【原子力資料情報室声明】高速増殖原型炉もんじゅ廃炉決定 ―政府は現実を受け入れ、核燃料サイクルから撤退を―

高速増殖原型炉もんじゅ廃炉決定
―政府は現実を受け入れ、核燃料サイクルから撤退を―

2016年12月21日
NPO法人原子力資料情報室

 2016年12月21日に開催された第6回原子力関係閣僚会議は、高速増殖原型炉もんじゅの廃炉を決定した。まずはこの決定を率直に歓迎したい。
 振り返ればもんじゅは、1983年に原子炉設置許可を受け、1992年には試験運転を開始した。しかし、それから24年間で稼働したのは僅かに5300時間、内、発電したのは883時間であった。一方でコストは1兆410億円、今後、廃炉には3,750億円超を要し、2047年までかかるとされる。壮大な無駄遣いだったが、過酷事故を引き起こすこと無く最後をむかえることができることは幸運に恵まれていたといえる。
 一方、同会議は高速炉開発については、ロシアのBN-800が商用発電をおこない、フランスがASTRIDの開発を進めているとし、今後もフランス、米国などとの国際協力のもと、継続するとした。そのうえで開発の3つの目標と4つの原則を提示している。すなわち【目標1】安全性の向上、【目標2】経済性の追求と市場環境への適合、【目標3】国際協力を通じた最新知見の獲得、そして【原則1】国内の人材・技術などの資産の徹底活用、【原則2】.世界最先端の知見の吸収、【原則3】コスト効率性の追求、【原則4】責任関係を一元化した体制、である。
 しかし、高速炉開発は事故の歴史であった。たとえばロシアの高速増殖原型炉BN-600では27回のナトリウム漏れを経験し、そのうち14回はナトリウム火災に至っている。フランスの高速増殖実証炉スーパーフェニックスも繰り返しトラブルが生じた結果、ほとんど稼働できないまま廃炉に至っていることを忘れてはならない。小さい事故にとらわれていては高速炉開発を進めることはできないと主張する一部の高速炉推進論者が存在するが、高速炉で扱われるのは反応性の高いナトリウムであり、ウランやプルトニウム、超ウラン元素である。『小さな事故』が大きな惨事に発展しない保障はどこにもない。
 経済性の追求においても、高速炉はそれ単体で構想されるものではなく、再処理施設やMOX燃料加工施設などを含む核燃料サイクル全体で考えられなければならず、そうしたコストを外部化した形で経済性の追求と言ってみたところで、まさに机上の空論に過ぎない。
 また国際協力による知見の獲得についても、それによって開発が円滑に進むようになるとは限らないことは、海外の技術を多く導入した六ヶ所再処理工場の稼働が延期に次ぐ延期を重ねてきたことからも明らかだ。
 高速炉開発は1956年策定の最初の原子力長期計画でも開発の必要性が記載されていた。それから60年間積み重ねてきた決定、そして開発のために生み出された様々な組織、こうしたものを覆すことは容易ではないだろう。しかし、高速炉は開発したところで導入される可能性がほとんどない。そのようなものに事故のリスクを負ってまで、今後コストを投じていくことに一体何の意味があるのだろうか。もんじゅを廃炉にした以上、高速増殖炉を軸とした核燃料サイクルが回ることはない。今こそ、政策を転換すべき時だ。

以上

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