【原子力資料情報室声明】事故から6年、フクシマの切り捨てがすすむ(共同代表 山口幸夫)

福島原発事故から6年を迎えるにあたり、原子力資料情報室は3月10日、以下の声明を発表しました。

事故から6年、フクシマの切り捨てがすすむ

                                                                      2017年3月10日

                                                                     NPO法人 原子力資料情報室

この11日で悪夢の事故発生から満6年を迎える。事故は解明されたか。犠牲者がさらに増えることはないだろうか。人々の暮らしの見通しは立ったであろうか。もはや二度と原発事故は起きないだろうか。残念ながら、どれも否である。あの11日の午後7時3分に発令された「原子力緊急事態宣言」は現在も解除されていない。

3月12日に爆発した1号機の爆発の経緯は今もって明らかではない。どれだけの水素がどういう経路で漏れ、どこで爆発したか。新潟県だけが公開の技術委員会で検証作業を続けている。さる2月9日の議論でも、東京電力の主張には矛盾があり、委員たちからの疑問に答えられず、さらなる調査を続けると言う。

2号機もメルトダウンしたが、何も起きなかったかのような外見である。東京電力は事故から6年近くたった2月9日にロボットカメラを格納容器に入れて、600シーベルト/時もの高線量を計測した。16日には、切り札の調査ロボット「サソリ」を送り込んだが、圧力容器に到達する前に堆積物に妨げられ、わずか2メートル進んで動けなくなった。格納容器の中で場所によって20~650シーベルト/時を示す線量のバラツキは、計測が正しいとすればだが、成分がさまざまなデブリが広く不規則に散乱したことを示唆している。廃炉への計画は大きくずれるだろう。

研究者のあいだでは、事故に由来するセシウムを含んだ球状の微粒子(セシウムボール)の成分の研究が進んだ。この微粒子は福島第一原発から170キロメートル離れたつくば市のエアロゾルの中で見つかった。原発近くの土壌や水路でも見つかっている。ミクロン単位のガラス状の粒子の中には、鉄、亜鉛、クロム、ルビジウム、モリブデン、ウラン他が含まれていることが分かった。このボールの成因が解明されると、事故原因や事故プロセスの理解に役立つかもしれない。そして、このセシウムボールには、1グラム当たり約1011ベクレルという極めて高い放射能があり、環境汚染が心配である。

事故から6年たって放射線量はどこまで減ったか。セシウム134の半減期は約2年なので、2分の1、つまり、事故時の約13%になったわけである。だが、セシウム137の半減期は約30年なので、87%が残っている。環境省によれば、除染は東北・関東の7県57市町村で3月末までにほぼ終わるとされている。しかし、87%はどこに行ったのか。放射能が時間に関係なく除染によって消える、ということはない。

福島県富岡町は原発事故で全域が避難区域になった。この4月1日に帰還困難区域を除いた地域の避難指示を解除する政府案に対して、「帰りたい」と回答した世帯は16%でしかない。昨年7月までに解除された5市町村での帰還率は楢葉町の11%、南相馬市の14%、葛尾村9%、川内村21%で、田村市だけが72%だった。田村市は対象地域がごく一部だったからである。

避難区域外から「自主避難」した人たちは全国に散らばっている。この人たちのうち2012年12月以前に県外に避難した1万500世帯に、福島県がしていた住宅無償提供をこの3月で打ち切る方針である。理にかなった根拠らしきものは無いにもかかわらずだ。20ミリシーベルト/年なる基準は、ほかに手の打ちようがなくなった緊急時における目安でしかない。(山口幸夫)