新安全基準骨子案のパブリックコメントへの応募意見

『原子力資料情報室通信』第466号(2013/4/1)より

 

 原子力規制委員会は2013年2月7日から28日にかけて、3つの安全基準骨子案(設計基準シビアアクシデント対策地震・津波)のパブリックコメントを募集した。

 これらの骨子案は、「設計基準」と「シビアアクシデント対策」を「発電用軽水型原子炉の新安全基準に関する検討チーム」が、「地震・津波」を「発電用軽水型原子炉施設の地震・津波に関わる新安全設計基準に関する検討チーム」が、それぞれわずか3か月程度の検討期間で作成した。

 「設計基準」については、原子炉、格納容器、炉心冷却装置などに関する指針である「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針」を引き継ぎ、これに対して主に5点の強化(考慮すべき自然事象の追加、火災防護対策の強化、安全上特に重要な機器の信頼性強化、外部電源の強化、熱除去系の物理的防護)を図っている。「地震・津波」については基準地震動などを規定した「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」を引き継ぎ、これに加えて主に5点の強化(津波基準の厳格化、高耐震性要求対象の拡大、活断層認定基準の厳格化、精密な基準地震動策定、地盤安定性基準の明確化)を図っている。また「シビアアクシデント対策」については今回新たに作成されたもので大きく4点のシビアアクシデント対策(炉心損傷防止対策、格納容器破損防止対策、意図的な航空機衝突への対応、放射性物質の拡散抑制)が記載されている。

 新たに作成されたこれらの骨子案は、東京電力福島第一原子力発電所事故以前に比べれば、厳しい規制内容にはなっている。しかし、2006年に「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」が改訂された際は、この改定が多くの問題をはらんだものであったにせよ、5年間にわたって検討が行われたことを考えると、わずか3か月で3つの安全基準を作成するという今回の検討が、いかに拙速に行われたかが分かる。

 今後、パブリックコメントで提示された意見や、その他専門家の意見などを踏まえて修正を行い、原子力規制委員会規則案として再度パブリックコメントにかけられた後、7月頃に施行される予定だ。

 このパブリックコメントに対して、情報室が提出した意見と、他の団体・個人が応募した意見の中から特に重要と思われるものを、5つの観点から整理して以下に紹介する。

 1. 曖昧な表現

 以前から、原子力規制当局や電力業界は、安全設計審査指針類の表現を曖昧にして、規制の弛緩を図ってきたと指摘されてきた。これが、東京電力福島第一原子力発電所事故の原因の一部であった。たとえば、国会の東京電力福島原子力発電所事故調査委員会の報告書は「今回の事故は、(中略)歴代の規制当局及び東電経営陣が、それぞれ意図的な先送り、不作為、あるいは自己の組織に都合の良い判断を行うことによって、安全対策が取られないまま3.11を迎えたことで発生したものであった」と指摘している。

 しかし、東京電力福島第一原子力発電所事故の反省を踏まえて作成されたはずの今回の骨子案でも、「シビアアクシデント対策」には「更なる信頼性向上を図るため」や「有効に必要な機能を果たす」、「地震・津波」には「適当な手法」や「十分に考慮する」、「設計基準」においても「適切と考えられる」といった記載があり、解釈の余地を残すものとなっている。
 そのため今回、情報室は、たとえば「シビアアクシデント対策」については


【意見】「新安全基準(シビアアクシデント対策)」に多く見られる「更なる信頼性向上を図るため」という記述を削除する。
【理由】原子力発電所が危険なものであり、信頼性が低いものであるという認識をまず徹底するべきである。それを前提とすれば、「更なる信頼性」といった表記は出来ない。


 等の意見を、「地震・津波」では、「4.耐震設計方針」について、


【意見】「おおむね弾性状態に留まること」とあるが、あいまい過ぎる表現である。「おおむね」ではなく、定量的に指定すべきである。
【理由】解釈に幅が生じて、工学的判断といった信頼性に欠ける議論になるおそれがあるため。


 等の意見を、また「設計基準」においても「2.原子炉施設の共通の技術要件」について、


 

