タニムラボレター No.007 謎のガンマ線ピークの出現/抹茶についての追加調査報告

『原子力資料情報室通信』第463号(2013/1/1)より

 

 

 

 

 

謎のガンマ線ピークの出現

 10月に収穫した栃木産の大豆の葉から、セシウムやヨウ素以外の見慣れない強いガンマ線が検出されました。エネルギー強度はおよそ480keVです。アイソトープ手帳でこの強さのガンマ線エネルギーを持つ核種を調べたところベリリウム-7(Be-7、半減期53.22日)の可能性が浮上しました。Be-7は太陽や宇宙からの高エネルギー放射線と大気中の窒素や酸素との核反応によって大気上層で生成したもので、大気中でエアロゾルとして存在し、降水中にも存在するそうです。
 大豆の葉を収穫した日は雨が降っていました。また、大豆の葉の表面には小さな毛が密に生えていてざらざらした手触りでした。付着した雨水を保持する効果があるようです。雨と一緒に大気中のBe-7が大豆の葉に付着し測定試料に混入したために、図のような鋭いピークが表れたと考えました。
 Be-7の半減期は約53日なので2ヵ月後にこのピークが半減すれば予想とつじつまが合います。2ヵ月後の今月、試料を再測定したところ、セシウム-137に対するこのピークの相対強度が約1/2になったので、予想通りBe-7と判断しました。

抹茶についての追加調査報告

 11月号の抹茶の放射能に関する報告には国内外から高い関心が寄せられ、鹿児島産と表示された抹茶から放射能を検出した件には、特に多くのお問い合わせをいただきました。
 九州には放射能汚染がほとんどないので1)抹茶からの放射能検出はおかしいと思い、ゲルマニウム半導体検出器によるクロスチェックも行いました。販売者に産地を混合していないか問い合わせたところ、100%鹿児島産という回答を得ました。再度この測定結果を説明し再調査を依頼すると、販売者は把握していなかったが仕入れ業者が三重県産の茶を20%混ぜていたという回答がありました。
 しかし昨年、三重県は荒茶の放射性セシウム量を7.7および9.3Bq/kgと発表しており2)、鹿児島産に三重産を20%混ぜても放射能検出はされないでしょう。三重県でない産地の茶が混ざっていると考えてしまいます。
 茶は内容の5割を占めればその産地を表示できますし、放射性セシウム量は基準値(100Bq/kg)を下回っているのですが、このような状況では産地表示を見て商品を選べないではないかと憤りを感じています。 

 

(谷村暢子)

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