【原子力資料情報室声明】 台湾2025年までにアジア初の「脱原発」へ ―ともにアジア脱原発の潮流をつくろう―

【原子力資料情報室声明】台湾2025年までにアジア初の「脱原発」へ ―ともにアジア脱原発の潮流をつくろう―

2017年1月17日

NPO法人原子力資料情報室

 

 2017年1月11日、台湾で2025年までの脱原発を定めた電気事業法改正案が、国会に当たる立法院(一院制)で可決、成立した。アジアで初となる脱原発を決めた台湾の選択を強く歓迎する。

 1999年に台湾民主進歩党(民進党)が、日本から輸出される第4原発の廃止と脱原発を掲げて政権を取った。そして「非核家園(Nuclear Free Homeland)」構想を立案、将来の脱原発を明確にした。この間、No Nukes Asia Forum(NNAF)を共催するなど、当室も日本の原発状況や耐震問題、数々の事故の状況や原因等を伝え、「非核家園」の実現に協力してきた。しかしながら立法院における議会構成問題やその後の国民党政権への移行などで直ちには実現しなかった。

 台湾では第1原発~第3原発で6基の原子炉(2基は停止中、1基は点検中)が稼働しているが、東日本大震災による福島第一原発事故で反原発への世論が高まり、各地でデモが続いた。日本と同じ地震多発国として市民の不安を受け、当時の馬英九政権(国民党)は、完成間近だった第4原発の建設を2014年4月に凍結した。

 2016年1月の総統選では、民進党の蔡英文主席が「2025非核家園(2025年までに原発のない郷土を)」と公約に掲げて当選。8年ぶりの政権交代を実現した。そして今回、蔡英文政権のもとで全原発を廃炉にする法律改正案を立法院が可決した。台湾の脱原発市民団体は、「全面廃核」などをスローガンに掲げて、長年にわたり反核運動を闘ってきた。その運動が、2011年3月の福島原発事故後に世論を一気に押し上げた結果だ。

 今後は、台湾第一原発1号機が2018年12月に40年の運転期限を迎え、その後2025年5月までに順次、稼働中の全原発が運転期限を迎えて廃止となる。電気事業法では、「2025年までに原発全てを停止する」と定め、運転延長や新規稼働を認めていない。

 台湾では、電源構成(2015年)で14%を原発が占めているが、改正された電気事業法では、代替となる再生エネルギーを現在の4%から2025年に20%まで引き上げる。それを実現するため、台湾電力が独占する電力事業への民間参入を認め、再生エネルギー事業への民間参加を促す。台湾電力の発電と送電を分社化し、再生エネルギーの発電と売電を自由化、火力など他の電力も自由化する計画だ。蘭嶼島にある低レベル放射性廃棄物貯蔵施設の移転計画も進める。

 福島原発事故後、欧州ではドイツ、スイス、イタリアなどが脱原発の方針を決めている。アジアでは2016年11月にベトナムで、日本などの受注が決まっていた原発の建設計画を白紙撤回している。日本でも、原発再稼働への懸念は強く、鹿児島と新潟の県知事選挙では反原発の民意が圧勝した。にもかかわらず、政府は原発再稼働の方針を続けている。原発事故が起きた日本において、原子力政策に大きな変化がないのはなぜだろうか。アジアで脱原発のリーダーとなった台湾の選択を見習い、日本も世論を反映させて脱原発へと舵を切り、アジア脱原発の潮流をつくりだしたい。 

以上

 

2016年3月23日、NNAF2016(福島県いわき市)で脱原発スローガンを掲げる陳曼麗議員(台湾立法委員・写真左)と葉慈蓉氏(臨門一脚志工団・写真右)