【声明】条例違反にも悪びれないNUMOに「地域との共生」を語る資格はない

条例違反にも悪びれないNUMOに「地域との共生」を語る資格はない

2023年12月21日
原子力資料情報室

 高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定の最初の段階である文献調査への応募の動きのあった長崎県対馬市では、比田勝尚喜市長が9月27日に調査受け入れ拒否を表明し、一応の決着を見た。しかし、事態はまだ収束していない。複数の市議会議員が原子力発電環境整備機構(NUMO)の費用負担で、青森県六ヶ所村や北海道幌延町の最終処分関連視察への視察旅行に参加していた。これが市の政治倫理条例第3条第1項第4号にある「政治活動に関し、企業団体等から、政治的又は道義的批判を受けるおそれのある寄附を受けないもの」という規定に違反している疑いがあるとして、同月、対馬市の市民団体の代表が審査請求をおこなっていた。

 その後、政治倫理審査会は10月から5回にわたり審議し、12月4日に報告書が公開された[i]。それによれば、NUMOによる施設見学の費用負担は財産上の利益供与に当たり「政治的または道義的批判を受けるおそれのある寄付にあたる」ので、視察に参加した市議は条例違反にあたるという。さらに、NUMOの費用負担は、政治資金規正法第21条第1項にある「その他団体は、政党及び政治資金団体以外の者に対しては、政治活動に関する寄附をしてはならない」という規定に違反する疑念があるとも指摘されている。

 本件についてNUMOはHPで、施設見学の際に必要な費用を支出することは「事業を実施する上で不可欠」と述べ、事業の趣旨が理解されなかったことを「残念」と述べた[ii]。そこには反省や謝罪の弁はない。NUMOは12月11に開催された第2回特定放射性廃棄物小委員会でも、地方議会議員対象の視察旅行を継続する意思を示し、条例違反への反省の意は表明しなかった[iii]

 一方、12月19日に開かれた対馬市議会で、初村久蔵議長は「世間をお騒がせしていることに対し、深くお詫びする」と謝罪した。また「審査会の判断を議長として深く受け止めている。議員全員が一丸となって市議会の信頼回復に全力を尽くすべく決意を新たにした」と発言した。事実上、条例違反の指摘を受けた市議会議員全員が審査会の結果を受け入れた形だ。これによりNUMOのみが審査会の判断を受け入れず、反省も謝罪もしていないことになった。

 報道によれば、審査請求した市民団体の代表は、贈収賄容疑で調査賛成の市議とNUMO関係者を長崎地検に告発する予定だという[iv]。また住民の証言によれば、対馬市長による受け入れ拒否表明後もなお、調査賛成の市議と定期的に会食をしているという。仮に文献調査が拒否された要因分析なのであれば、賛成反対の双方から意見を聴く必要がある。しかしNUMOのやっていることはそうではない。まさにNUMOが地域の分断を煽り続けている格好だ。

 NUMOは、経営理念の基本方針として「地域との共生を大切にします」「社会から信頼される組織を目指します」と表明している。しかし、条例を守るつもりもない組織と、どの地域社会が共生したいと思うだろうか。調査受け入れ拒否後も、調査賛成の市議と水面下でやり取りを続けるような組織を、どの地域社会が信頼するだろうか。NUMOに「地域との共生」を語る資格はない。NUMOは審査会の報告書内容を謙虚に受け止め、率直に反省すべきだ。その証として、今後はNUMOの費用負担による地方議会議員を対象とした視察旅行を中止すべきだ。

以上

[i] www.city.tsushima.nagasaki.jp/gyousei/soshiki/soumu/somuka/notice/5519.html

[ii] www.numo.or.jp/topics/202323120518.html

[iii] www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/radioactive_waste/002.html

[iv] www.nagasaki-np.co.jp/kijis/?kijiid=1110036221729046832

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