貫徹委員会のパブリックコメント

貫徹委員会のパブリックコメントに、情報室から下記のような意見を提出しました

 

パブコメ応募意見
(1)ベースロード電源市場や非化石電源市場を創設するのなら、それらがきちんと機能するように市場への切り出しを義務化するなどの強制力をもった措置が必要で、この内容を明記するべきだ。あるいは発送電の所有権分離をすすめるべきだ。

 理由)卸電力市場が活性化しない根本原因は日本の総発電電力量の約7割を占める旧一般電気事業者が卸電力市場へ電力の切り出しを行わないからだが、切り出しは旧一般電気事業者の任意行為で強制力がない。したがってベースロード電源市場や非化石電源市場を創設しても、強制力がなければ、若干の自主的取り組みは行われても、結局は卸電源市場が不活性のままに終わる恐れが高い。そこで、何らかの強制力が必要になる。

 具体的には旧一般電気事業者契約分の電源開発が発電する電力や地方公共団体が保有する水力発電所等で発電される電力を卸電力市場に供給するべきである。また、旧一般電気事業者の発電する電力が卸電力市場に売り惜しみされていないことを確認するため、旧一般電気事業者に保有する発電所ごとの限界費用と発電量を毎月規制当局に提出させ、卸電力市場における価格と限界費用の差を確認し、売り控えや買い控えを行っていた場合には、課徴金などの罰則を行うべきだ。

 加えて、そもそも旧一般電気事業者が卸電力市場への切り出しを行わない根本的な原因は発送電分離形態にあると考える。法的分離ではなく、所有権分離を行えば、市場の活性化が達成できる。所有権分離を導入するべきだ。

 

 (2)ベースロード電源市場は創設するべきではない。

 理由)ベースロード電源市場の創設意義は、中間とりまとめにおいては、「安価なベースロード電源については、旧一般電気事業者がその大部分を保有または長期契約で調達しているため、新規参入者のアクセスが限定的であり、このことが競争を更に活性化させるための障壁となってきた」「ベースロード電源市場を創設し、実効的な仕組みを導入することで、旧一般電気事業者と新規参入者のベースロード電源へのアクセス環境のイコールフッティングを図るとともに、卸電力市場の活性化を通じた更なる小売競争の活性化を図る」とされている。また、具体的には、ベースロード電源は「主に中長期断面で見た需要家のベース需要に対応する」とされている。

 しかし、すでに卸電力取引所には年間・月間・週間の全日、24時間を通して一定の電力を受け渡す、先渡市場が創設されている。よってすでに「中長期的断面で見た需要家のベース需要」はこの先渡市場によって満たされている。

 むしろ問題となるのは、現状の先渡市場における取引の低迷である。一般に、同一商品スペックの市場を複数設置すれば、取引は分散し、流動性は低下し、約定価格は適正な価格から逸脱しやすくなる。結果、そうした市場を使った取引は回避されがちとなる。

 現状の卸電力取引所の先渡市場では、売り入札価格はおおむねスポット価格と一致しており、さらに、売り入札量は買い入札量よりも圧倒的に少ない。売り入札価格がスポット価格と一致するということは、先渡市場に入札されている電力はおおむねガスや石油火力であり、安価な石炭火力や水力が入札されていないということが推測される。仮に、ベースロード電源市場に意義があるとすれば、こういった安価な電力が入札される仕組みであるべきだが、中間とりまとめは、「同市場に供出することができる電源種は基本的には限定しない」という。「各事業者が保有するベースロード電源の固定費を含む平均コストに、資源価格の変動等を加味した価格を、入札価格の上限として供出することを求める」というが、先渡市場同様に、価格の高止まりが懸念される。

 ベースロード電源市場のような先渡市場との違いが不明確な商品を上場することは、卸電力市場を活性化するより、むしろ更なる先渡市場の低迷をもたらすことになる。このような屋上屋を重ねる施策によって、国民の目をくらませるような政策は行うべきではない。

 

(3)容量メカニズムの導入は拙速

 理由)中間とりまとめは、容量メカニズム導入の必要性について、投資回収の予見性低下や再エネの普及による売電価格の低下による、事業者の発電投資意欲の減退に対応するためとしている。

