タニムラボレターNo.009 2012年度 全国の農作物の放射能汚染傾向

『原子力資料情報室通信』第466号(2013/4/1)より

 

 

 

 

 

 

 食品の放射性セシウムの規制値が変更されて1年が経ちました。2012年度、農作物の放射能汚染について厚生労働省の発表*1を元に報告します。

 100ベクレル(Bq)/kgを超えた農産物の品目、産地、検査時期と、検査数に対する割合を表にまとめました。春はキノコ、山菜、タケノコなどが、秋にはキノコ、大豆、米などが100Bq/kgを超え、クリ、ユズ、ブルーベリーなどの果樹にも汚染がみられました。

表:放射性セシウムが100Bq/kgを越えた農作物とその産地(都道府県)
検査期間:2012年4月~2013年1月 
茶や加工食品等は含まれていない。大豆は12月31日まで暫定規制値(500Bq/kg)が適用された(厚生労働省のデータをもとに作成)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図:放射性セシウム検査結果の頻度分布図 
検査期間:2012年4月~2013年1月
 25Bq/kg未満と不検出を除いてグラフ化。茶や加工食品等は含まれていない。大豆は12月31日まで暫定規制値(500Bq/kg)が適用された(厚生労働省のデータをもとに作成)

 流通しているのは100Bq/kg以下の農産物のはずですが汚染ゼロではありません。検出レベルが低い範囲に着目して検査時期ごとの結果を図に表しました。4~5月と10月~11月は50~100Bq/kgの頻度が高い傾向にあり、品目は100Bq/kgを超えたものと類似していました。12月~1月にわずかに50~80Bq/kgの頻度が上がっているのは大豆、ソバ、玄米から検出されたためです。

 原発事故2年目の農作物の汚染傾向をみると、事故直後のような露地野菜の高い汚染はなくなり、セシウムを吸収しやすい作物や産地の傾向が明確になってきました。放射性セシウムの検出レベルは減少傾向ですが検査体制を緩めず継続的な監視が必要だと思います。

(谷村暢子) 

 

 *1:放射能検査の対象品目は「過去の放射性セシウム検出レベルの高い食品」等を、対象区域や検査頻度は「検出レベル・品目の生産・出荷等の実態に応じて実施」されている。検査主体は都道府県。厚労省が結果を取りまとめホームページで公表。

  

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