「『高速炉開発の方針』の骨子(案) 」は白紙撤回するべき
「『高速炉開発の方針』の骨子(案) 」は白紙撤回するべき
2016年12月5日
NPO法人原子力資料情報室
2016年11月30日、第三回高速炉開発会議において、資源エネルギー庁が「『高速炉開発の方針』の骨子(案) 」を提示した。2018年をめどに新たな高速炉の工程表を策定するなどとしたこの案を、経済産業大臣、文部科学大臣、日本原子力研究開発機構理事長、電気事業連合会会長、三菱重工業社長で構成された会議は概ね了解した。
私たちは、この骨子案のあまりの非論理性に驚愕を禁じ得ない。このような案を了承した会議に強く抗議する。
そもそもこの高速炉開発会議が編成されたのは、高速増殖原型炉もんじゅの開発の行き詰まりにあった。もんじゅは1992年に試験運転を開始してから、トラブルを繰り返してきた結果、稼働したのは5300時間(221日)、発電したのはわずか883時間(37日)だ。一方、投じられたコストは1兆410億円(内民間拠出は1382億円)に上る。廃炉にはさらに3000億円と30年の期間を要すると推計されている。
このような無残な失敗に終わったもんじゅ計画は、高速増殖炉開発の困難性を如実に示すものだ。1960年代、原子力を夢見た国々はこぞって高速増殖炉開発に乗り出した。燃料となるプルトニウムを消費しながら生み出すと考えられた高速増殖炉は、当時夢の原子炉と期待されたからだ。しかし、今日に至るも実用化された高速増殖炉は存在せず、開発段階の高速増殖炉を保有するのもロシア、中国、インド、日本のみだ。他国は繰り返されてきた事故やコスト、技術的な困難さなどから、いずれも撤退してきた。
今回の骨子案は、高速増殖炉から高速炉に看板を架け替え、開発を継続するという。しかし高速炉と高速増殖炉にちがいはほとんどない。高速増殖炉は高速炉の一種だからだ。
資源エネルギー庁は高速炉開発の意義を「高レベル放射性廃棄物の一層の減容化・有害度低減」、「資源の有効利用」、「技術・人材基盤の確保と安全な高速炉開発への貢献」にあるという。しかし、これらはいずれも高速増殖炉の意義としてうたわれてきたものだ。放射性廃棄物の減容化・有害度低減にしても、資源の有効利用にしても、大量の高速炉の新設・増設がなければ効果を発揮しない。また、高速炉では「高い『安全性』と『経済性』の同時達成を追求」するという。しかし、通常の原発でさえ、安全性対策、建設期間の長期化などから、建設コストは年々増加してきた。高速炉という、事故を繰り返してきた原発が、安全性と経済性をどうやって同時達成するというのか。
会議は、もんじゅが廃炉に至ったという現実を真摯に受け止めるべきだ。もはや、核燃料サイクル政策を維持することは不可能だ。これ以上、このような破たんした政策を継続することこそ、次世代につけを残すことになる。会議はこのような弥縫策に過ぎない骨子案を白紙に戻し、核燃料サイクルからの撤退を決断すべきだ。