高速炉からの撤退こそ合理的かつ現実的な戦略だ
高速炉からの撤退こそ合理的かつ現実的な戦略だ
2018年12月11日
NPO法人 原子力資料情報室
経産省は12月3日に開催した高速炉開発会議戦略ワーキンググループで「戦略ロードマップ」の骨子を発表した。かつての高速増殖炉開発を高速炉開発に言い換えだけで、開発の意義や政策的方向はほとんど以前のまま、何ら新味がなく、増殖炉開発失敗の反省も見られない。行間には破綻の文字が見え隠れする代物である。
現実的なスケールの高速炉が運転開始される時期は21世紀半ば頃、本格的利用が期待されるタイミングは21世紀後半となる可能性がある、との認識だ。2004年の原子力政策大綱では高速増殖炉の実用化の時期を「21世紀中頃とされる」としていた。その大綱からほとんど変化がない。しかも大綱では「される」という意味深な伝聞形の表現の行間に、実用化の時期に何ら根拠がないことを忍び込ませていた。骨子では、根拠が示されていないばかりか、実用化という言葉を使わずに「本格的利用」と曖昧である。
「原子力の技術開発は、中長期的な視座で取り組むべきもの」というが、高速増殖炉は1956年の原子力長期計画で開発が目標とされてから60年経ってなお実用化の見通しは立っていない。時間が経てば経つほど、開発の困難さが明らかになる60年であった。この現実を顧みることなく、「当面5年間程度は、……民間によるイノベーションの活用による多様な技術開発競争を促進」するとしている。政府の資金を使わなければ民間を活用できないなら、実用化時代がやってくるとは到底考えられない。
「再生可能エネルギーの導入状況等の社会環境の変化を踏まえつつ、高速炉開発および高速炉に付随するバックエンドへの対応、立地対策や規制対応、コスト評価を含め実現可能性を検討の上、場合によっては今後の開発の在り方について見直しを行う」としているが、どの項目をみても実現可能性はないと言える。先送りせず、いま見直して、高速炉からの撤退を決断するべきである。