【原子力資料情報室声明】3・11から8年、福島原発震災の重さ
【原子力資料情報室声明】3・11から8年、福島原発震災の重さ
2019年3月11日
NPO法人原子力資料情報室
東京電力福島第一原発の過酷事故から8年、その歳月の重さははかり知れない。
放出放射能のうち、セシウム134は半減期の4倍の時間を経て16分の1に減ったが、セシウム137は、さらに22年しないと2分の1にもならない。事故直後に放出された放射能と現在も大気中に出続けている放射能による健康への影響は、わたしたちに底知れない不安を与え続けている。
原子力学会の福島事故未解明事項フォローアップWGは、国内・国外の69編の報告書を検討し、73項目の課題を摘出した。その半数が未解明で、今後も継続した検討が必要な重要事項であると判定している。未だ事故解明は済んでいない。
東京電力元会長らを被告とする刑事裁判が明日12日に結審を迎える。裁判の過程で多くのことが明らかになり、被告らの責任は免れようもない。しかし、最終的に判決が確定するまでにはなお多くの年月を必要とする。
平時の線量制限値が意味を失った。住み暮すには1ミリシーベルト/年以下とされていたのに、20ミリシーベルト/年までとか、㎏当たり100ベクレルから8,000ベクレルへと汚染土の利用条件が緩和されたり、なし崩しに、起こったことを受け入れようとしている。
ほかに方法が無いからと国は言うだろう。だが、そのような事態を生んだのは、誰でもない国自身である。国家の方針として、国は原子力基本法なる法律をつくり、〈専門家〉を動員して、原子力の必要性を説き、〈原子力安全神話〉をばらまいてきた。そうやって原子力を進めてきた責任を、推進側は、いっさい取ろうとしない。原子力基本法第1条の「原子力の研究、開発及び利用を推進することによって、将来におけるエネルギー資源を確保し、学術の進歩と産業の振興とを図り」を盾にとって、さらに原発を進めようと主張する〈専門家〉が、いまなお経産省の審議会を主導して、原発再稼働を説き続けている。
戦後の混乱期にあったとはいえ、エネルギー確保のために、原発を採用し進めてきた政治家、官僚、研究者、業界、マスコミ、法律家たちが、今もって福島原発震災の責任をとらないでいることは許されない。原子力規制委員会の規制基準に合格した原発は稼働させると言うが、〈原発安全神話〉の繰り返しである。その規制基準そのものが、推進するためのものであって、安全を審査するものではない。
そもそも、4枚のプレートがひしめき合っているこの日本列島で、原発を建てる場所を見いだすことは出来ない。原子力基本法成立から65年たつが、巨大地震や火山噴火の予測ができる科学は、いまだ、成立していないことを知るべきである。
エネルギー問題をふくめ、誰かに任せるのではなく、社会の在り方を根本から考え直す機会にしたい。
以上