【原子力資料情報室声明】フランスの高速炉開発の終わり 日本も断念を
フランスの高速炉開発の終わり 日本も断念を
2019年9月12日
NPO法人原子力資料情報室
8月31日、CEA(原子力・代替エネルギー庁)は、仏のルモンド紙の報道を認める形で、高速炉ASTRID(Advanced Sodium Technological Reactor for Industrial Demonstration)開発計画の終了を明らかにした。今年中は概念設計が行われるが、それ以降は短中期的に建設する計画は立てない。ウラン価格の低迷や豊富な埋蔵量から、コスト高な高速炉の開発は正当化できないという。CEAのこの決定を歓迎したい。
ASTRIDは、2006年に制定された「放射性物質および廃棄物の持続可能な管理のための計画法」に基づいて、当初、2020年に運転開始するはずだった。しかし直近のスケジュールでは運転開始は未定となっていた。さらに、規模についても当初の60万kW級から10~20万kW級に縮小、さらに報道によれば昨年、計画の終了について日本政府にも伝えていたという。
日本は高速増殖炉もんじゅの廃炉をうけ、ASTRID計画に相乗りしてノウハウを蓄積し、将来的な高速炉建設につなげたいとしてきた。しかし、フランス側の消極姿勢を見て、2018年末に決定された高速炉開発にかんする「戦略ロードマップ」においてはASTRIDの文言はない。代わりに、3ステップの開発方針なるものが示された。内容は、①当面5年間程度は多様な技術間競争を促進、②採用する可能性のある技術の絞り込み、③現実的なスケールの高速炉の運転開始に向けた工程の検討、というものだ。
だが内実はどうか。技術間競争を促進というが、国家予算を見る限り、十年一日の予算措置しか行われていない。もんじゅが廃炉となる前から、いまも変わらず、高速炉開発には、FBRサイクル技術の実証・実用化に向けた技術開発、発電用新型炉等技術開発委託費、高速炉に係る共通基盤のための技術開発委託費などと名義を変えながら、30億円から50億円の予算措置が行われてきた。この予算は原子力研究開発機構に委託されたのち、大半は三菱FBRシステムズに再委託されてきたが、これも変わっていない。
第3ステップにしても、「市場メカニズムが適切に働かない場合には、長期にわたる国民の利益が確保されることを検証した上で(中略)適切な規模の市場補完的な制度措置が必要」として、一定の留保があるものの、高速炉開発を補助金で維持する方向性が示されている。
高速(増殖)炉が経済的にも、「エネルギー安全保障」上も説明できないことは自明の理だ。国の高速炉開発計画は、一研究機関、一私企業の部門存続のための補助金にすぎない。日本も速やかに高速炉開発を断念すべきだ。
以上