米デビスベッセ原発・原子炉容器上蓋貫通ノズルにひび割れ

米デビスベッセ原発・原子炉容器上蓋貫通ノズルにひび割れ

米国オハイオ州にあるデビスベッセ原発で,原子炉容器の上蓋(うわぶた)に取り付けられている制御棒駆動装置の超音波による検査を行なっていたところ,3月12日に上蓋を貫通しているノズル2本の溶接部分にひび割れが起きているのが見つかった.制御棒を通す管に見つかったトラブルであり,制御棒が入らなくなる危険性と一次冷却水が漏れ出す危険性とをいっしょにもたらす深刻な事態である.

デビスベッセ原発は電気出力90.8万キロワットの加圧水型炉で,1977年8月に運転を開始した原発である.デビスベッセ原発は2月28日から燃料交換と点検のために停止していた.

原子炉容器の上蓋を貫通しているノズルは69本あり,その後3月20日ごろまでにすべてのノズルの超音波探傷検査を終えた段階で,12本のノズルのひび割れが見つかった(ひび割れないし欠陥の数は13本と報道されている).そのうち2本では周囲に一次冷却水中のホウ酸が析出して堆積していることから,ひび割れが貫通していたものとみられる.

ひび割れが見つかったこれらのノズルは,インコネル600というニッケル基合金でできている.この材料の管は溶接時の加熱によって発生する残留応力が原因で,応力腐食割れが発生しやすいことがよく知られている.1991年ごろからフランスなどの原発で上蓋のノズルにひび割れが頻発しており,上蓋ノズルの材料を腐食に強いインコネル690という材料を採用したものに変え,上蓋ごと交換するということが行なわれていた.

デビスベッセ原発でも,2002年にノズルの厚さを貫通するひび割れが発生した.ノズルのひび割れだけにおさまらず,上蓋の腐食を引き起こしていたことが判明した(2002年2月).ひび割れから一次冷却水が長期間にわたって少しずつ漏れ出し,冷却水中のホウ酸が析出して上蓋の上にたまったため,ホウ酸の腐食作用によって上蓋を部分的に溶かしてしまうような事態を引き起こした.上から見るとノズルのまわりの原子炉容器の上蓋にぽっかりと穴が開き,ステンレス製の内張一枚でかろうじて持ちこたえている,という状況であった(「老朽化する原発」を参照のこと).

2002年当時,デビスベッセ原発を運転するFirstEnergy社は,他の原発で使われる予定だった原子炉の上蓋を腐食した上蓋の代わりにし交換を行なった.しかし交換によって導入された上蓋のノズルも応力腐食割れを起こしやすいインコネル600製のものであった.上蓋交換後,デビスベッセ原発は2004年に運転再開したが,超音波による上蓋部分の点検は今回が初めてであった.2014年までにインコネル690製の上蓋に再交換する予定だったとも伝えられている.

FirstEnery社は4月6日のプレスリリースで,ひび割れが見つかった12本を含む16本のノズルの補修を行なうとしている.これまでのところ,FirstEnergy社およびNRC(米原子力規制委員会)のどちらかも,詳しいひび割れの状況が公表されていない.

■FirstEnergy社のプレスリリース
03/15/2010 Davis-Besse Planned Outage to Include Nozzle Repairs
www.firstenergycorp.com/NewsReleases/2010-03-15%20Davis-Besse%20Planned%20Outage%20to%20Include%20Repairs%20to%20.pdf

04/06/2010 Davis-Besse Begins Nozzle Modifications
www.firstenergycorp.com/NewsReleases/2010-04-06%20Davis-Besse%20Begins%20Nozzle%20Modifications.pdf

■NRC(米原子力規制委員会)の関連ページ
(今回のトラブルに関する情報)
Davis-Besse: CONTROL ROD DRIVE MECHANISM NOZZLE INDICATIONS
www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/event-status/event/2010/20100316en.html#en45764

PNO-III-10-003 03/16/2010
First Energy Nuclear Operating Company: Davis-Besse Control Rod Drive Mechanism Nozzle Indications
adamswebsearch2.nrc.gov/idmws/doccontent.dll?library=PU_ADAMS%5EPBNTAD01&ID=100750285

03/17/2010 NRC Dispatches Special Inspection Team to Davis-Besse Nuclear Power Plant
www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/news/2010/10-006.iii.html

(2002年の上蓋損傷時の情報)
Davis-Besse Reactor Vessel Head Degradation
www.nrc.gov/reactors/operating/ops-experience/vessel-head-degradation.html

U.S. Plant Experience with Alloy 600 Cracking and Boric Acid Corrosion of Light-Water Reactor Pressure Vessel Materials (NUREG-1823)
www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/nuregs/staff/sr1823/