【原子力資料情報室声明】再エネ100%、原発ゼロが確実な基本計画にせよ

【原子力資料情報室声明】再エネ100%、原発ゼロが確実な基本計画にせよ

 

総合エネルギー調査会基本政策分科会に5月16日、第5次エネルギー基本計画の案が示され、驚くべきことに議論らしい議論もなく19日からパブリックコメントにかけられている。

今回の改訂では、新たに第3章「2050年に向けたエネルギー転換への挑戦」が追加されている。これは、経済産業省の有識者会合「エネルギー情勢懇談会」の提言(4月11日)を受けたものである。

その章では、再生可能エネルギー(再エネ)の「主力電源化を目指す」としているが、経団連の反対を慮って「経済的に自立し」との限定句が付けられた。日本政府は、2050年時点には二酸化炭素排出量を80%削減するとパリ協定で約束している。これを守るためには、再エネ100%を確実なものにしなければならない。にもかかわらず、2050年時点においても火力を「過渡的主力電源」とするあり得ない想定だ。原子力発電については、社会的信頼の回復を枕詞に「実用段階にある脱炭素化の選択肢」とうたっているが、それもあり得ない。また、とうてい信頼が回復されるとは考えられない。安全性・経済性・機動性に優れた炉の追求を課題解決策にあげているが、原発で安全性と経済性が両立することはない。原子力事業者と原子力規制委員会のうごきを見ていると、既存原発をなんとか運転しようと躍起であり、規制基準を超えた自主的な安全性追求など美辞麗句に終わっている。

2050年に向けて再エネ100%を掲げ、確実に達成する施策を作り上げることを求める。

 

原発ゼロ政策を継続せよ

第2章「2030年に向けて」は、さらにひどい。見直し会合の開始に際して世耕弘成経産大臣が骨格をかえる必要がないと方針を示したことが問題で、第4次エネルギー基本計画をほぼそのまま踏襲している。わずかに再エネの導入加速をうたい、「主力電源化に向けた取組」を掲げてはいるものの、「安定供給面、コスト面で様々な課題がある」とことさらに強調。以前同様に原発や石炭火力を「重要なベースロード電源」としていることから、再エネ加速にどこまで本気なのか見えない。このことは、発電に占める各電源の割合を再エネ22〜24%、原発20〜22%のまま据え置いている点からもいえる。さらに再エネ拡大の大きな障害となっている系統制約を抜本的に取り払う施策に欠けている。これでは再エネの主力電源化は望めない。送電部門の完全な中立化を明記するべきだ。

原発については「原子力政策の再構築」を掲げたままであり、その内容は旧態依然とした福島復興、安全性向上、使用済燃料対策、核燃料サイクル政策の推進など、住民抜きの破綻した政策が羅列され、その上で「安定的な事業環境の確立」が特記されている。これで「可能な限り依存度を低減する」ことになるというのか。福島原発事故後には原発ゼロで生活が成立していたことを直視すれば、原発ゼロは可能である。にもかかわらず、原発20〜22%を掲げている。これでは「国民、自治体、国際社会との信頼関係の構築」など到底望めない。

 

民主的な政策決定を進めよ

基本政策分科会での審議は明らかに産業界や原子力事業者寄りであり、脱原発を求める大多数(7割を超える)の市民の声や「意見箱」に寄せられた意見を反映していない。この点からもエネルギー政策への理解は到底得られない。今回の改訂に向けては多くの市民団体が原発や火力の維持に反対する意見を述べ、あるいはコメントを発表している。こうした意見を反映して、民主的なやり方で政策を決定するべきだ。改定案についてのパブリックコメントが求めれている(search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620218009&Mode=0)。脱原発と再エネ100%による本来の温暖化対策というエネルギー政策を求める意見を寄せることを呼びかける。