タニムラボレター No.024 2014年度 茶葉の放射能調査結果

『原子力資料情報室通信』第482号(2014/8/1)より

 

 

 

 

 

左図:図1茶葉の放射能濃度
測定機:NaIシンチレーション検出器(EMF211)
測定時間:24時間、900mlマリネリ容器
検出限界:1 Bq/kg以下

 

右図:図2茶のセシウム137の経年変化
(文部科学省 環境放射能データベースによる)

 今年度の茶葉の放射能測定の結果を報告します。福島原発事故の影響で、茶葉が広範囲に放射能汚染される問題が発生しました。
 茶に含まれる放射性物質の規制値は、原発事故のあった2011年には茶葉の状態で1kgあたり500ベクレルでしたが、2012年4月からは飲む状態で10ベクレルに変更されました。茶葉(乾燥状態)を抽出し飲む状態(液体)にすると、重量あたりのセシウム濃度は約2%に減少します1)。測定法が変わったため、茶葉の状態なら検出可能なセシウム濃度も飲む状態にすると検出限界以下となる場合が発生します。基準の変更に伴い、放射能汚染の実態が見えづらくなったのです。
 このような背景から、汚染の実態を把握するため流通品の茶の放射性セシウム濃度を継続して調査しています。昨年度、北関東から九州の7県で栽培された茶の測定を行い、埼玉、茨城、静岡県産から放射性セシウムが検出されました(本誌470号)。今年度はこの3県4製品の茶葉を調査し、埼玉県産から12および20、茨城県産から13、静岡県産から4(ベクレル/kg)が検出されました(図1)。
 茶に含まれる放射性セシウムは根から吸収されたものでなく、葉や枝に付着したものが内部に吸収されたものです2)。農林水産省は対策として表面の葉の刈り落としを呼びかけました3)。しかし、流通品から放射性セシウムが検出され続けている現実をみると、一度内部に取り込まれたセシウムが新芽に少しずつ移行し続けていることが良くわかります。
 参考に、図2に茶のセシウム137の経験変化を示しました。今後も長期にわたって影響を与え続けることが考えられます。

1)平成24年7月5日、厚生労働省“食品中の放射性物質に係る基準値の設定に関するQ&A について”
www.mhlw.go.jp/shinsai_jouhou/dl/qa_120330.pdf
2)農研機構、チャ新芽へのセシウム移行とせん枝による放射性セシウムの除去
www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/vegetea/2011/a00a0_01_73.html
3)平成25年7月24日 農林水産省“お茶生産についてのQ&A”
www.maff.go.jp/j/kanbo/joho/saigai/ocha_seisan_qa.html

 (谷村暢子)

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