【原子力資料情報室声明】国は控訴を取り下げ、大阪地裁判決に従うべきだ
国は控訴を取り下げ、大阪地裁判決に従うべきだ
2020年12月21日
NPO法人原子力資料情報室
大阪地裁は去る12月4日、国が関西電力大飯原子力発電所3、4号機の安全対策に与えた許可を取り消す判決を下した。画期的である。これにより同原子炉の設置許可が取り消されたことになる。それを退けるべく国は17日、「上級審の判断を仰ぐ」と控訴した。きわめて不当であり、取り下げるのが正しいあり方だろう。
大阪地裁の判決文は、8つの争点それぞれについて、原告、被告の主張を仔細に検討した。特に基準地震動の策定については、原発の安全性を判断する最重要な項目であるから、「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」と「震源を特定せず策定する地震動」について、詳細な地震動評価の検討を行った。国の審査は、経験式の持つ「不確かさ」を検討しているのみで、「地震動審査ガイド」に規定されている「ばらつき」について検討した形跡が無いと断じた。
「震源モデルの長さ又は面積、あるいは1回の活動による変位量と地震規模を関連付ける経験式を用いて地震規模を設定する場合には、経験式の適用範囲が充分に検討されていることを確認する。その際、経験式は平均値としての地震規模を与えるものであることから、経験式が有するばらつきをも考慮されている必要がある」と、原子力規制委員会は自ら策定した基準地震動審査ガイドに明記していながら必要な考慮をしなかったのである。法廷では、裁判長が繰り返し「誤解」のないよう被告の国に説明を促していた。
基準地震動の策定に用いられている入倉・三宅式は、純粋に経験式であって、2つの物理量の平均的な関係をしめすものである。観測値には相当のばらつきがある。ばらつきの検討は「地震動審査ガイド」のなかの「経験式の適用範囲を十分に検討して行うこと」(第1文)だけではなく、第2文がある。それは、3・11後に定められたもので、「経験式によって算出される平均値より大きい方向にかい離する可能性を考慮して地震モーメントを求める」という積極的な意味が込められていた。
判決は、「経験式が有するばらつきについて検討した形跡はなく」、「本件ばらつき条項の第2文は、経験式が有するばらつきを考慮して、経験式によって算出される平均値に何らかの上乗せをする必要があるか、否かということ自体を検討することを求めているのであるが、原子力規制委員会においてそのような検討をしたという主張も立証もない。」
国はこの判決を受け入れて、言い訳せずに従うべきである。
以上