原子力資料情報室声明 東京電力は原子力発電から手を引くべきだ -5年間隠されたメルトダウン記述のマニュアル-
原子力資料情報室は、2月29日、以下の声明を発表しました
東京電力は原子力発電から手を引くべきだ
-5年間隠されたメルトダウン記述のマニュアル-
2016年2月29日
NPO法人 原子力資料情報室
報道によれば、メルトダウンの判断を記述したマニュアルが存在していたことを東京電力は、2月24日、5年たって初めて認めた[i]。新潟県知事および「新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会」(以下、「新潟県技術委員会」)のこの間の追及に答えた、というものである。
2002年の「東京電力のトラブル隠し事件」を契機に、東京電力柏崎刈羽原発をかかえる新潟県は、東京電力の隠ぺい体質を批判し、原発の安全確保のためにさまざまな努力を重ねてきた。2007年の中越沖地震によって柏崎刈羽原発が大きく被災して以来、原子力に批判的な研究者にも参加を求め、「新潟県技術委員会」の充実を図ってきたところである。
ところが2011年3月11日の地震が引き起こした福島第一原発のシビアアクシデントの検証と総括がなされないまま、東京電力は経営上の判断で、柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働へむけて新規制基準適合性審査を原子力規制委員会に提出し、その規制委員会における審査は終盤を迎えている。
「新潟県技術委員会」は福島事故の検証と総括のために、「地震動による重要機器の影響」、「メルトダウン等の情報発信の在り方」、「シビアアクシデント対策」など、6つの課題について3・11以後、真剣で慎重な審議を続けてきていた。
原発に関するすべてのデータはほかの誰でもなく、事業者自身が持っている。事業者が隠し、あるいは改ざんすると、その発見はきわめて困難である。だが東京電力は、たび重なる新潟県からの要請を軽視あるいは無視し、メルトダウンを判断する記述のあるマニュアルは存在しないと回答し、「新潟県技術委員会」の審議にきちんと対応してこなかった。
東京電力は、まだ幾つもの問題に非協力の態度をとりつづけている。これですべてなのかどうか、規制する側には判らない。そうかんがえると、福島第一原発でシビアアクシデントを引き起こした責任を東京電力が感じているとは到底おもわれない。
東京電力は、2002年のトラブル隠し、2007年のデータ改ざん等を繰り返すたびに、企業倫理、法令の遵守、安全・品質管理、透明性の向上に全力で取り組んできたはずだった[ii]。しかし、今回メルトダウンマニュアルが存在したことが発覚した。東京電力の経営者、技術者そして全体の組織として、原発を安全に運転し管理する能力が無いということである。
東京電力の隠ぺいと改ざんの禍を絶つために、そしてまた、社会に責任と信用をとりもどすために、東京電力は原子力から手を引くべきである。それが県民だけでなく、事故時に広範な範囲で被害と影響をうける住民・市民のためにもっとも安全・安心な行為である。
東京電力の経営の都合で原発を再開するなどは、もってのほかである。
以上