【意見】「適切と考えられる設計用地震力に十分耐えられる設計であること。」から「適切と考えられる」を削除すること
【理由】解釈の余地を残す「適切」という言葉は無くすべきであるため。


 等の意見を提出している。

 また、同様の意見は多くの団体から提示されているが、特に、「原子力規制を監視する市民の会」アドバイザリーグループが提出した意見書に掲載されている、「設計基準」の「3.原子炉施設における個別の系統」への指摘、


【意見:川井康郎】原子力施設においては、ALARAの思想は採るべきではない。Reasonably Achievableの考え方が、放射線量低減の実現や設備の安全性向上よりも事業者の判断による建設コストの低減化優先に繋がり、福島を含むこれまでの幾多の事故事例の温床になってきたことを反省せねばならない。「基準」には明確な合否があってしかるべきであり、ALARAのような曖昧な判断があってはならない。


 は、この問題の本質をつく重要な指摘だ。

 ALARAとは“As Low As Reasonably Achievable”の略で、公衆の被ばくは「合理的に達成できる限り低く保たなければならない」とする国際放射線防護委員会(ICRP)などが策定した考え方である。しかし裏を返せば「合理的に達成できる」限りでしか、公衆の被ばくは下げなくても良いとする考え方でもある。この考え方こそが、安全とコストを比較衡量可能な対象として考える源泉なのだ。

 2. 地震・津波

 今回「地震・津波」では、「後期更新世(13~12万年前)以降の活動が否定できないもの」とされてきた活断層の評価について、「後期更新世の活動性が明確に判断できない場合には、中期更新世(約40万年前以降)まで遡って(中略)評価すること」と記載され、長期間に渡って活断層を評価することで、確実な活断層評価を行おうとしているように見える。

 しかしこれでは、原則は後期更新世の評価であり、「明確に判断できない場合」でなければ中期更新世の評価は行わないこととなる。

 また、昨年から行われている原子力発電所の活断層評価では、以前は活動性を否定されていた原子炉直下を横切る断層が、実は、後期更新世以降に活動した活断層である可能性が高いと指摘されている。つまり、活断層評価対象期間を長期化したとしても、存在する活断層を無いとするような恣意的な運用の余地もなお存在するのだ。

 そのため今回、情報室は、「地震・津波」の「1.地震及び津波に対する設計の基本方針」に対する意見として、


【意見】「(2)『将来活動する可能性のある断層等』としては、中期更新世以降(約40万年前以降)の活動が否定出来ないもの。」とすること。
【意見】(4)の「それ以降の段階も含めて、この「残余のリスク」の存在を十分認識しつつ、それを合理的に実行可能な限り小さくするための努力が払われるべきである。」につき、合理的に実行可能という文言を削除する。
【理由】「残余のリスク」が存在することは仕方がないが、残余のリスクを縮減するために厳密なチェックが必要である。そうしなければ全て残余のリスクとして「合理的に実行可能な限り小さくするための努力が払われるべきである。」として、危険性が割り引かれたものとなってしまうため。


 とする意見を提出した。

 また、元GE原発技術者である佐藤暁さんからは「地震・津波」の「1.地震及び津波に対する設計の基本方針」について、


米国における “Capable Tectonic Source” の定義では、「約50万年前よりも新しいもので再発性を呈しているもの、又は、生じた時期が5万年前よりも新しいもの」とある。しかしこれは、「このような特徴が明らかな場合には、”Capable Tectonic Source” であると言う」という意味であり、逆に、明確に「”Capable Tectonic Source” ではない」と言い切るためには、「第四紀(約258 万年)よりも古いこと」と記されており、前述の5 万年、50 万年を根拠とした即断を牽制している。


