原子力長計策定会議委員月誌(8)

伴英幸の原子力長計策定会議委員月誌(8)表面化した廃棄物等価交換とTRU並置処分

原子力資料情報室通信より

 高速増殖炉の議論なき審議については本誌別項で述べたので、ここでは、次の議題だった放射性廃棄物に関する議論について報告する。放射性廃棄物に関して新たな3つの議案が出された。

 一つは、高レベル放射性廃棄物の等価交換問題で、当室はこれまでに幾度かイギリスが提案しているこの計画について伝えてきた(本誌267号、1996年)。イギリスでは2004年4月に意見募集が行なわれ(案を歓迎する意見書が日本から多く寄せられたという)、同年12月にイギリスは等価交換方針を採用することを決めた。これまでBNFL(英国核燃料会社)と事業者の間で、水面下で進められてきた交渉が両国で公然となる。

 資料によれば再処理によって生み出された中・低レベルの放射性廃棄物10,500本がわずか150本のガラス固化体となるという。37回に及ぶ輸送回数は1回に減るという。含まれている放射性廃棄物の毒性なども考慮して等価であると計算する。

 BNFLと日本の電気事業者共に得する案だと宣伝は威勢がいい。しかし、イギリス側でもすんなり決まったわけではなさそうで、専門家やCOREなど地元住民団体は反対している。再処理からでる低レベル廃棄物はすでにイギリスで処分されており、中レベルの処分場は確定していないが、地元カンブリアが国際的な廃棄物投棄場になるだろうと。再処理から出るすべての廃棄物はその国に持ち帰るべきだと主張している。

 フランス側では再処理の中・低レベル放射性廃棄物をアスファルト固化する計画だったが1昨年あたりからガラス固化する技術案が出ているとのこと。これによって1本あたりの放射能量は増えるが体積を50分の1に減らすことができるという。これは初耳だった。

 最後の提案は国内再処理に関する問題だが、再処理から出る地層処分相当のTRU廃棄物をガラス固化体の処分場と並置処分する案だ。TRU廃棄物とは再処理からでる放射性廃棄物の特徴で、超ウラン元素で汚染された廃棄物といわれているが、超ウラン元素に限らず半減期の長いヨウ素129や炭素14などで汚染されている廃棄物も含まれている。今後検討される内容は並置した場合の相互影響だ。

 現在、高レベル放射性廃棄物処分の実施主体である原子力環境整備機構がその処分候補地の公募を全国自治体に対して行なっている。これまで、高知県佐賀町や鹿児島県笠沙町など誘致の動きがあったところではすべて住民によって拒否されている。それはともかく原環機構の公募要綱にはTRU廃棄物のことは一言も触れられていない。立候補への適地調査が進んだ後になって実はTRU廃棄物も付いてくるということになれば、信頼を裏切ることになる。何をどう捨てのかすべてが明らかになるまで公募は中止するべきだ。

 いずれも検討に入りたいというもので、それらの導入を承認したものではない。だが、マイナス情報が出てこない恐れがある。客観的評価に基づく市民合意をどのように得るのか、そのシステム作りが必要だ。
(2月17日)

原子力資料情報室通信とNuke Info Tokyo 原子力資料情報室は、原子力に依存しない社会の実現をめざしてつくられた非営利の調査研究機関です。産業界とは独立した立場から、原子力に関する各種資料の収集や調査研究などを行なっています。
毎年の総会で議決に加わっていただく正会員の方々や、活動の支援をしてくださる賛助会員の方々の会費などに支えられて私たちは活動しています。
どちらの方にも、原子力資料情報室通信(月刊)とパンフレットを発行のつどお届けしています。