【原子力資料情報室声明】あらかじめ作られた結論 関西電力の問題矮小化は許されない
あらかじめ作られた結論 関西電力の問題矮小化は許されない
2019年10月3日
NPO法人原子力資料情報室
関西電力(関電)の幹部20人が、福井県高浜町元助役の森山栄治氏から多額の金品を受け取っていたことが金沢国税局の調査をきっかけに明らかになった。元助役は、関電から仕事を受注していた複数の会社と親密な関係にあり、そうした会社から関電に仲介した見返りとして受け取った資金の一部を関電幹部に渡していたとみられる。また元助役は関電全額出資子会社「関電プラント」の非常勤顧問も30年以上にわたって続けていた。関電は、国税局からの指摘を受け、内部調査を行い、昨年9月には調査報告書を作成して、社内処分もおこなっていたが、報道で明らかになるまで公表してこなかった。
関電のきわめて限定的な調査でも7年間で3億2千万円に上る巨額資金を同社幹部が受け取っていた。きわめて言語道断な事態だ。関電は批判の広がりをうけて、改めて第三者委員会を組織して内部調査を行うとしている。
公表された昨年9月の内部調査報告書では、元助役の特異性が強調され、役員は金品の受け取りを強要されたように描かれている。あたかも関電は被害者であるかのようだ。しかし関電は、役員が元助役を介さず、受注業者から金品を直接受領したケースも存在することも把握している。受注業者も受け取りを強要したとでもいうのか。さらに関電も報告書も、元助役の資金の出元であった受注業者への発注は価格も含めて適正だったという。
冗談ではない。発覚の発端となった税務調査で、森山氏に受注業者1社から3億円が渡り、そのうち1.8億円が関電にながれたことが明らかになっている。一体この3億円はどこからきたのか。会見で、関電はこの資金の出元はわからないなどと述べたが、もし本当にそうなら無能以外の何者でもない。自社の調達価格に上乗せされていた以外、あり得ないではないか。
問題の本質は、電力会社という公益事業者が自らの優越的地位を利用して、地元の有力者と親密な関係を構築するために、電力消費者の負担を度外視した価格で発注していたことだ。そのような土壌があったからこそ、森山氏の不当な介入を許すことにつながった。当該事業者への発注価格が他社への発注と同水準だとも説明するが、であれば、むしろ、関電全体の調達価格水準の高さを疑うべきだ。
関電が第三者委員会に委託するのは、1.森山氏関係追加調査、2.社外からの不適切な金品提供事案はほかにないか、3.これまでの調査プロセス・調査結果・会社の対応は妥当か、の3点だ。この委託内容から、役員の金品受領に問題を矮小化しようとする意図が透けて見える。
関電が第三者委員会に委託すべきは、第一に、自社の発注価格の適正性と、発注が公正なプロセスで行われていたかだ。さらに、いつ、だれが、どのようにして金品を返済したのかについても明らかにしなければならない。森山氏という特異なキャラクターで問題を矮小化しようとする関電を許してはならない。また国も関電という1電力の問題にとどめるのではなく、電力業界全体の問題としてとらえるべきだ。関電に限らず、他の電力においても、地元有力者が経営・関与する事業者に仕事を発注していた事例は枚挙にいとまがないからだ。
責任逃れに終始し、問題を隠蔽しようとした関電の姿は、15年前、下請け会社に11名の死傷者をだした美浜3号機の2次系配管減肉破断事件をほうふつとさせる。今回も、1億円以上も受領していた役員にたいしてですら極めて軽微な処分しか行なわず、しかも隠ぺいしようとした。内部に甘く、事態を直視できない関電に、核分裂を制御してエネルギーを取り出すという微妙な技術に関わる力量があるのか。関電は、第三者委員会にたいして、ガバナンスのみならず、自社に原子力事業を行う資格があるかについても、問わなければならない。
以上