チェルノブイリ事故処理作業者 低線量の被曝でも白血病リスク増加

『原子力資料情報室通信』第463号(2013/1/1)より

 チェルノブイリ原発事故の収束や除染作業にたずさわり、放射線被曝した作業者約11万人を20年間にわたって追跡調査した結果、白血病の発症リスクが高まることを確かめた
と、米国立がん研究所やカリフォルニア大学サンフランシスコ校などの研究チームが11月8日発行の米国の専門誌ENVIRONMENTAL HEALTH PERSPECTIVESに発表した。
 同調査研究は、1999年からウクライナと米国両政府の合意のもと、ウクライナ放射線医学研究センターと米国立がん研究所が共同で実施しているものである。
 チェルノブイリ事故処理作業者に白血病のリスクが増加していることは、事故から15年目にすでに国際がん研究機関(IARC)のロシア人事故処理作業者の調査などによっても確認されている。これらの放射線影響の研究は2008年と2010年の第56・57回原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)で国際的に認められている。
 今回の論文は「チェルノブイリ原発事故処理作業者における放射線被曝と慢性リンパ性およびその他白血病のリスク」と題したもので、ウクライナ人の事故処理作業者11万645人に対してコホート内症例対照研究(被験者とそれ以外の母集団を比較する疫学調査の方法)を行なった。137人が白血病になり、うち79人が慢性リンパ性白血病(CLL)であった。累積被曝線量は、9割が200ミリグレイ未満で、そのうちの9割は100ミリグレイ未満であった。1986年から2006年までに事故由来の白血病と診断された症例については、血液学者や血液病理医のグループで確認した。対照群は、居住地と出生年で被験者と照合した。骨髄線量は、不確実性評価による現実的な線量再構築法(RADRUE)により推定した。条件付きロジスティック回帰モデルを用いて、線量1グレイ当たりの白血病の過剰相対リスク(ERR/Gy)を推定した(表参照)。その結果、すべての白血病において有意な線形の線量反応関係が見られた。全体で、白血病症例の16%(非CLLの15%、CLLの18%)が放射線被曝を原因とするものである。
 チェルノブイリ原発事故処理作業による低線量および低線量率の放射線被曝は、白血病リスクの有意な増加と相関しており、これは、日本の原爆生存者に対する推定と一致する。主要な分析にもとづき、CLLも非CLLもともに放射線感受性を有すると結論している。
 福島第一原発事故による労働者の被曝による健康被害を考える上でも貴重な報告である。
今後の追跡調査にも注目したい。(渡辺美紀子)

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