2017/04/28外務委員会傍聴メモ(日印原子力協力協定にかんする参考人)

傍聴メモ:

外務委員会 4月28日(金)9.00-11.00 

原子力資料情報室

ケイト・ストロネル

 

※発言はすべてメモであり、正確な発言内容は衆議院インターネット審議中継のビデオライブラリー、もしくは議事録公開後は議事録を参照ください。

 

〇衆議院インターネット審議中継ビデオライブラリー

www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&media_type=fp&deli_id=47110&time=1170.4

 

 

【参考人】

・浅田氏(京都大 自民党推薦)

・鈴木達治郎氏(長崎大 民進党推薦)

・福永正明氏(岐阜大 民進・共産党推薦)

 

【質問した議員】

・大野敬太郎(自民党・無所属の会)

・小熊慎司(民進党・無所属クラブ)

・浜地雅一(公明党)

・笠井亮(共産党)

・足立康史(維新の会)

・玉城デニー(自由党)

 

参考人の発言概要

1)浅田氏

インド国内では原子力がエネルギー源、また気候変動・大気汚染対策として重要な政策としている。2008年のNSG決定によって、インドはNPTに加盟していなくても、原子力貿易を認められることになり、たくさんの国と協定を結んできた。日本もアメリカ、フランス、ロシアなどと同じように協定を結んで、インドのエネルギーや大気汚染対策に貢献したほうがいい。

しかし、この核不拡散もとても重要であり、日本との取引で得た技術や機材は平和利用のみになることを十分に気をつけないといけない。この協定ではこのようなセーフガードは十分だと思う。核実験について、インドはモラトリアムを長くまもっているし、万が一核実験を行ったら、1年で協力を止めることはできる。

 

2)鈴木氏

基本的に原子力貿易には反対ではないが協定で平和的利用を万全に保証しないと絶対にいけないと思う。そういう意味ではこの協定は完全に不十分である。

NSGの決定、日本はぎりぎりのところで同意したが、2010年の原子力委員会 (私も入っていた)の見解では核実験をやったら、即協力停止などの条件を出していた。米印協定は弱すぎて、日印はもっと厳しくする必要あるなど、具体的な要件をつけた。ところで出てきたものは米印程度である。インドが核実験やっても協力は即停止できないし、核不拡散上の問題も多い。またこのようなゆるい協定をインドと結んだ場合、他国、たとえば韓国や中国との関係は悪化する。原子力市場はこんなに低迷している今では急いでこのような協定を結ぶ必要はどこもない。

 

3)福永氏

被爆国の日本は戦後さまざまな努力をし、NPT体制、核不拡散の政策は基本となる柱の一つだった。今回の協定を結んだら、その努力はひっくり返すことになる。インドの核兵器を認めることになる。これは日印だけではなく世界的に大きなインパクトを与える。

核実験の問題ははっきりしていないし、もし実際協力を停止するとなっても、現実としてどうやって止めるのか。機材など返してもらうなど、現実として無理なところがある。また、NPTに入っていないインドには核不拡散をまもるようになっていない。

2008年からインドは原子力輸入を始めようとしたが、これは大きな夢だけであって未だに具体的な契約書は一つもない。そこから10年がたったが、もはや原子力の時代が終わった。インドは確かに電力が不足している、それはぜひ日本が支援すべきだが、もっと新しい、インドの現状に合っている技術を提供すべき。

議員質疑概要

1)大野氏

質問:NSGの一つの狙いはNPTに入っていないインドに少しでも核不拡散のコントロールが効くようなところに、中に入れる。インドは前よりもIAEAなどのセーフガードに従うようになったか?また日印協定はどのように核不拡散効果があるのか?

回答:(浅田)2005年ではインドは原発を民生用と軍事用に分けて、民生用はIAEAの視察が入ることになった。これは前の全然視察できなかった状態より良くなった。

日印協定は他国の対インドの協定に比べて、核実験のことは、協定本文ではなくても、公文に入っているから、比較的厳しい。日本は協定を終了させ、協力を停止するということは可能ということである。

 

2)小熊氏

質問:他の国がみんなやっているから日本もやるべきという議論はまちがっていると思うが今回日本もインドの再処理を認めることになる。プルトニウムが増加するというのは世界的な問題だ。Nuclear Security Summitで日本はプルトニウムを増やさない約束もしているがこの協定の場合はどうなるか?

回答:(福永)インドは確かに原発を民生用と軍事用に分けたが外国からウランを買えるようになり、それを民生用の原発で使うことによって、国内のウランは全部軍事用の原発に回すことができ、そこでチェックがないので、軍事用のプルトニウムを前よりももっと作れるようになった。この協定はプルトニウム減少や核不拡散に貢献していない。

 

3)浜地氏

質問:NPTを尊重しながら、日本はインドのエネルギー不足と大気汚染の問題をできるだけ支援すべき。この協定はどのようにこの役割を果たすか?

