梅田さんの労災認定、いまだ決まらず
『原子力資料情報室通信』第430号(2010/4/1)より
梅田さんの労災認定、いまだ決まらず
追加要請書と質問書を提出
3月8日、厚生労働省は今年度第3回電離放射線障害の業務上外に関する検討会を開催した。議題は北海道、島根、兵庫、福井の各労働局からの「りん伺」案件に対する検討で、梅田隆亮さんの件も検討された。しかし、結果は3月24日現在、梅田さんのもとに届いていない。また、私たちが提出していた要請書に対してどのような対応がとられることになったのか、まだ明らかにされていない。
私たちが、労働基準局労災補償課職業病対策室に問い合わせてみても、「個人事案に関することにはいっさい答えることはできません」とけんもほろろな対応である。2月8日の交渉の場で、厚労省は「個人事案に関しては回答を控える。あくまで、一般的な事案としてわれわれは回答するということでご了承をお願いしたい」と、述べている。
私たち支援グループは、2003年の長尾光明さんの労災問題から継続して原発被曝労働者の問題に取り組み、厚労省と交渉を重ねてきている。そして、厚労省側の担当者が変わっても、話し合いに基づき積み重ねてきた問題の把握などはきちんと後任者に引き継ぐということは同意されているはずだ。もっと信頼にもとづいたやりとりがあってもよいと思う。
梅田さんは3月5日から狭心症の疑いで検査入院されている。8日の検討会の結果はどうだったのか、ご自身でも厚労省に問い合わせなどしているが、不安でたまらない日々を過ごされている。
私たちは3月4日、厚労省と検討会に以下のような追加の要請書と質問書を提出した。
梅田隆亮さんの労災申請の業務上外の検討に関する追加要請書
あて先:厚労省労働基準局労災補償課職業病対策室と電離放射線障害に関する業務上外に関る検討会
要請事項
1.当時の記録、および、梅田さんの申し立て書に記載されている内容から、梅田さんが仕事に従事した日々の作業場所及び作業内容を特定し、梅田さんにその確認を求めること。
2.梅田さんが作業した場所の空間線量率、空中濃度、表面汚染などの労働環境、内部被曝を生じた労働現場の状況を明らかにすること。
3.上記の諸事実、および、梅田さんの申し立て書に記載されている内容、長崎大学医学部国際ヒバクシャ医療センターの意見書を踏まえ、「管理されない被曝」を、皮膚への被曝も考慮し、正しく評価すること。
4.明らかになったすべての記録、労働現場の特定結果、「管理されない被曝」に関する評価とその根拠を公表すること。
5.検討会で、これらの調査結果に加え、放射線被曝と心筋梗塞の疫学調査の文献調査を行うこと。文献調査の結果もすべて公表すること。
6.これらに加え、梅田さんが訴えている鼻出血、全身倦怠・悪心、白血球減少等の当時の症状を評価し、労災認定すること。
原発被曝労働者の労災申請・認定状況に関する追加質問書
あて先:厚労省労働基準局労災補償課職業病対策室
質問事項
1.下記の回答の内容を確認してください。
「平成20年度の電離放射線に係る(原発に限る)労災申請件数は7件、県別としましては、北海道局1件、福井局2件、兵庫局1件、島根局1件、長崎局1件、宮崎局1件となっております。支給決定件数は大阪局の1件でございます」(2月8日回答)
2.上記の件数は、平成20年度の電離放射線に係る(原発に限る)労災申請、支給決定の全件数であると理解します。確認してください。
3.平成19年度までの労災申請の件数、支給決定件数についても、上記同様に年度ごとに、労働局ごとにすべて公表してください。
4.今年度は複数の労働局からりん伺があったとのことですが、検討会で検討対象になっているのは何件ですか。労働局ごとに示して下さい。
5.平成19年度までの厚労省の電離放射線障害の業務上外に関する検討会は、何件の労災申請に対して開催されましたか。開催年度と件数を公表してください。
6.平成20年度の電離放射線に係る(原発に限る)労災申請について、疾病とその件数を示してください。2月8日の回答では「疾病については個人の特定につながるので公表できない」とのことでしたが、その理由に関する論議はさておき、件数も多いので疾病とその件数であれば問題ないと考えます。実態を踏まえた議論の前進のために公表すべきです。
なお、3?6については、公表できない場合はそれぞれ理由を示して下さい。
2月8日 市民と議員の院内集会と政府交渉報告(その2)
JCO臨界事故被害者の救済に関連して、私たちは、以下のことを申し入れた。
①健康管理検討委員会の50ミリシーベルト以下なら健康影響は検出されないとする見解を撤回すること
②住民健康診断を長期に継続し、健診内容を充実し、精密検査の費用を公費負担すること
③事故後から長期通院状態になっている住民の医療費を補償すること
④被災住民に健康管理手帳を発行すること
⑤JCO従業員その他被曝作業従事者、避難等にかかわった自治体職員に健康管理手帳を発行し、健康管理体制を整えること
文部科学省は②について、「この健康診断については、文科省が措置した交付金をもとに茨城県が実施主体となり、東海村および那珂市の協力を得て実施しています。県の意向を尊重するのは当然のことで、引き続きこういった診断等を継続していきます」と回答。国に健康診断の継続を明確に表明させたことは成果であった。
一方、②の精密検査のあつかいと無料化について文科省は、健診の目的の「不安解消」の範囲外であるとして、拒否した。私たちは、たとえば白血病が発症したとき、労働者であれば労災認定される被曝レベルの住民もいる。精密検査の結果をまったく検討しないというのは不当であることを訴えた。
⑤のJCO事故で被曝した労働者の問題については、交渉の準備段階で、内閣府と厚生労働省が担当を譲り合い、政府でこの問題に対する取り組みがなされていない状況が露呈した。事故から10年後の今回の交渉で初めて、JCO臨界事故の被曝労働者の健康管理についての問題が掘り起こされた。
離職した人は、遠隔地在住者を含めて健康診断を受診していること、費用はJCO負担であることが明らかになった(2月9日の内閣府による文書回答による)。この健康診断にがん検診が含まれているかなど、今後も引き続き問題にしていきたい。
(渡辺美紀子)
原発被曝労働者・JCO臨界事故被害者の救済に向けた申し入れに賛同してください。
被害者の訴えを受け止め、その補償拡大を目指しましょう。
申し入れ書を政府に提出し、今後も交渉を重ねます。
各地で運動の輪を広げよう!
賛同カンパをよろしくお願いします!
賛同カンパ(1口) 個人1000円、団体3000円
郵便振替:00140?3?63145
加入者名:原子力資料情報室
※郵便局に備え付けの振り替え用紙をご利用ください。通信欄には「原発被曝労働者・JCO臨界事故被害者の救済申し入れ賛同カンパ」とお書き添えください。また、賛同の旨(団体または個人名)と連絡先を原子力資料情報室にご一報ください。よろしくお願いします。
原子力資料情報室
FAX:03-3357-3801
e-mail: