米パロベルデ原発・ECCSの欠陥を19年間放置したまま運転

米パロベルデ原発・ECCSの欠陥を19年間放置したまま運転

※『原子力資料情報室通信』377号(2005/11/1)短信より

 10月11日、米アリゾナ州にあるパロベルデ原発2・3号炉(加圧水型炉、各133.5万kW)の緊急炉心冷却装置(ECCS)に技術基準を満たさない安全上重大な欠陥が見つかったため、原子炉の運転が停止された。ある事故条件下で時間内にECCSが作動することを示せなかったためだ。パロベルデ1号炉(加圧水型炉、133.5万kW)でも同じ問題があることわかっているが、燃料交換のためにすでに停止中であった。

 冷却材喪失事故が起きたときに高圧安全注入系ポンプが燃料取り替え用水タンクから水を吸い込み、ホウ酸水を原子炉へと注入する。パロベルデ原発では、燃料取り替え用水タンクの水位が7.4%になると、水源が格納容器サンプへと自動的に切り替わるしくみになっている。しかし、米原子力規制委員会の調査で、小口径配管が破断するような事故シナリオのもとでは、格納容器の圧力が十分でないため、切り替えがうまくいかないことがわかった。燃料取り替え用水タンク底部に取り付けられた渦流の発生を防ぐバッフル板が露出し、安全注入系のポンプ内に空気が入り込み、ポンプが作動しなくなる可能性がある。

 パロベルデ原発では、1号炉が1986年1月に運転を開始して以来、この問題は放置されたままになっていた。

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