原子力長計策定会議意見書(第19回)

第19回長計策定会議意見書

2005年2月23日
原子力資料情報室 伴英幸

I. 放射性廃棄物の処理・処分の取り組みについて

1. 「今後の取扱い」が論点とされている3点について

1-1.大きな変更が現実にありそうだというのに、そのことに頬被りして現行の計画を進めるのは、やはりおかしい。前回会合では一般論にすりかえての答弁がありましたが、現に目の前に併置処分という具体的な提案がある以上、やはり、公募は中断するべきだと考えます。
 1981年当時の資源エネルギー庁の広瀬勝貞エネルギー企画官が「下北は原子力の一等地。ワンパックにした原子力施設を造ることが可能だ。現状では、だまし、だましして積み重ね(基地化し)ていくしかないが……」と、電気事業連合会の申し入れの3年前に語っていたことが、1984年5月8日付読売新聞に出ていました。
 「新たな制度を検討する毎に処分候補地選定の手続きを中断していては、かえって地域住民の理解を得ることが困難」との認識が示されています(暫定版「放射性廃棄物の処理・処分に対する取り組み(論点整理)(案)」)が、上記記事は下北半島の核燃料サイクル基地化の話しですが、この記事にありますように、「だまし、だましして」と受け取られ住民の理解を得ることは困難だと考えます。「新たな制度を検討する毎」でなく、資料第5号p.3の諸制度の整備が終わるまで中断することが妥当だと考えます。

1-2.青森県六ヶ所村における返還低レベル廃棄物貯蔵管理施設の事業計画について1月末の地元紙等に報じられましたが、そこでは英国BNFL社からの高レベル廃棄物への置き換え提案には触れられているものの、仏国COGEMA社からの低レベル廃液ガラス固化の提案は影も形もありません。電気事業連合会等がCOGEMA社からの提案を地元マスコミにも秘密にしてきたためでしょうか。明らかな地元軽視ではありませんか。これも「だまし、だまし」と受け取られます。
 COGEMA社からの提案もBNFL社からの提案も、廃棄物量が減り輸送回数を減らせることをメリットとしていますが、放射能の濃度は著しく増大します。国際輸送・国内輸送、施設内での取り扱いに伴う事故時の危険性の大きさなど、デメリットが一切示されていません。デメリットを含めた資料が不可欠で、それを欠いたままで「妥当性を評価してはどうか」とするのは不当です。どのように妥当性を評価するのかを議論する必要があると考えます。
 その際、BNFL社からの提案については、英国側における(事業者でなく、未だ地点も決まっていない貯蔵・処分地や輸送ルートの周辺住民にとっての)メリット・デメリットも評価の対象とすべきです。

2. 併置処分は集約型で合理的との意見がありましたが、処分時点では集約的でも、もともと地層処分は長期的には放射性廃棄物が拡散することを前提に考えているのですから、必ずしも集約型が合理的とはいえないのではないでしょうか。
 直接処分を検討した技術検討小委員会では、ヨウ素129などによる環境影響の懸念が問題となっていましたが、併置処分の検討の過程では、TRU廃棄物含めた地層処分の安全評価をやり直す必要があると考えます。「国は、この検討結果の妥当性を確認」するとありますが、上記安全の再評価が含まれていると考えてよいのでしょうか?

3.  TRU放射性廃棄物は半減期が極めて長い超ウラン元素を含む放射性廃棄物。同廃棄物を浅地中処分、余裕深度処分、地層処分と分けて処分を行なうことが可能であるとの見通しが得られたとしています(資料第5号P.13)が、半減期の長さから、低レベル放射性廃棄物の埋設処分と同様の300年の管理期間で十分とは考えられないのですが、どのような可能性を得たのでしょうか?

4. 「事業規制でなく物質規制に」という意見について
 物質に着目した規制体系とすることは検討に値しますが、その際も責任の所在は明確でなくてはなりません。現在の規制体系のもとでも、核燃料サイクル開発機構大洗工学センターと日本原子力研究所大洗研究所、東北大学金属材料研究所、日本核燃料開発の廃棄物は区別なく貯蔵され、それぞれに属するものがどれだけの量であるかは不明とされています。1998年9月30日現在では、合計で200リットルドラム缶22,924本相当でした。検討がこうした無責任体制をさらに拡大するようなことがあってはなりません。

II. 放射線利用について

1. 放射線に関する知識の普及、学校教育における取り組みなどに言及されています。策定会議に出てくる資料にも概して言えることですが、メリットばかりが強調されてデメリットはふれられません。「放射線は危険」を基本に知識の普及を進めるべきだと考えます。

2. 日本における医療用X線検査件数の多さは指摘されているところです。UNSCEAR2000のデータでは件数ではアメリカに次いで2位(91年?96年の5年間平均で198,652,000件)ですが、これは人口当たりにすると世界で一番多くなります。この資料から日本人の被ばく線量の多さが推察できます。また、イギリス『ランセント』に発表された論文からも推定できます(図1)。
 医療被ばくは診断に役立つ反面、現実の診療場面では不必要な被ばくもあると推定できます。”被ばくを避けたくても、医者からレントゲンを撮らないと診断できないと言われると断ることができません”と患者の声が聞かれます。患者の知識や理解に加えて医者の知識や理解も大切だと思います。イギリスでは「医師向けの放射線検査ガイドライン」(王立放射線科医会)が普及しており、その結果、イギリスでの患者の被ばく線量は他国と比べて少ないと聞きます。日本でも医師向けのガイドラインを普及させて、不必要な被ばくを減らす努力をするべきだと考えます。

3. 医療用被ばくを必要最低限にするために、診断用放射線被ばくを個人単位で管理できるような「放射線管理手帳」を持つことも必要だと思います。そのための諸整備を新原子力長期計画に含めることを提案します。