【原子力資料情報室声明】 電力消費者・住民の負担を強いる日本原電への資金援助は許されない

電力消費者・住民の負担を強いる日本原電への資金援助は許されない

2019年10月18日

NPO法人原子力資料情報室

10月18日、東京電力などの電力各社が日本原子力発電(原電)に資金支援する方針を固めた、と新聞各紙が報じた。東海第二原発の安全対策費に費用がかさむためで、総額3,500億円にのぼるという。許しがたい事態だ。断固抗議する。とりわけ東京電力は巨額の国費を受けており、さらに電力消費者の負担を増やそうとしている。倫理的にも許されない。

 過去の日本原電の有価証券報告書から、東海第二原発の売電価格はおよそ11.74円/kWh(2005年度~2010年度平均)であった。1978年に稼働した東海第二原発は減価償却が進んでいる。また日本原電の当期純利益が15億円(2001~2010年度平均)しかないことから、値下げ余地はほとんどない。

 東海第二原発の安全対策費と特定重大事故等対処施設の対応費用は計2,350億円であり、このコストを東海第二原発の残りの運転期間18年(2021年から2038年)で回収した場合、kWh当たり2.08円となる。また、原子力損害賠償・廃炉等支援機構に日本原電が支払う一般負担金は敦賀原発2号機と東海第二原発の合計で毎年85.25億円となっている。東海第二原発分を半分として売電価格で回収した場合、kWh当たり0.68円となる。つまり、東海第二原発の追加費用は合計2.76円/kWh、今後の売電価格は14.5円/kWh程度になる。

  日本卸電力取引所のスポット市場の2018年度平均システムプライスは9.75円/kWh(2010年度は8.38円/kWh)、日本原電と同じ卸電気事業者である電源開発の2018年度の売電単価は9.26円/kWh(2010年度は8.02円/kWh) である。このことは、電力会社は事故前から市場よりも高い東海第二原発の電力(11.74円/kWh)を購入してきたことを意味しており、今後は14.5円/kWhとさらに5円/kWh近く高い電気を購入することを意味している。

 2011年以降、東海第二原発は1kWhも発電していないにもかかわらず東京電力HDと東北電力から計4,500億円を基本料金として受け取ってきた。こうした費用は電気料金の原価に盛り込まれ、電力消費者が負担してきた。さらに今後、東海第二原発の高い電気料金についても電力消費者の負担で買い上げていくとしている。これまで電力会社、政府は原発の電気が安いと強弁してきた。しかし、現実には高い電気を電力消費者の負担で維持しているのだ。

 東海第二原発周辺には100万人もの人々が暮らしており、東海第二原発の存在は、そうした人々の暮らしを脅かす。事故の進展によっては首都圏全域にも被害が及びうる。高い電気料金のために一体なぜ、人々の生活を脅かす施設を稼働させなければならないのか。日本原電とそれを支援してきた電力各社の損失を覆い隠すために、東海第二原発を稼働させ、電力消費者の負担と人々の生存を脅かすなどということは許されない。

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