要請 原発新設に関する世論調査について
2022年9月16日
NPO法人原子力資料情報室
8月24日の第二回GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議で岸田首相が示した原発の開発・建設方針について、対照的な世論調査が発表された。一つは朝日新聞が8月27、28日に行ったもので、もう一つはNHKが9月9日~11日に行ったものだ。
朝日新聞の調査では原発新設について、賛成が34%、反対が58%、NHKの調査では賛成が48.4%、反対が31.6%と、大きな差が出た。
私たちは、この差の原因は、質問文にあると考える。朝日新聞のものは、「原子力発電所についてうかがいます。あなたは、国内に原子力発電所を新設したり、増設したりすることに賛成ですか。反対ですか。」というシンプルなものだったのに対して、NHKのものは「原子力発電所の政策をめぐって、政府は、次世代の原子炉の開発や建設を検討する方針です。この方針に賛成ですか。反対ですか。」と、「次世代」を強調するものだったからだ。
次世代革新炉の開発・建設方針がでたGX実行会議で、岸田首相らは「次世代革新炉」が何かを示していない。ただ経済産業省の審議会「革新炉ワーキンググループ」で、経産省は革新軽水炉、小型軽水炉、高速炉、高温ガス炉、核融合炉を革新炉だとしている。さらに、同ワーキンググループで経産省は5つの革新炉の中で最も導入が早い革新軽水炉について2030年代半ばに運転開始する開発・建設計画を示している。
革新軽水炉について経産省に確認すると、福島第一原発事故後の新規制基準に適合するものは既存の原発含め革新軽水炉だと回答した。また、欧米や中国で稼働中または建設中の原子炉についても含まれうる概念だとも説明した。つまり、次世代革新炉で建設される可能性が最も高いのは現在あるレベルの原発ということだ。
「次世代」や「革新炉」と呼ぶと、あたかも安全性が飛躍的に高まった未来の原発であるかのような印象を与える。しかし、現実的に建設されうるのは、現在存在する原発、またはそれが若干改良された程度のものになる。そのため、「次世代」や「革新炉」と表記することは回答者に不要な先入観を与えてしまうことになる。
つまり、アンケートとして適切なのは、単純に原発新設について質問した、朝日新聞の質問文だったということになる。
今後、世論調査を行うメディアには注意をお願いしたい。
以上
●参考:世論調査抜粋
原子力発電所についてうかがいます。あなたは、国内に原子力発電所を新設したり、増設したりすることに賛成ですか。反対ですか。
賛成 34
反対 58
その他・答えない 8
朝日新聞世論調査―質問と回答〈8月27、28日実施〉
問10 原子力発電所の政策をめぐって、政府は、次世代の原子炉の開発や建設を検討する方針です。この 方針に賛成ですか。反対ですか。
1. 賛成 ・・・・・・・・・ 48.4 %
2. 反対 ・・・・・・・・・ 31.6 %
3. わからない、無回答 ・・・・・・・・・ 19.9 %
NHK 2022年9月 政治意識月例電話調査