【地層処分技術WG への提言】「声明」の呼びかけ人を参考人として技術WGの議論に参加させよ

2024/3/4 ウェビナー「地層処分技術WGへの提言 -より公正で科学的な議論のために-」を開催・録画を公開しました。


地層処分技術WG への提言
「声明」の呼びかけ人を参考人として技術WGの議論に参加させよ

2024年2月22日

小野有五(北海道大学名誉教授)
岡村聡(北海道教育大学名誉教授)
原子力資料情報室

2月13日、文献調査報告書(案)(以下、報告書案)が公表された[i]。地層処分技術WG(以下、技術WG)がこれを審議する際には、資源エネルギー庁が作成した文献調査段階の評価の考え方(以下、評価の考え方[ii])が適切に反映されているかだけでなく、評価の考え方(案)へのパブリック・コメント、および2023年10月30日に約300名の地学専門家が発表した「声明 世界最大級の変動帯の日本に、地層処分の適地はない」[iii]に照らして、市民や研究者の指摘や疑問に答えているかどうかが検討されるべきである。しかし、第1回技術WG(2月13日)では、53件ものパブリック・コメントに対する回答は、わずかな文言の修正だけですまされ、多くの問題点の指摘に対し、なんら科学的な検討も、反論も行われなかった(資料12参照)。「声明」は、激しい変動帯の日本列島において、今後10万年間にわたり、地殻変動による岩盤の脆弱性や深部地下水の状況を予測し、地震の影響を受けない安定した場所を選定することは、現在の科学的知見では不可能と述べている。これらの指摘に対し、今後、技術WGで客観的・科学的な検討と審議が行わるよう、提言を行いたい。

報告書案の審議にあたっては、とりわけ最新の知見をもとに検討することが技術WGに求められている。しかし、報告書案は、本年1月1日に起こった能登半島地震については全く触れていない。特に能登半島沖の海底活断層と断層活動の連動、地下深部流体と地震・断層運動との密接な関連などについて、全く検討されていない。能登半島地震を起こした海底活断層は、従来の音波探査では特定できず、変動地形学的手法でのみ認定されることも明らかになった[iv]。報告書案においても、音波探査に偏ったデータをもとに神恵内の沖合に存在する積丹半島沖の活断層の存在は否定され、変動地形学的研究から主張された活断層の見解は無視されている。能登半島地震によって得られつつある最新の知見に基づき、沿岸域の活断層について、抜本的に再検討しなければならない(資料3参照)。

活断層の連動は、能登半島地震でも、北海道南西沖地震でも、また熊本地震でも実際に起きている。黒松内低地断層帯の活動性を評価するためには、当然、活断層の連動を考慮するべきである。しかし、報告書案では、黒松内低地帯の活断層について、「白炭断層」だけが個別断層として取り上げられているにすぎない。政府の地震調査研究推進本部が2005年に公表した黒松内低地断層帯の長期評価では、寿都町周辺の活断層として五十嵐川断層や丸山付近の断層が、断層運動による地形変形を示すと記述されている。それにもかかわらず、報告書案では、これらは地質調査・地球物理学的調査の情報がないとの理由で無視されている。このような判断は、「地震本部」の長期評価を無視し、活断層の連動性の視点が抜け落ちた、根本的欠陥と言わざるを得ない(資料4参照)。類似の活断層の過小評価の事例は、尻別川断層の評価などにも散見される。

能登半島地震のもう一つの最新知見は、群発地震を引き起こす深部流体の存在である。それが群発地震の発生に関与し、ついには大地震につながったことが分かってきた。深部流体を起源とする低周波地震は、寿都湾内陸部でも観測されている。しかし報告書案では、避けるべき事象とは認めていない。概要調査以降の調査には留意が必要とされたが、あくまでも部分溶融域の存在の可能性、つまり新たな火山が生じる可能性に関しての指摘にすぎない。寿都では地下30kmの低周波地震とともに10kmの浅部地震の観測データもあり、能登半島の群発地震との類似性を考慮する必要がある。これらの地震発生域は、黒松内低地断層帯の北部と重なり、能登半島において珠洲市周辺で生じた群発地震と能登半島の北部沿岸域の長大な活断層との類似性を想起させる(資料5参照)。しかし報告書案は、そのような検討を行っていない。これは評価の考え方の基準の信憑性にも関わる問題である。このような観測データが認められる地域は、地層処分候補地として最初から避けるべきである。

