【視点】米国の公文書管理

『原子力資料情報室通信』第548号(2020/2/1)より 

 昨年11月にほぼ1ヵ月間、米国に出張していました。目的はいくつかあったのですが、そのひとつが米国政府の資料漁りでした。
 米国政府の公文書は、ワシントンDCなど全米に点在する国立公文書館で管理されています。それ以外にも、歴代大統領がそれぞれ自分の在任時の資料を管理するための大統領図書館と呼ばれる施設を、自分の地元に作っています。たとえばオバマ前大統領の大統領図書館はシカゴで計画中です。大統領図書館では様々な形で資料が整理されていますが、多くは、会議体や、スタッフ個人単位でフォルダ分けされています。
 今回のリサーチで私はいわゆる「原子力の平和利用」、その中でもとくにプルトニウム問題を軸に、米国歴代政権と日本側の動きを調べてきました。1980年代はプルトニウム問題で政策に振れの大きい時代でした。ソ連との対抗上、米国は原子力技術の積極展開を図っていました。しかし、1974年、インドが平和利用目的で入手した技術と核物質を使って核兵器の開発に成功すると、核拡散への懸念から、原子力技術開発にブレーキがかかります。カーター政権(1977~81)は高速増殖炉や再処理からの撤退を決定し、日本に対しても当初は再処理の断念を求めました。一方、カーターの次のレーガン政権(1981~89)では、プルトニウム利用を限定的に認める方向に舵を切ります。興味深いのは、大統領就任から半年ほどたった1981年7月16日付の米国国家安全保障指令6号で、レーガンは英仏での再処理を容認する方向で検討するよう国務省などに指示を出していることです。どうしてこのような政策変更が大統領就任から間もない時点で行われたのでしょうか。開示されていない資料もあるので、情報自由法(FOIA)等をつかって調査していく予定です。
 ところで、大統領図書館の資料をめくっていると、担当者がチラシの裏に書いたようなメモまで残されていることに驚きます。大統領府の資料はメモに至るまで原則、永久保管され、政策形成過程がそのまま検証できるようになっているのです。他の行政府の資料も指定されたスタッフの資料は永久保管、それ以外のスタッフの資料も一定期間保管されることになっています。

大統領図書館のフォルダ例


 翻って日本で情報公開請求を行うとどうでしょうか。多くの場合、真っ黒に塗りつぶされた資料や、不開示といった回答に出くわすことでしょう。30年以上前の資料でさえ「のり弁」化した資料が出てきて、がっかりすることもよくあります。もう存在しない企業の秘密が含まれるから開示できないといった回答が記されていて失笑することもあります。それどころか、あるはずの資料がないといったこともあります。日本の場合、私的メモといったかたちで公文書から除外することもあるようです。
 日本の情報公開法はその1条で、情報公開によって「政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とする」と定めています。政府と市民の間には適切な緊張関係が必ず必要です。そして常に歴史から検証される立場に置かれている自覚が求められます。
 行政文書には公開しづらい情報が含まれることも事実でしょう。しかし原則から目をそらしたとき、待っているのは、どこまでも易きに流れ続ける行政の堕落です。                        

(松久保 肇)