【原子力資料情報室声明】四国電力は原発を廃止した先駆者として活路を見いだせ

四国電力は原発を廃止した先駆者として活路を見いだせ

2020年2月4日

NPO法人原子力資料情報室

 

1月17日、広島高裁(森一岳裁判長)は四国電力伊方原発3号機の運転を差し止める仮処分決定を行なった。決定は、活断層について、伊方原発敷地「至近距離において、地質境界としての中央構造線自体が正断層成分を含む横ずれ断層である可能性は否定できない」とした。また阿蘇の噴火についても「破局的噴火に至らない程度の最大規模の噴火(中略)を考慮すべき」で、その場合、火山灰などの噴出量は四国電力の想定の「約3-5倍」と「想定は過小」であり、「これを前提とした規制委員会の判断も不合理」とした。当初、四国電力はこの決定に対して、「速やかに不服申立ての手続き」をおこなうとしていたが、同月、伊方原発3号機では重大なトラブルが相次いで発生したため、四国電力は当面の間、異議申し立てを見送るという。

 四国電力の長井啓介社長は1月30日の記者会見で、異議申し立ての時期について「だらだらと引き延ばすことはない」と述べている。しかしこの際、四国電力は、同社に残された唯一の原発である伊方原発3号機を廃炉とし、原発を廃止した先駆的な電力会社としての道を歩むべきだ。

1.伊方原発3号機の発電単価は高い

 図1に、四国電力の有価証券報告書から推測される2005年度からの四国電力の原発発電単価推移を示した。単価は、有価証券報告書に記載されている原発の発電電力量で、同じく有価証券報告書に記載されている電気事業営業費明細表の原発発電費を除して算出した。東電福島第一原発事故前、3基の原発を運転していた四国電力の年間の原子力発電費は900億円、原発の発電電力量は150億kWh程度で推移していた。これを割ると、原発の平均発電単価は約6円/kWhだったことになる。

図 1 四国電力の原発発電単価と原子力発電費の推移

 一方、2016年の伊方原発3号機の再稼働後の原子力発電費は750億円程度と、事故前からあまり減っていないが、発電電力量は31億kWh程度なった。これを割ると、直近3年の原発発電平均単価は約19円/kWhとなる。原子力発電費は停止中もそれほど減っておらず、伊方原発1、2号機は廃炉となったため、発電電力量の伸びは大きくは期待できない。

 次に、伊方原発3号機の今後の発電単価を推計する。伊方原発3号機の定格出力は89万kWのため、設備利用率が100%となった場合でも、年間の発電量は約78億kWhとなる。原子力発電費が750億円程度の場合、単価は約10円/kWhだ。伊方原発全体の事故前の設備利用率平均である81%で計算すると発電量は約63億kWhとなり、単価は約12円/kWhに上がる(2019年度の設備利用率は73%のため、13.5円/kWh)。伊方原発は、仮処分による停止、特定重大事故等対処施設対応のための停止など、設備利用率の低下要因は枚挙にいとまがない。さらに特定重大事故等対処施設の使用開始後は建設費の償却も始まる。こうしたことから、12円/kWhでも甘い推計といえるだろう。

 一方で、四国電力の火力発電単価はおよそ5円/kWhで推移しており、日本卸電力取引所のスポット市場の2018年度平均システムプライス(日本全国の入札を合成して需要供給曲線を描き、売買を成立させたときの約定価格)は9.76円kWh、低炭素投資促進機構が実施する500kW以上の大型太陽光のFIT入札では、直近2019年度下期の平均落札価格が12.57 円/kWhとなっている。太陽光発電の導入費用の低下傾向を考えると、今後も太陽光の落札価格は下落することが予想される。

2.原発なしでも大きい発電余力

 四国電力に限ってみれば、電力不足になる心配もほぼない。今年度(12月末まで)の電力需給状況を検証した限り、ほぼすべての時間帯において、四国電力は連系線を用いて電力をエリア外に送電しており、エリア外からの受電はごく微量にとどまる。2019年の最大電力発生日(8月2日14~15時)においても、原発の発電電力量を上回る送電が行われている(図2)。

図 2 四国電力の2019年最大電力発生日(2019/8/2)の電力需給状況

 図3に四国電力の発電電力量から原発分及び連系線での送電分を引いたものと、四国電力のエリア需要の差分を示した。9割超の時間帯で、余剰電力が発生していることがわかる。風力・太陽光・蓄電池の導入促進、省エネ施策の強化などが効果を上げるまでの間、一時的な火力の焚きましが必要になるが、それでも原発を稼働させるよりも安価だ。

図 3 四国電力発電量から原発分及び連系送電分を引いたものと、同エリア需要との差分

3.安全性への懸念

 四国電力は経済性の観点だけでなく、安全性の観点からも伊方原発3号機は廃炉にすべき理由がある。それは広島高裁で指摘された活断層や火山の問題だけではない。

 伊方原発は、かつては3基の原発があった。3基体制となった1996年以降、伊方原発では平均して延べ年190日以上、いずれかの号機で定期点検がおこなわれていた計算になる。しかし、伊方原発1、2号機は廃炉となり、3号機は四国電力に最後に残された原発となった。今後、新規建設の見込みもない。現在の標準の運転サイクルだと、13か月に3~4か月定期点検が行われている。すなわち、年間の延べ定期点検日数は半分に減ることとなる。今後、原発の廃炉が進むにつれて、定期点検が実施できる熟練した作業員の数は減少していくことが予想される。そうした作業員は定期的で安定的な仕事の供給が期待できる複数の原発を保有する事業者との契約を優先することになるだろう。そうなれば、定期点検のために熟練した作業員を確保することも難しくなってくる。結果、安全性を損なうことにもつながりかねない。

 もはや、四国電力に伊方原発3号機を維持しなければならない理由はどこにも存在しない。経済性の観点からも、安全性の観点からも、伊方原発は早急に廃炉とし、原発廃止の先駆者としての歩みを進めるべきだ。

以上

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