原子力長計策定会議委員月誌(7)
伴英幸の原子力長計策定会議委員月誌(7)佐藤栄佐久福島県知事、イラク戦争にみる戦車のような原子力政策の進め方と批判
原子力資料情報室通信より
04年最後の策定会議は佐藤福島県知事のご意見を聞く会から始まった。会議の直前の朝日新聞のコラム「私の視点」に彼の意見が載った。一言でいえば、十分な議論をせずに、国民の意見を反映することもなく、原子力政策が決定されているが、そのあり方を改めるべきだというものだ。
この日の佐藤知事の発言で一番深く印象に残ったことは、国の原子力政策がブルドーザーのようにやってくると以前にはイメージしていたが、策定会議の審議状況を見ていると、戦車のようにどこから弾が飛んできこようと進むんだというイメージに変わっていく感じだと表現したことだ。
核燃料サイクル政策に関する議論では適切な議論が行なわれることを期待していたが、ようやく材料が揃ったと思った途端に結論が出されてしまった。一部の報道にあったように、原子力ムラに不利な結論は出されなかった。ウラン試験やバックエンド税制の改正に間に合わせるためといわれても仕方ない、スケジュールありきの進め方だ。こういった大きな問題は論点をていねいに拾い上げて明らかにしながら議論するべきだった。知事の発言は的を射るものだった。
さらに、関電の藤洋作委員に対して、11人が死傷する事故を起こした電力会社の責任者が事故後も委員として安全について発言しているのは、どう考えても理解できない。「言いにくいこと」と前置きしながらズバッと述べてくださった(隣にいるといいたくても言いにくい思いでいたので、伴としては溜飲が下がる思いだった)。
伴も2回にわたって問題にした福島I-5号炉の問題(定期検査時の測定で配管の減肉が進んでおり余寿命0.8年と診断されたのに、当該配管を翌定期検査時に交換することにして原子力安全・保安院が運転再開を認めた問題、その後の福島県の指摘で東電は運転を止めて交換に応じた)に細かく言及し、これについての検証を策定会議で行なうように要請した。
近藤委員長は、安全委員会マターと避けたが、建前の安全論をいくら並べ立てても実態が伴わなければ意味がない。「安全の確保」の議論はこの会議で一段落させ「中間とりまとめ」が行なわれたが、しかし、ことあるごとに議論していくべき問題である。原子力安全保安院との交渉は別途進めつつあるものの、策定会議の場でも議論する機会を作っていきたい。だが、これは今後の「改正」の先取りとも言える。目下進められていることは、これまでの規制のあり方を止め、原発の性能規制化へ向けた動きが進んでいるからだ。一定の水準を満たすことを要求するのみで、維持基準と対をなすものである。しかし、先取りは許されない。
(1月12日)