場の稼動を強行して、稼動が予定通り進まなかった場合のリスクについてはまったく検討されていません。仮に、年間処理量が半分になった場合、コスト検討小委員会に出された資料を基に計算すると、再処理コストは23,500万円/t から44,200万円/tまで、約2倍に上昇します(参考2)。
 また、日本原燃の2003年度の損益計算書によれでは同社は189億円の赤字であり、累積赤字は572億円に達しています。同社に対する債務保証を行っている電力各社は、今後、ウラン濃縮料金や再処理料金などの値上げをしなければならないのではないでしょうか。再処理が予定通りに進まなかった場合には、さらにそれらの料金の値上げになるのではないか、さらに、事業が成立しない場合の国民負担は施設が放射能で汚染されていることを考えると、さらに大きくなると推察します。これらの費用は結局は消費者に転嫁されるのではないかと思います。

3-4. シナリオ間総合評価
 以下に、伴の評価結果を示します。また、各視点からの基本シナリオの評価の要約(案)に対する意見を参考3)に、特に環境適合性に対する意見を参考4)に掲げました。参照ください。

4. 市民から寄せられた意見を適宜まとめて策定会議に報告してください。また、全文はホームページで公開してください。
 原子力委員会は一般市民からの意見を常時募集しています。その中には策定会議への意見や要望も含まれます。そこで、策定会議の議論に市民の意見を反映させるために、適宜その内容をまとめてお知らせください。また、ご意見・ご要望の全文を同委員会のホームページで公開してください。