プルトニウム管理状況公表に関する要請

文部科学大臣 小坂憲次 様
原子力委員会委員長 近藤駿介 様

プルトニウム管理状況公表に関する要請

2006年3月1日
原子力資料情報室
(共同代表 伴英幸)

「我が国のプルトニウム管理状況」については93年より毎年、原子力委員会から公表されています。これはプルトニウム利用に関する透明性の確保の観点から公開されているものと理解しています。2004年度のデータは2005年9月6日に発表されました。このとき初めて、参考資料として「国内に保管中の分離プルトニウムに関する平成16年増減状況」という資料が付きました。このような資料の公開はプルトニウム利用に関する透明性を高めるものとして歓迎するとともに高く評価しています。

しかし、このデータにまだよく見えない重要な要素があります。「各施設内工程での保管廃棄等による増減量」についてです。この公表の仕方では、最終的にどれぐらいのプルトニウムが在庫差(MUF)になったのか分かりません。また、増減量がそのままMUFもしくは行方不明量と受け取られる恐れもあります。「保管廃棄等による増減量」について、このたび、保坂展人衆議院議員の求めに応じて文部科学省からその内訳が公表されました。私たちはこのことも同様の観点から高く評価しています。

これから六ヶ所再処理工場がアクティブ試験に入ることが計画されています。そのとき、分離されるプルトニウムの量は東海再処理工場とは桁が違います。扱うプルトニウムの量が多くなれば、透明性の確保はさらに重要となってくると考えています。

私たちは小坂憲次文部科学大臣ならびに近藤駿介原子力委員長に、毎年公表される「我が国のプルトニウム管理状況」に加えて、引き続き「国内に保管中の分離プルトニウムに関する増減状況」の公表を行うとともに「各施設内工程での保管廃棄等による増減量」の内訳も公開することを強く要請いたします。

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参考

日本原子力研究開発機構「プルトニウム増減状況に関するご質問の回答」

(ご質問)
 東海再処理工場のMOX燃料加工施設におけるMUFについて以前に公表されましたのは、90年末のデータでその内容は次のようでした。①機器付着分 20kg、②主要でない施設との移動量 1.5kg、③核的損耗 1.3kg、④MUF 5.4kg

1.上記公表項目から推察しますと、増減量には①~④の項目が含まれていると考えますが、それは正しいですか。

2.12月21日にいただいた回答と上記公表項目との対応を推察しますと、②が保管廃棄と保管廃棄再生に該当するように思います。③と④はそれぞれ核的損耗、在庫差と認識できます。これで正しい理解でしょうか? また、機器付着分はご回答資料の分類の中で、どのように扱われているのでしょうか? MOX加工施設では測定器の開発が行われて機器付着分が測定されましたが、再処理施設ではどのようになっているのでしょうか。

3.今回の公表増減量のうちの再処理施設ならびにMOX加工施設について、①工程内滞留量、②保管廃棄、③保管廃棄再生、④核的損耗、⑤在庫差(MUF)について、具体的な数値を公表してください。

4.これらの増減量について、IAEAとの間でどのような合意がなされて、どのように処理されているのでしょうか。

(回答)

 上述のご質問について、以下のとおり回答いたします.

1,ご質問1.及び2.について

(1)「国内に保管中の分離プルトニウムに関する平成16年度増減状況」における増減量の整理について

 「国内に保管中の分離プルトニウムに関する平成16年度増減状況」(以下、単に「増減状況」という.)は次のとおり整理しております。

○「受入総量」(燃料加工施設の場合)
   2004年一年問に当該施設以外の施設から受け入れたすべてのプルトニウムの合計量

○「払出総量」
   2004年一年問に当該施設から他の施設へ払い出したすべてのプルトニウムの合計量

○「保管廃棄等による増減量」
   上記の「受入総量」及び「払出総量」以外の2004年一年間の」当該施設における在庫変動及び在庫差(MUF)の合計量

 したがいまして、ご質問の「②主要でない施設との移動量」は、「受入総量」又は「払出総量」に含まれております。また、「③核的損革」及び「④在庫差(MUF)」は、「保管廃棄等」に含まれております。

(2)機器付着分の扱いについて

 再処理工程や燃料加工工程で生じる核物質の機器付着(工程内残留)については、非破壊測定装置を用いた測定等によりプルトニウムの量が確定される場合は、在庫として計上します。有効な測定手段がなく、計量することが困難な場合は、結果として在庫差(MUF)となります。

(3)再処理施設における機器付着分(工程内残留)の測定について

 再処理施設で取り扱われる溶液及び粉末状態のプルトニウムは、取扱いの過程で機器、グローブボックス、配管等に付着します。期末在庫を確定するときには、工程内残留の低減化の観点から、核物質が流れる工程内を硝酸等により十分洗浄し、機器等に付着した核物質を回収し量を測定しております。しかしながら、回収が困難で微量のプルトニウムが残存する箇所が存在します。これについては、有効な測定手段がなかったり、計量することが困難であったりするため、在庫として確定することができないことから結果として在庫差(MUF)となります。

2.ご質問3.について

 増減状況における再処理施設及び燃料加工施設の保管廃棄等による増減量の内訳は次のとおりです.

○再処理施設内工程での保管廃棄等による増減量(公表値:△4kgPu/年)の内訳

保管廃棄等に含まれる在庫変動の種類  増減量(kgPu/年) 備考
保管廃棄 △5.9 ※1 (在庫の減少)
保管廃棄再生  4.3 ※2 (在庫の増加)
核的損耗 △1.6 (在庫の減少)
在庫差(MUF) △1.0 (在庫の減少)

○燃料加工施設内工程での保管廃棄等による増減量(公表値:△9kgPu/年)の内訳

保管廃棄等に含まれる在庫変動の種類 増減量(kgPu/年) 備考
受払間差異 △0.4 (在庫の減少)
保管廃棄 △9.4 ※3 (在庫の減少)
保管廃棄再生 0.05 (在庫の増加)
核的損耗 △11.3 ※4 (在庫の減少)
在庫差(MUF) 11.8 ※3 (在庫の増加)

増減量が比較的多い在庫変動の要因は次のとおりです。

 ※1 使用済燃料溶解液から核物質を回収する過程で発生する高放射性廃液及び低放射性廃液等を保管廃棄としたものです。

 ※2 保管廃棄された廃棄物を、減容処理のため、処理工程に戻すために保管廃棄再生したものです。

 ※3 2004年に発生した在庫差(MUF)のうち殆どは、長期に亘る燃料製造にともないグローブボックス内機器に付着した核物質を、測定技術の整備が整ったことにより、国及びIAEAとの協議に基づき新規に測定し計上したため発生したものです。その後、この核物質は、国及びIAEAとの協議に基づき保管廃棄手続きを行いました。

 ※4 長期保管中であった原料プルトニウムを工程に供給したので、供給時点で核的損耗を報告したものです。

3.ご質問4.について

 在庫変動及び実在庫の計量記録及び報告については、日・IAEA保障措置協定及び国内関係法令※に基づいて実施しております。この事業者からの報告に基づき、国及びIAEAの査察等が実施され、IAEAが計量管理、査察等の結果を総合的に勘案し、核兵器への転用がなかったことが確認されております。

※(1)核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律
 (2)核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律施行令
 (3)国際規制物資の使用等に関する規則

以上