2019年度 茶葉の放射能測定結果

『原子力資料情報室通信』第544号(2019/10/1)より 

 

 福島原発事故後、継続しておこなっている流通品茶葉(乾燥)の放射能測定結果を報告する。
 産地は、茨城、埼玉、静岡を本調査の対象としている。静岡産の茶は15年、16年の2年連続で放射性セシウムが不検出だったため、17年、18年は調査対象外とした。本年度は埼玉産を2種類、茨城産を1種類、3年ぶりに静岡産1種類を測定した。産地別にプロットした測定結果を図1に示す。本年度の放射性セシウム137の濃度は、埼玉産Aが3.4 Bq/kg、埼玉産Bが5.5 Bq/kg、茨城産が2.6 Bq/kg、静岡産が不検出だった。セシウム137の検出限界値は約0.8 Bq/kg、セシウム134の検出限界値は約0.9 Bq/kgで、セシウム134は全ての産地で不検出だった。全体に右下がりの減少傾向がみられ、昨年と今年で数値はほぼ変わらない結果となった。

図1. 茶葉に含まれるセシウム137濃度の推移(当室測定) 測定機:NaIシンチレーション検出器(EMF211)、測定時間は24時間、試料は900 ml(約500g)。静岡産は、15年・16年は検出限界値をプロット、17年・18年は調査せず。 


 今号では、福島原発事故以前からの茶葉(乾燥)に含まれる放射性セシウム濃度の推移に着目した。環境放射線データベース※から、1963年~2017年まで54年間の埼玉県産茶葉の測定値を対数グラフにして図2に示す。
 茶葉に含まれるセシウム137の濃度は、1960年代の大気園内核実験の影響で、1963年には約130 Bq/kgあり、その後、70年代から80年代は上下しながらも、ゆるやかに減少している。
 1986年には、チェルノブイリ原発事故による放射能汚染の影響で、約80 Bq/kgに上昇した。その後は減少していき、1990年には約0.5 Bq/kgに低下した。福島原発事故前の2010年には、約0.1 Bq/kgまで減少していた。
 2011年の福島原発事故によって、茶葉のセシウム137濃度は約160 Bq/kgに跳ね上がった。事故前の1600倍で、1960年代より高い値となった。2017年でも約3 Bq/kgが検出されている。
 物理学的半減期約30年のセシウム137が、数十年間で少しずつ減少していたにもかかわらず、福島原発事故によって、再び高い汚染のレベルになってしまった。今後も長期間、汚染の現実と向き合っていかなければならない。

図2. 1963年~2017年の埼玉県産茶葉に含まれるセシウム137濃度の推移 各年度は2~4検体の測定結果をプロット(環境放射線データベースより)

 

(片岡遼平)

※環境放射線データベース
 原子力規制庁が、関係省庁・47都道府県等の協力を得て、環境放射能および放射線に関する調査結果を収集・整理し、
 データベース化して、日本分析センターが運営するサイト。
 https://search.kankyo-hoshano.go.jp/servlet/search.top?pageSID=2470548