 「3.基準地震動の策定」と「6.基準津波の策定」について、


「適当な手法」、「十分な考慮」などと抽象的な言葉が並び、具体的にどのように数値化するのかが極めて曖昧であるが、正にこの部分こそ我が国の策定手法が極端に甘く、過去に何度も超過を繰り返してきた弱点であったと思われる。EU の132基に対しては、発生頻度が10,000 年に1 回の規模とされ、米国では100,000 年に1 回の規模とされているが、今や世界的に標準的な「確率論的ハザード評価(PSHA)」の導入が述べられていない。(中略)我が国の場合、10,000 年や100,000 年に1 回どころか、たった5.5 年の間に延べ5 回も(設計基準を)超過しているということが実績である。以前から、「適切な手法」、「十分な考慮」という慣用句はあったのだが、何の意味もなかったことの証左である。


 という意見が提出されている。

 3. 計測系について

 東京電力福島第一原子力発電所事故では、原子炉内の圧力や温度、水位などを計測する機器が軒並み停止して、原子炉内の状況を把握できなくなったことが、事故の悪化要因の一つとなった。また、現状の原子炉内の状況も把握できておらず、事故処理作業の大きな妨げとなっている。

 今回の骨子案でもその点には留意しており、たとえば「シビアアクシデント対策」において炉心内の状況測定に関する記載がある。しかし明確な条件の記載は存在しておらず、ある一定の条件のもとまでしか測定され得ない可能性があるため、情報室では、「シビアアクシデント対策」の「2.シビアアクシデント対策における要求事項(個別対策別の主な設備等について)」について、


【意見】どのようにしてシビアアクシデント時にプラントの必須情報を得るのか明記すること。
【理由】そもそも、シビアアクシデント時にプラントの必須情報は得ることができるのか。このような計装機器は存在するのか。存在しないのにシビアアクシデント対策が取られていると言えるのか。


 という意見を提出している。

 4. 代替設備系に関する問題

 今回、「シビアアクシデント対策」は、ある施設に何らかの問題が発生した際に備えて代替設備を用意することを要求している。これ自体は改善点なのだが、問題は、この代替設備について、恒設代替設備の設置を原則としているものの、可搬代替設備でも可能であるとしていることだ。安全基準においては取れる対策は全て実施するという原則であるべきであり、恒設代替設備を設置した上で、可搬代替設備の導入を推進するべきである。

 そこで情報室では、「シビアアクシデント対策」の「2.シビアアクシデント対策における要求事項(個別対策別の主な設備等について)」について、


【意見】(信頼性向上)の1について、「可搬式代替設備により必要な機能を確保できる場合であっても、更なる信頼性向上を図るため、原則として、恒設代替設備を設置すること。」を「恒設代替設備の設置を必須とすること。」に差し替えること。


という意見を提出した。

 5. 共通原因故障に関する問題

 東京電力福島第一原子力発電所事故では、地震や津波といった自然現象、作業ミスといった人為事象によって、安全系に関わる複数の設備や機器が同時に機能を喪失する「共通原因故障」が起きた。今回の骨子案では、原子力規制委員会は共通原因故障の想定を大幅に引き上げたとしているが、今なお「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針」と同様、「単一故障の仮定」(単一の原因によって一つの機器が所定の安全機能を失うこと)を維持している。

 情報室の提出意見には、この点について大きく取り上げてはいないが、「原子力規制を監視する市民の会」アドバイザリーグループは、


4.(前略)もっとも基本的な欠陥は、旧指針の「単一故障の仮定」が変更されていないことである。福島事故にみられるように、外的事象(自然現象、人為事象)では、安全系に関わる複数の設備・機器が同時に機能を失う現実的な可能性がある(共通原因故障)にもかかわらず、このことが設計基準に反映されていない。


 という意見を提出している。

 

 原子力規制を強化したからといって、原子力事故がなくなるわけではない。しかし、事故を減らすことは可能であろう。脱原発の達成後も廃炉・放射性廃棄物の管理等のために原子力規制は必要不可欠だ。また規制を強化することはコストの上昇、ひいては電力会社の脱原発を促進することにもつながるだろう。

 情報室では、今回ご紹介した意見の反映状況を確認しながら、今後も、原子力規制の強化を監視していく。

(松久保 肇)

※今回引用した「原子力規制を監視する市民の会」アドバイザリーグループの提出意見は、こちらから、佐藤暁さんの提出意見はこちらから、全文をダウンロードすることができる。

 

