【新刊】プロブレムQ&A むだで危険な再処理[いまならまだ止められる]
【新刊】プロブレムQ&A むだで危険な再処理[いまならまだ止められる]
西尾漠・著
緑風出版刊
1500円+税(送料別)
Q&A形式で、核燃料サイクルや六ヶ所再処理工場について一から学べる入門書。再処理とは? その危険性は? といった基礎的な質問や再処理と核拡散の関係など、24の質問に答えながら、核燃料サイクルの問題点や政府、電力会社のPRに隠されたうそを解き明かす。六ヶ所再処理工場には2章をさいて、問題点を指摘するとともに、「まだ引き返せる」と訴えている。難しいことばには解説が付き、ふりがなも振られているため、若い方にぜひおすすめしたい一冊。(I)
ご注文は冊数・送付先明記のうえ原子力資料情報室
TEL.03-3357-3800 FAX.03-3357-3801 へ。
<もくじ>
Ⅰ 再処理とは?
Q1 再処理って何をするのですか?
Q2 再処理でリサイクルはできないのですか?
Q3 再処理で放射能のごみは増えるのですか?
Q4 使用済み燃料対策こそが再処理の目的なのですか?
Ⅱ 六ヶ所再処理工場・その1
Q5 六ヶ所再処理工場はもう運転を始めているのですか?
Q6 寄り合い所帯での建設で大丈夫なのですか?
Q7 これまでに事故は起きていますか?
Q8 東海工場の経験は役に立たなかったのですか?
Ⅲ 再処理の危険性
Q9 再処理工場では原発一年分の放射能を一日で出すのですか?
Q10 クリプトンやトリチウムは垂れ流すしかないのですか?
Q11 どんな事故が起こりうるのですか?
Q12 大事故が起きたらどれくらいの被害が予想されますか?
Ⅳ 再処理と核拡散
Q13 再処理から核兵器が生まれるとはどういうことですか?
Q14 再処理工場でプルトニウムが行方不明になるのですか?
Q15 軍事転用を防ぐしくみは万全なのですか?
Q16 プルトニウムを貯めておいてはなぜいけないのですか?
Ⅴ 海外の再処理工場
Q17 イギリスやフランスの再処理工場の汚染はそんなにひどいのですか?
Q18 ドイツなどの再処理工場建設はなぜ中止されたのですか?
Q19 世界の流れは脱再処理に向かうのでしょうか?
Q20 アメリカで再処理が復活するって本当ですか?
Ⅵ 六ヶ所再処理工場・その2
Q21 コストはどれくらいかかるのですか?
Q22 国や電力会社が一時は建設を止めようとしたのはなぜですか?
Q23 再処理工場を動かすことは青森県にとってどんな意味があるのですか?
Q24 動き出した再処理工場でも止めることはできますか?
Ⅶ 資料
原子力長期計画/政策大綱に見る[再処理]
私たちは、六ヶ所再処理工場を動かさないよう訴えます。
<まえがき>
青森県の下北半島のつけ根、上北郡六ヶ所村に「再処理工場」などさまざまな核燃料サイクル関連施設が立)地されています。一九八四年に立地を申し入れたのは電力会社の連合体である電気事業連合会。同連合会は建設主体ではないのですが、電力業界が総意で申し入れたということなのでしょう。
そもそも申し入れ時点では建設主体が設立途上だったのですから、出発点から歪んだ形だったとも言えます。再処理工場の建設主体としては日本原燃サービスが一九八〇年三月一日に設立されていましたが、低レベル放射性廃棄物の埋設施設とウラン濃縮工場の主体である日本原燃産業の設立は、申し入れの翌一九八五年三月一日でした。後に一九九二年七月一日、二つの会社は合併して「日本原燃」となります。いずれにせよ資本金の大部分は電力各社が出資た、いわば電力会社全体の子会社です。
さて一九八四年の申し入れですが、まずは四月二〇日、形の上では六ヶ所村と特定せずに、青森県に対して県内受け入れが申し入れられました。そして七月二七日、青森県と六ヶ所村に改めて申し入れが行なわれています。電気事業連合会の会長だった小林庄一郎関西電力社長は、一九八四年九月三日付の『朝日新聞』青森県版で、こう語っていました。
「六ヶ所村のむつ小川原の荒涼たる風景は関西ではちょっと見られない。やっぱりわれわれの核燃料サイクル三点セットがまず進出しなければ、開けるところではないとの認識を持ちました。日本の国とは思えないくらいで、よく住みついて来られたと思いますね。いい地点が本土にも残っていたな、との感じを持ちました」。
夜郎自大的もの言いはさておき、電力業界が積極的・主体的に立地をしたような発言ですが、同年七月一九日付の『日本経済新聞』で中嶋記者は、次のように書いています。「今回の立地決定は電力業界にとって苦悩に満ちた選択だった。国、財界、青森県、電力業界の四者が参加したトランプゲームで、最後にジョーカーをつかまされたのが電力業界だった、といえるかもしれない」。
青森県六ヶ所村のむつ小川原地区は、一九六九年五月三〇日に政府が打ち出した新全国総合開発計画の“目玉”として、一大鉄鋼・石油コンビナートの建設が計画されたところです。ところが、国家石油備蓄基地の他には進出企業がなく、国と青森県と財界の共同出資による第三セクター「むつ小川原開発会社」が経営危機に陥っていました。開発会社は、約五〇〇〇ヘクタールの広大な土地を無為に抱え込み、三〇億円の資本金に対して、借入金は一三〇〇億円に達していました。
土地を手放し、農・漁業をやめて新住区に移り住んだ人びとも、出稼ぎに出るしかない状況でした。一九八四年四月二一日付の地元紙『東奥日報』に載っていた六ヶ所村民の言葉を借りれば「ドクでも食べなきゃ、生きてゆけない」ところにまで追い込まれていたのです。もちろん、「ドクといっても、それほどではないだろう」という甘い目算が、そこには働いていたわけですが。
いずれにせよ、核燃料サイクルという、まさにドクでしかないものの建設地を決めるに際して、地盤や気象・海象、生物環境、社会的条件などは一顧だにされず、もっぱら政治的理由によって「適地」が選定されたのには、いまさらながら驚きを禁じ得ません。
ちなみに小林発言に出てくる「核燃料サイクル三点セット」とは、再処理工場、低レベル放射性廃棄物埋設施設、ウラン濃縮工場の三施設を言います。現在はこれに高レベル放射性廃棄物貯蔵施設が加わって四点セットとなっており、さらにMOX(プルトニウム・ウラン混合酸化物)燃料加工工場や廃炉廃棄物埋設施設など、次々と点数が増えようとしています。
高レベル放射性廃棄物貯蔵施設は、当初は再処理工場の付属施設とされていましたが、事業許可を申請する際、独立の施設に変更されました。六ヶ所再処理工場ではなく、イギリス、フランスの再処理工場で発生した高レベル放射性廃棄物のガラス固化体の貯蔵施設です。日本の原発の使用済み燃料を送って再処理をしてもらったことに伴い、日本に送り返されてくる廃棄物で、「返還廃棄物」とか「返還ガラス固化体」とかと呼ばれます。六ヶ所再処理工場で発生するガラス固化体の貯蔵施設は、同工場の付属施設として別にあります。
いずれも、将来は最終処分場に向けて搬出されることとされていますが、最終処分場は候補地も決まっていません。
六ヶ所再処理工場は現在試運転中ですが、本格的な操業開始(計画では二〇〇七年八月)を何としても止めたいと願っています。そうすることで、他の核燃料サイクル関連施設についても操業を中止させたり拡大に歯止めをかけたりできるとも考えています。