岩盤については、以前から、寿都、神恵内とも、きわめて脆い「水冷破砕岩(ハイアロクラスタイト)」からなるので、地層処分には適さないことが専門家から指摘されてきた。しかし、報告書案では、単に留意事項にとどめているにすぎない。一方、この留意事項では、本岩盤の特性として、地下深部(300m以深)の情報が得られていないとしつつ、新第三紀堆積岩に匹敵する強度であり、不均質な力学特性を示すことが示されている(資料6参照)。このことは仮に概要調査でボーリング調査などをしても、不均質な岩盤の空間的な広がりは把握できず、結果として最終処分地としての適否の判断が最後まで困難であることを示している。このような不均質で脆弱な岩盤は候補地から除くべきである。

火山活動について、第四紀火山であることが明らかでないケース(熊追山、磯谷溶岩など)では、年代測定を中心に概要調査を実施することが報告書案に示されている。しかし、これらは新第三紀層の上位に重なることから第四紀火山とされる文献も存在しており、概要調査に進むまでもなく、避けるべきである(資料7参照)。さらに、第四紀火山の活動中心から半径15kmを避けるべきという規定に関しては、ニセコ-雷電火山群のうち、雷電火山を中心とした半径15kmを避ける範囲とすべきである。なぜなら雷電火山については、留意事項において、すでに詳細に調査済みであることから、山頂を活動中心に半径15kmが設定される可能性もあると指摘しているからである。

文献調査とは、すでに公刊されている文献に基づき、地層処分には不適当な事象がどれくらい地域に存在・分布するかを明らかにし、それらが多いことが判明すれば、それ以上の調査には進まないという「ふるいわけ(スクリーニング)」を行うのが本来の目的であろう。寿都、神恵内の両地域は、多くの不適当な事象があることが文献調査から明らかになったのであり、両地域とも地層処分には不適であると結論するのが科学的なやり方である。

しかし、NUMOは、概要調査をしなければ、不適かどうかは判断できないとして、先に進めようとしている。地下深部の地学的・工学的事象は、地上からの探査では、不確かさをゼロにはできない。NUMOの論法からすれば、結局は現地を掘ってみないかぎり、適・不適はわからないから、ほとんどの場所は概要調査、精密調査をしなければ、適・不適の判断はできないということになる。これではそもそも文献調査をする意味がなくなる。

「科学的特性マップ」では、今回の地震で大きな被害を受けた能登半島の海岸部でさえ、地層処分の適地とされている。そうした科学的な誤りをただすための再検討の場が、文献調査であるべきであろう。地層処分には不適であることを示す多くの科学的論文があるにもかかわらず、それらを無視し、NUMOの判断だけで、地層処分に適していると結論づけるのは、科学への冒涜であり、技術WGの科学者が、それを容認するようなことがあってはならない。

そもそも報告書案は、地層処分の適性・不適性を判断した基準が、原発に関する原子力規制委員会の規制基準とどのような関係にあるのかを、一切明らかにしていない。例えば参考資料3でも触れたように、原子力規制委員会の規制基準は、海底活断層の認定には、変動地形学的手法を音波探査とは独立に採用すべきであると明記しているにもかかわらず、報告書案はそれを無視している。耐用年数原則40年の原発と比べ、10万年間の保管施設建設である高レベル廃棄物の地層処分において、安全基準はどのように考えるべきかという根本的な定義がなされていないのである。技術WGは、それをNUMOに問うべきである。

今後、技術WGでは、約300名の地学専門家の「声明」が、本格的に審議されることになる。公正で透明性のある審議のためには、「声明」の呼びかけ人の中から複数の推薦人を募り、参考人として、技術WGの議論に参加させるべきである。経済産業省および技術WG委員長にそれを実行するよう要請する。

(提言のPDFダウンロードはこちら、参考資料1~7が統合された資料のダウンロードはこちら、提言を8つに要約した資料のダウンロードはこちら

[i] 寿都町の文献調査報告書(案)www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/radioactive_waste/geological_disposal/pdf/001_s05_00.pdf

神恵内村の文献調査報告書(案)

www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/radioactive_waste/geological_disposal/pdf/001_s07_00.pdf

[ii] www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/radioactive_waste/pdf/20231102.pdf

[iii] cnic.jp/wp/wp-content/uploads/2023/11/902f6cbc42a46268054c87533439491b.pdf

[iv] 日本活断層学会の鈴木康弘会長が、能登半島地震後に、同様の問題提起をしている。

jsaf.info/jishin/items/docs/20240110081056.pdf

[v] 技術WGの資料「議事の運営及び役割分担について」では「委員長が必要と認めるときは、委員以外の者の出席を求めることができる。」と規定されている。

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