 


○原子力資料情報室提出意見一覧

★新安全基準(シビアアクシデント対策)関連
指摘項目 指摘内容
全体 【意見】「新安全基準(シビアアクシデント対策)」に多く見られる「更なる信頼性向上を図るため」という記述を削除する。
【理由】原子力発電所が危険なものであり、信頼性が低いものであるという認識をまず徹底するべきである。それを前提とすれば、「更なる信頼性」といった表記は出来ない。
「はじめに」 【意見】「はじめに」に記載されている「原子炉設置許可段階における新安全基準を構成するのは、以下の1~4及び6~9であり、骨子本文に具体的な案が記されている。5、10及び11は、原子炉設置許可段階で求められるものではなく、今回のパブリックコメントの対象ではない。今後、具体的に検討する必要がある。」を削除する。
【理由】特に5及び10は既存原発に規制をバックフィットする上で当然必要になる項目である。また、「今後、具体的に検討する」とはいつのことか不明である。
「2.シビアアクシデント対策における要求事項(個別対策別の主な設備等について)」
(1)共通事項
①代替設備に対する要求事項
【基本的要求事項】関連
【意見】(容量、環境条件及び荷重条件、操作性)について時間的条件を明記する。
【理由】1の一、二、三とあるが、これらで時間について、何も言っていない。「有効に必要な機能を果たす」と言っても、あいまいである。数字で時間的条件を明記すべきである。
「2.シビアアクシデント対策における要求事項(個別対策別の主な設備等について)」
(1)共通事項
④恒設代替設備に対する要求事項
【基本的要求事項】関連
【意見】(信頼性向上)の1について、「可搬式代替設備により必要な機能を確保できる場合であっても、更なる信頼性向上を図るため、原則として、恒設代替設備を設置すること。」を「恒設代替設備の設置を必須とすること。」に差し替えること。
【理由】可搬設備は接続等に時間がかかり、信頼性も低いため、代替設備は恒設を必須とし、更に可搬施設を用意するべきである。
「2.シビアアクシデント対策における要求事項(個別対策別の主な設備等について)」
(1)共通事項
⑤その他の要求事項
【基本的要求事項】関連
【意見】(恒設重大事故緩和設備)の3について、「事象発生後7日間は事故収束対応を維持できること。」とあるが、この期間は短いのではないか。
【理由】1週間でサイト外部は対応が可能になるのか。例えば、複数のサイトでシビアアクシデントが発生した場合、支援対応は可能なのか。また例えば首都直下型地震が発生した場合や、東海・東南海・南海連動型地震等、広域で被害が発生した場合等、支援対応は可能なのか。
「2.シビアアクシデント対策における要求事項(個別対策別の主な設備等について)」
(2)手順書の整備、訓練の実施、体制の整備

【基本的要求事項】関連

【意見】シビアアクシデント時、人員の被ばく対策は十分にとられる必要がある。また、福島第一原発事故時のように作業員の線量引き上げ等は行われないことを前提として人員を確保する必要があることを明記すること。
  【理由】シビアアクシデント時、福島第一原発事故時のように作業員の線量引き上げ等は行ってはならず、きちんと人員を確保して作業員の被ばく線量低減を図る必要があるため。
「2.シビアアクシデント対策における要求事項(個別対策別の主な設備等について)」
(18)計装設備

【基本的要求事項】関連

【意見】どのようにしてシビアアクシデント時にプラントの必須情報を得るのか明記すること。
【理由】そもそも、シビアアクシデント時にプラントの必須情報は得ることができるのか。このような計装機器は存在するのか。存在しないのにシビアアクシデント対策が取られていると言えるのか。
「2.シビアアクシデント対策における要求事項(個別対策別の主な設備等について)」
(19)モニタリング設備

【要求事項の詳細】関連

【意見】海洋の放射性物質の計測体制を整えることを明記すること。
【理由】福島第一原発事故では放出放射能の7割が海洋に放出されたと言われている。にも関わらず、海洋の汚染状況は未だ明確になっていない。
「2.シビアアクシデント対策における要求事項(個別対策別の主な設備等について)」
(19)モニタリング設備

