要請書「原発推進方針の撤回を」

政府は8月24日、「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」で、原発の「7基追加再稼働」や原発の運転期間の延長、次世代革新炉の建設による原発の新増設やリプレースの検討など、原発推進方針を表明しました。

これに対し、FoE Japan、原子力規制を監視する市民の会、原子力資料情報室の3団体は、撤回を求める以下の要請書への個人・団体の賛同の呼びかけを開始しました。

一次締め切りは9月12日8:00です。ご賛同いただける個人・団体は、こちらのフォームにご記入ください。


内閣総理大臣 岸田文雄 様
経済産業大臣兼GX実行推進担当大臣 西村 康稔 様

要 請 書
原発推進方針の撤回を

政府は8月24日、「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」で、原発の「7基追加再稼働」や原発の運転期間の延長、次世代革新炉の建設による原発の新設やリプレースの検討など、原発推進方針を表明した。
私たちはこれに強く抗議し、撤回を求める。

政府はいままでも原発のコストやリスクを無視し、原発維持の方針を示してきた。しかし、原発に対して慎重な世論を考慮し、原発の新増設やリプレースメントについてはエネルギー基本計画等には盛り込まず、「原発依存を可能な限り低減する」としてきた。今回の方針ではじめて原発の新増設やリプレースの検討が明記された。公開の場での議論をつくすこともせず、このような重大な方針変更を、いきなり打ち出すこと自体、大きな問題である。

原発事故の被害と痛みに向き合うべき
11年半前の東日本大震災に端を発した福島第一原発事故は未だ収束していない。多くの人たちが故郷を失い、生業を失い、生きがいを失った。
政府はこの被害と痛みに向き合い、被害者の救済や事故の原因究明、福島第一原発施設の安全確保、事故の教訓の伝承をこそ最優先で進めるべきである。
実際には、避難者への支援は相次いで打ち切られ、帰還や移住が促進された。莫大な復興予算は、除染や焼却施設、インフラ建設にあてられた。産業拠点が建設され、元のふるさとは失われた。「復興」の掛け声のもとで、被ばくや汚染といった言葉を口にすること自体がはばかられる空気も醸成されている。原発事故被害の「見えない化」が確実に進んでいる状況である。

再稼働が判断できる状況ではない
規制委の審査が終了した7基の原発について、「国が前面に立ち」、来夏以降に再稼働させる政府方針が示されている。住民の反対の声を背景に、地元自治体は、独自の検証作業を慎重に行うなどしているが、国がこれに介入し、圧力を加えるようなことはあってはならない。
また、地元自治体が策定する広域避難計画について、裁判所から運転差し止め判決が出た東海第二原発を含め、実効性がないことが明らかになっており、とても再稼働が判断できる状況ではない。

運転期間「原則40年」を骨抜きにするな
老朽原発を動かすことは極めて大きな危険を伴う。運転により原子炉が中性子にさらされることによる劣化もあり、運転休止中も時間の経過に伴い、配管やケーブル、ポンプ、弁など原発の各設備・部品が劣化する。交換できない部品も多く、電力会社の点検や規制委の審査も限定的である。休止期間を運転期間から除外するということは、老朽化のリスクを度外視したものだ。
福島第一原発事故後、原発の運転期間を「原則40年」とすることが原子炉等規制法に盛り込まれた。「原子力規制委員会の認可を受けて、1回に限り延長することができる」とされている。当時はこの1回の延長は、「例外中の例外」とされていた。それがいつの間にか骨抜きになった。運転期間の延長は、住民の安全を脅かす暴論である。

原発は電力需給ひっ迫の解決にはならない
原発は一基あたりの出力が大きい電源ではあるが、柔軟に止めたり動かしたりすることはできず、出力調整も難しい。また、トラブルが多く、計画外に停止すれば広範囲に大きな影響をもたらす。隠蔽や改ざんなどの不祥事や訴訟リスクも高い。つまり原発は不安定な電源である。
需給調整のための仕組みづくり、省エネの導入、デマンド・レスポンスの強化、持続可能性に配慮した再エネ電源の整備などが、経済合理性があり、効果的で現実的な解決方法である。
原発がもつ様々な問題を無視して原発を推進することは、国民に不必要な経済的負担とリスクを押し付けるものである。

新増設・リプレース方針の撤回を
原発の新増設・リプレースについて、政府は原発推進を声高に叫ぶ原子力産業の代弁者で占められた審議会での限られた検討だけで、住民や国民世論を無視してこれまでの方針を覆そうとしている。
「次世代革新炉」などと言葉だけが躍るがその内容や実現可能性はあいまいであり、巨額の税金を投入したあげく、廃止となった、もんじゅやふげんなどの二の舞になることは目に見えている。
原発新設には計画から少なくとも10~20年かかる。つまり、現在の電力需給に何ら貢献することはない。CO2排出量削減についても同様である。さらに、原発を新設すれば、その後、少なくとも40年は稼働することになる。その間のエネルギー政策を縛り続ける。
原子力産業の生き残りのために賭博的な構想に多額の税金を投入することは許されない。

原発推進を撤回して脱原発へ
ずさんな安全管理により事故が頻発している。老朽原発の運転は事故の危険をさらに高める。原発の「持続的活用」により、ライフサイクルにわたる放射能汚染を引き起こし、将来世代に核のごみを一層押し付けることになる。政府は原発推進方針を撤回し脱原発に舵を切るべきである。

以上

原子力資料情報室通信とNuke Info Tokyo 原子力資料情報室は、原子力に依存しない社会の実現をめざしてつくられた非営利の調査研究機関です。産業界とは独立した立場から、原子力に関する各種資料の収集や調査研究などを行なっています。
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