六ヶ所再処理工場稼働前の放射能調査

『原子力資料情報室通信』第591号(2023/9/1)より

 六ヶ所再処理工場の竣工前に海水や松葉、土壌などの放射性物質の調査を行なっておきたいと考え、
昨年度2回の調査を行なった。測定器の関係からセシウム137と134の汚染度合いの測定となる。青森
県も環境試料の汚染度合いの調査を行なっているが、それとは独立した市民サイドからの調査も必要だと考えてのことである。機器はヨウ素131も測定できるが、半減期が短く、長らく停止している六ヶ所再
処理工場の周辺試料からは検出限界以下という結果となるので、今回の測定核種からは外した。ただし、竣工した場合にはチェックが必要だと考えている。
 測定試料は海水、松葉、土壌で、それぞれ3地点から、空気中の浮遊塵の測定は1地点で行なった(図)。現地では山田清彦さんに地点決定と同行をお願いし、また、菊川慶子さんに協力をいただき、大気を吸引して浮遊塵を採取した。将来的には大気中の水蒸気を回収してトリチウムの測定も実施したいと考えている。


 1回目の調査は、2022年5月11日に、2回目の調査は、同年9月14日に実施した。いずれも東京から車(レンタカー)で向かい採取した。これらの調査はアウトドアブランド・パタゴニアの助成を受け
て実施できた。測定は、新宿代々木市民測定所に依頼した。ちょうど、米カリフォルニア大学の博士課程で日本の放射能測定運動を研究中のキム・イナさんが同測定所にインターンとして来所していたので、2度とも採取を手伝ってもらった。
 海水では、1地点40リットルを採取。不純物を濾過したのち、リンモリブデン法によりセシウムを沈
着させ、沈殿物をゲルマニウム半導体検出器で72時間ガンマ線測定を実施した。測定前の作業を行なっ
たのは当室の谷村暢子が行なった。
 浮遊塵は、ハイボリュームエアサンプラーで10,000m3を吸引して石英フィルターに採取した。菊川さんの花とハーブの里に集塵機を設置させていただいた。同フィルターに吸着した塵から放射性セシウムを48時間測定した。
 松葉は1年葉を1地点2リットル分を採取。これは細かく砕き、自然乾燥させて20時間測定を実施し
た。土壌は同様に2リットル容量分を採取。1回目採取分は自然乾燥を行ない、2回目採取分の試料は
85℃、7時間保持で乾燥した。
 新宿代々木市民測定所のゲルマニウム半導体検出器は、2Lで20時間測定の場合の検出限界が0.1Bq/
kgである。ただし、土壌は過去の汚染を残しているため、30分程度で有意な結果が出ることから30分
とした。結果を表に示す。
 泊港や尾駮沼の海水からセシウム137が検出された。また、泊港や高瀬川の岸辺の砂からもセシウム
137が検出された。いずれもわずかの量だ。アクティブ試験、福島事故、あるいはチェルノブイリ事故な
どの影響が考えられるが、特定は困難だ。ただ、いずれにせよこれが測定前のベースとなる。
 2023年上期の六ヶ所再処理工場竣工との公式発表を受けて、竣工前後の測定を考えた取り組みだっ
た。しかし、その後の審査状況を見ていくと、竣工は相当先に伸びそうである。とはいえ、今年度も少
なくとも1回の測定を実施したい。

(伴 英幸)

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