タニムラボレターNo.003 ジャガイモ可食部へのセシウム移行調査

『原子力資料情報室通信』第459号(2012/9/1)より

ジャガイモ可食部へのセシウム移行調査

 7月初旬、試験農場でジャガイモの収穫を行い私は意気揚々とサンプルを実験室に持ち帰りました。このジャガイモは放射能汚染された土壌をまとっているので、汚染を完全に分離して測定をしなければなりません。ジャガイモを流水中でこすり洗いすると表面が茶から乳白色へ変化し汚れが取れたように見えましたが、原因は皮が剥がれたためでした。セシウムがジャガイモ植物体中のどこにいるのかを調査するために皮を使用する計画があることと、皮がむけた部分から水溶性のセシウムが流出し放射能測定値が低くなる可能性を考えて、長時間水で丁寧に洗うことは取りやめました。その結果、皮がむけない程度に流水洗浄した後に、皮を包丁で薄くむいて放射能測定を行いました。
 測定結果を表1に示します。試験農場ではセシウム移行を少しでも抑える方法を探求しているため堆肥と液肥を使った2種類の畑があり両方で同じ作物を育てています。
 堆肥土壌はセシウム合計9.9×102Bq/kgを含んでおり、そのジャガイモはセシウム合計5Bq/kgを含んでいました。液肥土壌はセシウム合計11.4×102Bq/kg 含んでいました。そのジャガイモはセシウム137(137Cs)が約2Bq/kg、134Csは不検出でした。
 文献*によると、土壌からジャガイモへのセシウム移行は0.01でしたので、セシウム合計1,000Bq/kg程度の土壌の試験農場で栽培したジャガイモには10Bq/kg程度のセシウムが含まれると予想していました。そのため、サンプル質量を1.0kgと決めていました。しかし、実際のセシウム移行が微量だったため134Csは検出限界以下の結果になってしまいました(137Cs値から算出した移行係数;堆肥土壌0.003~0.005、液肥土壌0.001~0.005)。 2種類の畑のセシウム移行を比較するにはより大量のサンプルが必要だったことが分かりました。この点においても微量の放射能測定は難しいと思いました。次号は植物体中のセシウムの偏りの調査について報告します。
(谷村暢子)

表1:栃木北部試験農場 ジャガイモ放射能測定結果

測定器;NaIシンチレーション式スペクトロメーター(EMF211) 測定容器;1,500mlマリネリ容器
測定時間;120min、土壌は表面から深さ10cmまでの平均値、乾燥状態 

*“土壌から農作物への放射性物質の移行係数”、財団法人原子力環境整備センター、(1988)

(谷村暢子)

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