回答:(浅田)デリーの空気はとても悪い。中国の大都市の空気問題はよく効くが例えばデリーはもっと悪い。原発は排気ガスを排出しないので、空気は改善される。

(鈴木)原子力協力には反対ではないが、十分なセーフガードはないといけない。インドの場合は原子力政策があまりよく進んでいないし、日本が提供すべき技術は例えば二酸化炭素の吸収や再生エネルギーのほうがふさわしいではないか。

(福永)インドの場合はまだ電線が行っていない村たくさんあり、この場合は原発のような中央的発電はこのようなところには届かない。小規模分散型の発電のほうがふさわしい。

質問:2008年NSGの決定のときに浅田さんも懸念を表していたがその後なにが変わったか?

回答:(浅田)その当時はインドが海外からウランを輸入できるようになることによって国内のウランを全部軍事用に回せるということだった。でも日本はウランを売るわけではない。確かに日本とUAEやヨルダンの協定ではウランを濃縮することは禁止されているがインドの協定はそうではない。しかしインドにみとめた再処理はIAEAが視察する施設でおこなわれるものであり、それはいいことだ。

 

4)笠井氏

質問:日印協定はインドではどのように受け止めているのか?

回答:(福永)都心部はなんでもいいから電気がほしいという人が多いが原発予定地の住民は強く反対している。グジャラート州で予定されていた原発は住民の反対運動でキャンセルになったこともある。

 

5)足立氏

今までの質問と少し異なる視点から聞く:核不拡散は重要だが、北朝鮮問題で今のNPT体制は激怒しているのでNPTのレジームを考えるべきである。日本もいつまでもアメリカに頼ってはいけないかもしれない。

質問:なぜ日本はこの協定に踏み込んだのか?核不拡散のため?原発や新幹線、輸出・物売りのため?

回答:(鈴木)2010年の時(私は原子力委員会の委員)原発輸出は経済戦略とし考えていた。しかし、厳しい条件の必要性も強調した。日本は日印協定を結ぶ一つの理由は日米関係にある。日本はアメリカのパートナーとしてインドとの協定を結ぶこともある。

(福永)2010年の時点では日本はインフラの輸出として原発も考えていた。しかし原子力関係の市場は2011年の福島の事故のあとはとくに落ちているので当初考えたビジネスという理由は現在変わってきた。

質問:原発はだれの責任か。民間か政府か。国内でも福島第一の事故でとくにこの問題は明らかになり、責任ははっきりしない。輸出する前に責任問題をはっきりしないといけないのではないか。輸出する意味はどこにあるのか。

回答:(浅田)国内では新規原発を建設しなくても廃炉や廃棄物の問題は残るので、最低としても日本は原子力技術を保たないといけない。輸出を展開すればこの技術力や人材を維持することができる。

(鈴木)原子力技術者としてもこの技術を保たないといけないと浅田参考人と同意。しかし、それは輸出でできるのか。またどこへでも輸出すればいいのではなく、有効なセーフガードがないと輸出してはいけない。

 

6)玉城氏

質問:インドはNPTもCTBTも未加盟で核兵器を保有している。北朝鮮はNPTから脱退、そして核兵器を現在保有している。日印協定を結ぶとインドの核兵器を認めることになるのか。だとすれば北朝鮮の核兵器も認めざるを得ないのではないか。

回答:(浅田)協定を結ぶと核兵器を認めるのは別問題

(鈴木)インドは今回「例外」として認めるがこの「例外」をずっと通すのは難しい。確かに北朝鮮には悪いメッセージである。

(福永)今後核兵器を持ちたいと思う国家が現れたとき、インドの核兵器を現実として認めていることは悪い例となる。

質問:もしインドが核実験などを行った場合、この協定を停止することができるのか。

回答:(浅田)14条によって、協力停止することは確かにできる。ただ、実際機材などを持ち帰る(汚染など)の検討になる。

(鈴木)すぐ停止はできない。早くても1年間、交渉をし、協力停止はできるかもしれないが、保証問題もあり、事実上の停止は非常に難しい。

(福永)協定の本文の中では協力停止ははっきりと書いていない。

質問:インドではメーカーに対する原子力損害賠償があり、もし日本が停止した場合どうなるのか?

回答:(浅田)実際契約をするのは日本の企業なので、倍賞などはその契約による

(鈴木)これはまさに原子力市場の「リスク」である。この協定の下に取引をするのはリスクが非常に大きい

(福永)外務省に聞いたところ、もし機材の返還などとなった場合、国費で賠償を行う