【要求事項の詳細】関連

【意見】(c)の最後の「。。」は「。」を1つとること。
【理由】誤記であるため。
「2.シビアアクシデント対策における要求事項(個別対策別の主な設備等について)」
(21)敷地外への放射性物質の拡散抑制対策

【要求事項の詳細】関連

【意見】「敷地外への放射性物質の拡散を抑制する設備」として恒設の循環水処理施設および廃水の貯蔵施設を追加する。
【理由】福島第一原発事故での汚染水の大量放出を再発させないため。
「2.シビアアクシデント対策における要求事項(個別対策別の主な設備等について)」
(21)敷地外への放射性物質の拡散抑制対策

【要求事項の詳細】関連

【意見】(d)は「複数プラント同時使用を想定し、所内プラント基数の全数分を配備すること」に修正する。
【理由】複数プラントの同時使用を想定して、所内プラント基数の半数の配備で良い理由が不明である。
「3.設計基準を超える外部事象への対応」
(2)特定安全施設

【要求事項の詳細】関連

【意見】「C 第一号及び第二号を一の施設が同時に満たす必要はなく、複数の施設で要求を満たしてもよい。」を「第一号及び第二号を一の施設が同時に満たす必要がある」に修正する。
【理由】Cは1号及び2号が別々の要件なのだから、複数の施設で要求を満たすのではいけない。それぞれ一の施設で満たすべきだ。
「4.シビアアクシデント対策の有効性の評価」
(1)炉心損傷防止対策及び格納容器破損防止対策の有効性評価

【要求事項の詳細】関連

【意見】Bの(a)は「原子炉内の温度、水位、圧力はどのような状況になっても確実に測定できていること、記録に残ること」とする。
【理由】燃料被覆管は1,200度以上にもなりうるのだからこのような限定をつける理由が不明である。
「4.シビアアクシデント対策の有効性の評価」
(2)使用済燃料貯蔵プールにおける燃料損傷防止対策の有効性評価

【要求事項の詳細】関連

【意見】想定事故について、使用済燃料貯蔵プールが崩落する事象を追加する。
【理由】福島第一原発事故では幸い、使用済燃料貯蔵プールの崩落は発生していないが、崩落が起こる可能性は当然あるので、想定する必要がある。
★新安全基準(地震・津波)骨子案 
指摘項目 指摘内容
「1.地震及び津波に対する設計の基本方針」

【基本的要求事項】関連

【意見】「(2)『将来活動する可能性のある断層等』としては、中期更新世以降(約40万年前以降)の活動が否定出来ないもの。」とすること。
【理由】調査対象を、原則後期更新世以降に限定する理由が不明であるため。
「1.地震及び津波に対する設計の基本方針」

【基本的要求事項】関連

【意見】(4)の「それ以降の段階も含めて、この「残余のリスク」の存在を十分認識しつつ、それを合理的に実行可能な限り小さくするための努力が払われるべきである。」につき、合理的に実行可能という文言を削除する。
【理由】「残余のリスク」が存在することは仕方がないが、残余のリスクを縮減するために厳密なチェックが必要である。そうしなければ全て残余のリスクとして「合理的に実行可能な限り小さくするための努力が払われるべきである。」として、危険性が割り引かれたものとなってしまうため。
「2.施設の重要度分類」

【要求事項の詳細】関連

【意見】Bクラスにある「放射性物質の放出を伴うような場合に、その外部放散を抑制するための施設で、Sクラスに属さない施設」を削除すること。
【理由】現状の耐震設計基本方針上も当該する施設は存在しない。誤解の余地をなくすためにも削除するべき。
「2.施設の重要度分類」

【要求事項の詳細】関連

【意見】「原子炉冷却材圧力バウンダリに直接接続されていて、一次冷却材を内蔵しているか又は内蔵しうる施設」及び「使用済み燃料を冷却するための施設」をSクラスとする。
【理由】当該施設がBクラスに設定されている理由が不明なため。
「4.耐震設計方針」