 一方で、同中間とりまとめは、ベースロード電源市場の創設を提唱し、同市場は中長期の電力需要に対応するものとしている。すなわち、適切な市場設計と市場流動性が存在すれば、投資回収予見性はある程度担保されるものと考えられる。さらに、供給量が減少すれば、電力価格は当然上昇することから、発電投資意欲は増大することも予見される。加えて、電力広域的運営推進機関がまとめた2026年までの電力需要予測によれば、供給予備率は多くの年度で10%を超えるなど、現状、供給力は過剰気味であることが示されている。

 むしろ懸念するべきは、容量メカニズムの制度運用者が適切な容量を設定できるかである。これまでのエネルギー需要予測は常に過剰ぎみで推移してきていることから、容量メカニズムの導入後においても、容量は過剰に設定されることが推測される。過剰に設定された容量は当然ながら、価格にも反映し、最終的には消費者の過大な負担につながる。

 

 (4)原子力発電所停止リスクをどのように担保するのか

 理由)中間とりまとめは「我が国固有の稀頻度リスクである大規模災害への対応も制度的に行う場合、費用対効果最大化の観点から、通常の容量市場とは別の商品・手段とすることも含めて検討する」という。しかし、原子力発電においても同様に対策を検討する必要がある。

 例えば2002年には東京電力が原子力発電所でおこっていたトラブルを隠ぺいしたことが発覚したことに端を発し、東京電力が当時保有していた原子力発電所全17基が運転を停止することになり、2011年の福島第一原発事故後には安全性を担保するために全国の原子力発電所が停止することとなった。フランスにおいては原子力発電所で用いられている鋼材に問題が発覚したことから、国内58基中12基で運転停止が命じられることとなった。

 このように、いったん事故が生じた場合の被害の大きさから、原子力発電所は共通の要因によって複数の原子力発電所が停止することが起こり得る。これは他の電源では起こりえないことであり、その頻度は大規模災害よりも高い。よって、原子力発電固有の大規模電源脱落リスクに対応する必要がある。そのようなリスクを無視して原子力をベースロード電源であるとか、低化石価値電源であると称して優遇することは、電力の安定供給上問題である。

 

 (5)非化石価値取引市場の制度設計を見直すべきである

理由)中間とりまとめは、非化石価値取引市場創設の意義について、高度化法により小売事業者が調達する非化石電源を2030年度に44%に引き上げる必要があるが、現在の卸電力市場にはそうした市場が存在せず、調達が難しいこと、FIT電力の環境価値の顕在化を図ること、の2点を挙げている。

 しかし、非化石化の目的はCO2排出削減であり、本来、一次エネルギー、二次エネルギーの別を問わないはずである。日本全体のCO2排出量削減にはCO2排出そのものに料金をつけるなどの排出量取引などが効率的であると考えられるが、電力のみにこのような非化石価値取引市場を創設しては、仮に今後炭素市場を設置する際に、電力のみ別の市場が設置されている状態が生じてしまう。

 くわえてFIT価値を顕在化するとしながら、非化石価値取引市場では原子力と再エネ電力の区別を行わないことも問題である。中間とりまとめは、今後、非化石価値以外の環境価値について検討するとしているが、本来、原子力と再エネへのニーズは大きく異なるものである。市場設計においては、再生可能エネルギーへの転換を促すものであるべきだ。

 さらに、原子力発電所がもつ環境負荷を無視していることも問題である。原子力発電所はCO2を比較的排出しない電源ではあるが、それ以外に日々の運転において有害な高レベル放射性廃棄物や低レベル放射性廃棄物を放出している。事故時には、大量の放射性物質を放出し、周辺環境に甚大な影響を与える。このような環境負荷やそれがもたらす被害は電力価格に転嫁して、非化石価値のみを取り出し収益対象にすることは大きな問題である。原子力の非化石価値を認めるべきではない。

 

(6)損害賠償費用を託送部門で回収することは認められない。

 理由)消費者転嫁の前に、まずは東京電力の法的整理を行い、株主が株主としての責任(有限責任)を取ったうえで、なお不足する分を税金もしくは電気料金を通して消費者に負担を求めることは認めるが、株式会社の株主としての責任を問わずに消費者に負担を押し付けることは断じて認められない。

 

 

経産省意見募集ページ

search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620216013&Mode=0

 

参考情報

publiccomment.wordpress.com