『原子力資料情報室通信』392号(2007.2.1)短信

『原子力資料情報室通信』392号(2007.2.1)短信

※情報は執筆時点のものです

■美浜3号炉・原子炉起動時に初歩的なミス

1月10日に営業運転再開前の調整運転のために原子炉の起動を開始した関西電力の美浜3号炉(加圧水型炉、82.6万キロワット)で、ホウ素濃度の設定ミスで制御棒を引き抜いても臨界に達しないトラブルが発生した。
 加圧水型炉では、核分裂反応の調整のためホウ素をホウ酸水の形で添加し、運転中は化学堆積制御系で調整している。今回のトラブルでは、ホウ素の濃度を高く設定していたため未臨界ですんだが、逆にホウ素濃度を低く設定すれば予定に反して早く臨界に達し危険な事態を招きかねない。
 関西電力は、2004年11月の復水配管破断事故後に初めて再起動した昨年9月から10月ごろの試験運転時の燃料の燃焼具合が把握しきれていなかった、と必要なホウ素濃度の計算を誤っていたことを認めている。

■高浜1号炉・放射能含む冷却水4作業員にかかる

定期検査中の高浜1号炉(加圧水型炉、82.6万キロワット)の原子炉補助建屋で1月14日、放射生物質を含む1次冷却水約370リットルが配管から漏れ、うち90リットルが協力会社の作業員4人にかかった。
 福井県原子力安全対策課によると、14日午前に定検中に取り換えた余熱除去系の弁の耐圧漏えい試験を実施。同日午後2時ごろ、試験のため配管に設置した閉止板を外すため接続部のボルトを緩めたところ、水が噴き出し、4人にかかった。手順では、午後1時半ごろから水抜き作業を開始し、完了後の15日に閉止板を外す予定だった。
 関電の調査によると、同社原子炉保修課社員が、水抜きを担当する発電室に確認しないまま前倒しを判断。工程に余裕を持たせようと、協力会社に指示したという。
 このため、発電室では工事が行なわれていることを知らずに、水抜き弁を操作。閉止板を外す作業前には付近の配管に水が残っていないことを確認していたが、弁の操作による圧力で、他の部分に残っていた水が漏れたとみられる。
 漏水中の放射能量は約690万ベクレルと大きく、また作業管理に問題があることから、県は安全協定上の異常事象として対応した。
 冷却水をあびた作業員は工事を中断し、管理区域外に退出し、洗浄したので被曝はなかったとしている。

■東海第二・ジェットポンプ流量計測管と制御棒の破損

2006年11月18日から定期検査のため停止している日本原電の東海第二原発(沸騰水型炉、110万キロワット)でジェットポンプの流量計測管の破断とハフニウムフラットチューブ型制御棒のさや(被覆材)のひび割れが見つかった。
 11月22日に、20台(A系とB系にそれぞれ10台)あるジェットポンプのうちの2台(No.9
とNo.11)に付属している流量計測管が破断していることがわかった。炉心シュラウドの外周にそって設置されているジェットポンプは動翼をもたず、再循環ポンプから戻り返されてくる水の勢いで周りの水を吸い込み水流を作り出す。水を勢い良く原子炉の底部に送り込んで原子炉内に強制的に対流を引き起こす役目を果たしている。
 流量計測管はステンレス(SUS304)製の外径13.8ミリ、厚さ2.2ミリの管だ。No.9の管ではエルボ部近くの破断と配管支持溶接部の破断が起きており、No.11の管ではエルボ部近くの破断が見つかった。その後の調査の結果、12月8日までにあらたに4台のジェットポンプに流量計測管で破断やひび割れが見つかった(No.3、4、8、10)。No.11だけがB系で、他の5基はA系のものである。
 日本原電は12月28日に、再循環流量制御弁絞り運転時に発生した震動に計測管などが共振し大きく震動し、疲労によりひび割れが発生して破断に至った、とする推定原因を発表した。2001年に再循環ポンプの電動機を交換した直後の試運転時と、同じ年の12月に起きた給水系の異常で原子炉の出力を約65パーセントにまで低下させて11日間運転していた時に共振の原因となる圧力脈動が発生する可能性があった、という調査概要を公表している。
 日本原電は、対策として管などの交換は行なわないとしている。破断した計測管には接続器具による固定補修、破断やひび割れが起きている支持部にはクランプによるジェットポンプデフューザーへの固定化を行ない、これによって共振も回避できると説明している。また、異常がみつかっていないが点検の結果、共振を起こす可能性の高いとわかった3台のジェットポンプ(No.1、12、14)についてもクランプによる補強を行なうと発表した。
 制御棒に関しては、12月12日に、2本の出力調整用として使われているハフニウムフラットチューブ型の制御棒のさやの上部にひび割れが見つかった。ひび割れの詳しい状況はあきらかにされていないが、2本の制御棒にはそれぞれ最大117ミリと89.3ミリの長さのひび割れを含め、複数のものが確認されている。東海第二原発には同じ仕様の制御棒が全部で13本あり、のこりの11本にもひび割れが起きているのが12月20日までにわかった。

■ICRP新勧告3月に採択予定

1月12日、ICRP(国際放射線防護委員会)新勧告ドラフトの最終版がICRPのホームページ上(http://www.icrp.org/ )で公開された。
内容の検討は最終段階に入っており、編集上のコメントだけを2月末まで受け付け、3月の主委員会で採択される予定。

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