『原子力資料情報室通信』第595号(2024/1/1)より

 新年明けましておめでとうございます。 旧年中はNPO法人原子力資料情報室の活動にご理解とご協力を賜りまして、まことにありがとうございます。今年もご支援・ご協力をお願い申し上げます。
 2023年を振り返ると、原発再稼働基数は高浜1号が8月、2号が9月に再稼働し、2基増の12基(1160.8万kW)だった。廃炉となった原発は24基(1742.3万kW、東海、浜岡1・2号含む)で変わらず、新規制基準審査中は10基(1068.1万kW、建設中の大間、島根3含む)、審査合格は5基(545.7万kW)、未申請は9基(963万kW、東電東通含む)となっている。

再稼働をめぐる動き
2024年、再稼働が見込まれるのは新規制基準合格済みの原発のうち、東北電力女川2号と中国電力島根2号だ。女川2号は2024年2月に工事完了、5月に運転開始、島根2号は5月に工事完了、8月に運転開始すると発表されている。なお地元自治体はすでに事前了解済みとなっている。
 一方、日本原電東海第二は工事の完了を2024年9月としていたが、2023年10月に防潮堤に施工不良があったとして、鉄筋の増強などを行う方針を示した。これまで工事は順調だと説明していたが、施工不良発覚から4か月間発表していなかった。工事完了時期への影響は現在のところわかっていない。
 東海第二については、避難計画が懸案となっている。茨城県は日本原電に依頼して放射性物質の拡散シミュレーションを実施、第三者検証委員会が結果を検証し「概ね妥当」とされたと発表した。ただし、この拡散シミュレーションは最悪ケースを想定したものではなく「30㎞周辺まで避難・一時移転の対象となる区域が生じるよう、事故や気象の条件を設定」して実施されたシミュレーションのため、避難者数は最大でも10万人程度とされている。
 柏崎刈羽原発6・7号では2020年9月、社員が他人のIDカードで中央制御室まで侵入した。また2021年1月には核物質防護設備の一部が故障していたことも発覚した。これをうけて2021年4月、原子力規制委員会は核燃料の移動を禁じた。実質的に運転を禁止するものだ。東京電力が改善を図ったとして、この命令の解除に向けた動きが進んでいる。また、新潟県は福島第一原発の事故原因や、原発事故が健康と生活に及ぼす影響、安全な避難方法など、いわゆる「3つの検証」を強引に取りまとめ、異論の相次ぐなか、11月・12月に県民説明会をおこなった。その他の原発は当面再稼働のめどはたっていない。
 なお、福井県がこれまで関西電力に求めていた使用済み燃料の中間貯蔵施設県外候補地選定について、関西電力は山口県の上関原発予定地敷地内に中国電力と共同で建設、さらに原発敷地内への乾式貯蔵施設の建設する方針を示した。福井県の杉本達治知事はこの方針を了承したが、敷地内乾式貯蔵施設の建設については、「計画内容を確認して、議会の考え方も踏まえて判断したい」と答弁している。
 関連して、日本原燃は六ヶ所再処理工場は2024年度中に竣工すると説明しているが、審査状況を見る限り2024年度中に竣工はかなり厳しいと思われる。

原子力事業環境整備をめぐる動き
 原子力の事業環境をめぐる最も大きな動きは2022年から始まったGX(グリーントランスフォーメーション)に絡めた原発積極推進政策だ。GXは「産業革命以来の化石エネルギー中心の産業構造・社会構造をクリーンエネルギー中心へ転換する」ことを意味する造語だ。
 日本の原発は、東電福島第一原発事故後に導入された新しい規制基準に対応するため、多くが長期間停止している。GX方針の下、この停止期間は運転期間に算入しないこととした。また原子力規制委員会が認可してきた運転期間を、推進官庁である経済産業省に移管した(電気事業法、原子炉等規制法)。さらに原子力の憲法とも呼ばれる原子力基本法を改定した。原子力は脱炭素に役立つ電源なので国が推進するというのだ。そのうえで、GX推進法に基づき、国が原子力を支援する。
 2011年東京電力福島第一原発事故後、事故の教訓を踏まえて、原発の運転期間は原則40年、例外的に20年延長とした。また政府は繰り返し原発の新増設は想定していないと答弁してきた。原発の寿命に上限が存在し、新増設はない、すなわち緩やかな脱原発がこれまでの原子力政策だった。これが大きく転換した。

脱炭素としての原発
 12月に開催された第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)のサイドイベントで、米英日など23カ国が2050年までに世界の原発設備容量を3倍にするという宣言を発表した。原発で脱炭素を図ろうというのだ。12月14日に採択されたGlobal Stocktake(温室効果ガスの削減目標を定めたパリ協定の長期目標達成に向けて各国の削減実施状況を評価する仕組み)において、「エネルギーシステムにおける化石燃料の代替に向けた取り組みを強化するため、特に再生可能エネルギー、原子力、二酸化炭素の回収・利用・貯蔵などの削減・除去技術、低炭素水素製造などのゼロ・低排出技術を加速する」との文言が書き込まれた。ロシアが主張したと言われている。2030年までに再エネ設備容量を3倍、エネルギー消費効率改善率を2倍にする、という具体的な数値目標に比べて漠然とした書きぶりだが、経産省や原子力業界が積極活用することは間違いない。
 原発を脱炭素電源と位置付けることは大きな誤りだ。原発はコストが高く、導入期間が長い電源で、導入までの間は、排出量の多い電源が運転し続けることになる。他の安価で導入の速い太陽光発電や風力発電などへの投資を妨げ、脱炭素も遅らせることにつながる。
 ところで、原発3倍宣言は世界で原発を3倍にすると言っているが、自国でどうするかはまた別の問題だ。実際、日本は技術輸出で貢献するとしている。この宣言をリードした米国も、国内に原発の建設余地はそれほどない。この宣言の実際の狙いは、3倍ではなく、今のところ消極的な世界銀行などの原発輸出への融資方針を変えるように圧力をかけることである。つまり、自国で建設するあてのない原子力産業の支援のために、低利融資によって途上国が原発を輸入しやすくしようというのである。だが、1基1兆~2兆円に上る原発を輸入できる国がどれ程あるのか、きわめて疑問だ。
 一方、2024年から長期脱炭素電源オークションが開始される。これは脱炭素に貢献できる電源に対して、長期で資金援助を行う仕組みだ。新設原発も対象となっており、将来的には既設原発も参加可能とする方針だ。原発はコスト高で、かつ現在、再稼働できていない原発は巨額の改修費を投じているため、60年超運転できたとしてもコスト競争力に疑問が生じている。そのため、脱炭素を名目に、資金援助しようというのだ。そのためのコストは電気料金に上乗せされて、電力消費者が支払うことになる。

第7次エネルギー基本計画
 日本の中期的なエネルギー政策の方針を定めているエネルギー基本計画はおおむね3年ごとに更新されている。前回の更新が2021年だったので、今年は改定議論が行われる。GXを受けて、原発の記述はこれまで以上に積極的なものとなることが懸念される。市民の注視が必要だ。
 ほかにも、放射性廃棄物の最終処分問題、福島第一原発の廃炉問題など、課題は山積しています。脱原発に向かうために、今年もスタッフ一同、日々努める所存です。ご支援・ご協力の程よろしくお願いいたします。       

(松久保 肇・事務局長)

  

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