【基本的要求事項】関連

【意見】「おおむね弾性状態に留まること」とあるが、あいまい過ぎる表現である。「おおむね」ではなく、定量的に指定すべきである。
【理由】解釈に幅が生じて、工学的判断といった信頼性に欠ける議論になるおそれがあるため。
「4.耐震設計方針」

【要求事項の詳細】関連

【意見】応答スペクトル比率は0.5で良いのか。
【理由】福島第一原発事故原因が津波だったか、それとも地震も関係していたかが不明な状態で、依然、過去と同様、応答スペクトル(弾性設計用地震動/基準地震動)を0.5のままとしていることは問題である。
「4.耐震設計方針」

【要求事項の詳細】関連

【意見】(2)地震力の算定法について、「工学的判断」、「適切に」、「必要に応じて」などの文言は使うべきではない。
【理由】解釈に幅が生じて、甘い判断になる恐れがある。一意的な記述で、【詳細】を述べなければならない。これは、福島原発事故の教訓の一つである。
★新安全基準(設計基準)骨子案 
指摘項目 指摘内容
「2.原子炉施設の共通の技術要件」
(1)自然現象に対する設計上の考慮

【基本的要求事項】関連

【意見】「適切と考えられる設計用地震力に十分耐えられる設計であること。」から「適切とかんがえられる」を削除すること
【理由】解釈の余地を残す「適切」という言葉は無くすべきであるため。
「2.原子炉施設の共通の技術要件」
(1)自然現象に対する設計上の考慮

【要求事項の詳細】関連

【意見】隕石の落下についても考慮対象とすること
【理由】事故発生時、被害が甚大となる原子力発電所について、いかに確率が低かったとしても隕石の落下を検討対象に入れないわけにはいかないから。
「2.原子炉施設の共通の技術要件」
(4)内部溢水に対する設計上の考慮

【基本的要求事項】関連

【意見】内部溢水の発生を予防するため、現状の場所に使用済燃料プールまたはピットを設置することをやめさせること。
【理由】使用済燃料プールまたはピットのスロッシングによる溢水対策は、本質的には現状の場所に使用済燃料プールまたはピットがあるからいけないのである。
「2.原子炉施設の共通の技術要件」
(11)通信連絡設備等に関する設計上の考慮

【要求事項の詳細】関連

【意見】停電時でも利用可能な連絡設備を整備する。
【理由】停電発生リスクをなくすことは出来ないから。
「2.原子炉施設の共通の技術要件」
(12)避難通路に関する設計上の考慮

【要求事項の詳細】関連

【意見】「仮設照明の準備に時間的猶予がある場合には、仮設照明(可搬式)による対応を考慮してもよい。」を削除する。
【理由】事故時の不要な被ばくを避けるためにも仮設照明ではなく基本的には恒設照明であるべきだから。
「3.原子炉施設における個別の系統」
(5)原子炉格納施設
①原子炉格納施設
【基本的要求事項】関連
【意見】脆性的挙動について、どういったレベルで確認するのか。
【理由】玄海原発1号炉の危険性が指摘されているが、今後も「原子力ムラ」のみで試験片の調査を継続するのか。わからないことは安全サイドに倒しておくことが必要ではないか。
「3.原子炉施設における個別の系統」
(6)計測制御系
③制御室等(居住性を除く)
【基本的要求事項】関連
【意見】3の実施時について被ばくを避ける設計とすること。
【理由】作業員の被ばくを可能な限り低減させる必要があるため。
「3.原子炉施設における個別の系統」
(7)電気系統
①原子炉施設としての電気系統の安全設計に係る基本的要求事項
【要求事項の詳細】関連
【意見】Gについて送電鉄塔は耐震基準の対象に含む。
【理由】送電鉄塔の倒壊による停電発生リスクが存在するから。
「4.安全評価」
(1)安全評価

【基本的要求事項】関連

【意見】「五 周辺の公衆に対して著しい被ばくリスクを与えないこと」ついて数値を明記すること。
【理由】数値の明記がないと、現実妥協的になる恐れがある。福島事故では、緊急事態ということで、制限線量を上げた。そういうことがあってはならない。

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