タニムラボレター No.028 クリの実のセシウム分布

『原子力資料情報室通信』第486号(2014/12/1)より

 

 

 

 

 

 秋は食べものが美味しい季節ですね。今年も原子力資料情報室は、全国各地からたくさんの秋の味覚でのご支援をいただきました。本当にありがとうございます。
 今号ではクリについて報告します。当室では2012年から毎年、千葉県芝山町のある農家のクリを入手して放射能測定を行なっています。3年にわたる測定を通じて、年を追うごとにクリの実のセシウム汚染が少なくなっていることが実感できます。
 私たちは、クリの実のどこにセシウムが集まりやすいのかに関心があり、部位ごとに分けて測定を行なっています。全体を測定したあと、鬼皮をむいて鬼皮のみを測定し、その後、渋皮と可食部に分けて測定するという方法です。部位ごとに分けるとそれぞれの量が少なくなって、微量の放射能測定が難しくなります。収穫地がきちんと分かっているクリの実をまとまった量で入手するのは難しく、検出限界が高くなって求めるデータを得られなかったケースもあります。室温で密閉した状態で24時間測定をするとカビが生えるという想定外の事態も起こりました。

クリの実のセシウム濃度
測定器:NaIシンチレーション検出器(EMF211)

 これまでの反省をふまえ、今年はたくさんのクリを入手して調査を行ないました。1kg以上のクリを手作業で部位ごとに分けるのに大変難儀しました。
 半減期の長いセシウム137を指標に濃度の推移をみると、1kgあたりクリの実全体において、12年は12ベクレル(Bq)、13年は4Bq、14年は2Bqでした。12年は渋皮+可食部のみを測定し16 Bq/kg。可食部のみの測定では13年は5Bq/kg、14年は3Bq/kgでした(図)。
 14年のデータから部位ごとの濃度を比べると、クリの実全体(可食部+渋皮+鬼皮)は2.1±0.4 Bq/kg、可食部のみでは2.5±0.4 Bq/kg、渋皮のみでは2.1±0.9 Bq/kgでした。鬼皮のみの測定では、サンプル量が少なくなり検出限界が高くなって不検出(1.7 Bq/kg以下)となり、クリの放射性セシウム濃度は可食部と渋皮や鬼皮とであまり差が無いといえそうです(24時間測定、いずれもセシウム134は不検出)。
 なお、他の調査でも可食部+渋皮と鬼皮のみを比較し、クリのセシウム濃度が同等だったことも報告されています1)

(谷村暢子)

1) www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/fruit/2011/a00a0_01_71.html

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