【原子力資料情報室声明】 老朽原発=高浜1・2号および美浜3号の40年超えての運転同意に抗議する

【原子力資料情報室声明】老朽原発=高浜1・2号および美浜3号の40年超えての運転同意に抗議する

2021年4月29日

NPO法人原子力資料情報室

杉本達治福井県知事が、4月28日に、関西電力の高浜1、2号ならびに美浜3号の40年を超える運転に同意した。杉本福井県知事は中間貯蔵施設の県外立地の提示が同意の前提としていた。しかし、関電が構想する、むつ市での施設共用構想は同市の強い反対で頓挫している。知事自身が行なった公約を守り、同意を撤回すべきだ。

 今回の40年超運転の同意は国内で初めてであり、今後、常態化される恐れがある。その先鞭をつけたことに強く抗議する。

 長期運転に伴い過酷事故のリスクは高まる。多くの設備や機器は交換されるが、しかし交換できない機器もある。例えば、電源ケーブルも一部は交換できないことから、規制基準の審査では難燃剤を塗布することで済まされている。交換できないものでもっとも重要な機器は圧力容器である。

 圧力容器は運転に伴い中性子線にさらされ、金属材料としての性質が劣化し、脆くなっていく。脆性劣化した圧力容器がECCSの起動などで急激に冷やされた時に瞬時に破壊される恐れがある。今回の3つの原子炉は、いずれも中性子照射脆化が著しく、とりわけ、高浜1号炉は日本の全原子炉の中で、もっとも脆性がすすんでいる危険な原子炉だ。

 圧力容器の破壊は福島第一原発事故を超える放射能災害をもたらす恐れがある。水戸地方裁判所が東海第二原発の運転差し止め訴訟で指摘しているように深層防護第5層を規制に取り入れていない現実を見れば、被ばくを避けた実効性ある避難ができないことも明らかである。避難の受け入れ先が災害時に避難対象地域であったりしている。

 なによりも、被ばく者の健康影響、長期にわたる避難生活や帰還困難区域の出現、町・村の消失などなど、2011年の事故から10年を経たいまを直視すれば、災害の悲惨は瞭然だ。

 関西電力は経営破綻以外にこの責任を負えないことは明らかであり、福島原発事故から学ばずに目先の経営を優先させた40年超運転を進めることにも強く抗議したい。速やかにこれらの老朽原発を廃炉にすべきだ。

 経済産業省は今回の福井県同意の直前に、40年超運転への同意の見返りとして1発電所あたり最大25億円の交付金の追加を決定した。こうしたやり方は地域の活性化にはつながらず、むしろ地域を疲弊させるばかりであり、ひいては政府の政策決定の幅を狭めることになるだろう。旧態依然としたお金による政策誘導にも強く抗議する。

以上

原子力資料情報室通信とNuke Info Tokyo 原子力資料情報室は、原子力に依存しない社会の実現をめざしてつくられた非営利の調査研究機関です。産業界とは独立した立場から、原子力に関する各種資料の収集や調査研究などを行なっています。
毎年の総会で議決に加わっていただく正会員の方々や、活動の支援をしてくださる賛助会員の方々の会費などに支えられて私たちは活動しています。
どちらの方にも、原子力資料情報室通信(月刊)とパンフレットを発行のつどお届けしています。