原子力小委員会参加(13) 原子力政策の確実性とは?

『原子力資料情報室通信』第607号(2025/1/1)より

 11月20日、43回原子力小委員会が開催された。テーマは「これまでの議論の整理」で、2月から開催されてきたを第7次エネルギー基本計画に向けた小委での議論の取りまとめ回となった。ただし、整理資料は過去の委員の発言を単に要約したもので、意見の多寡で方向性を示すものとなっている。
 論点は多岐にわたるが、発言時間は3分に制限されているため、私はこの間、発言してきた内容を含めて、12ページの意見書を提出した。
 意見書の内容をすべて説明する時間はないので、私は総論として以下の5点を発言した。

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【1】これまでエネルギー基本計画に記載されてきた「可能な限り(原発)依存度を低減する」との文言は今回も維持するべき。国民の多数が将来脱原発を求めているという状況にも適合している。

【2】判断材料がほとんど示されないなかで、事業者の言い分のみで原発新設が必要とすることは、どのような状態でも原発を新設するということと同義であり、認められない。最低でも原発のライフサイクル全体の経済性評価を行うべきである。

【3】六ヶ所再処理工場の操業期間延長に反対する。六ヶ所再処理工場は建設を始めた1993年時点では1997年には再処理を開始する計画だった。それから30年以上、竣工延期を繰り返してきた。数年先の想定すら27回誤ってきた事業者が40年以上先の予測が可能と主張しても、延長の根拠にならない。建設開始から30年以上が経過する中で、操業前の現時点でも施設の経年劣化が始まっている。改めて核燃料サイクルの根本的再評価を行うべきである。

【4】青森県と日本原燃らが海外返還ガラス固化体を六ヶ所で受け入れる際に締結した協定書では、ガラス固化体は受け入れ開始から50年後までに搬出することとされた。1995年受け入れ開始のため、2045年が最初の期限となる。一方、地層処分場選定プロセスは20年程度を要するが、これには処分場の建設期間は含まれていない。現時点で、期限が来ることは明らか。この議論をしないままに、原子力積極活用へと進むことは認められない。

【5】福島第一原発の廃止措置では現状費用手当が行われているのはデブリ取り出しまでであり、その後の放射性廃棄物処分や費用は何ら考慮されていない。2051年廃止措置完了を掲げるのであれば、処分や費用の手当について検討する必要があり、それがない中で、原子力積極活用へと進むことは無責任のそしりを免れない。

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 他の委員からは、例えば朝野委員(電力中央研究所)は2000万~3000万kWを維持するために新設すると記載すべき、増井委員(原子力産業協会、東電出身)は原子力の設備容量減少を補うために、福島第一原発事故前の原発建設計画の再始動も必要として国の支援を求めるといった発言があった。
 事務局からは私の意見書への回答として、「確実性の部分を前提にした上で、そこにどういう柔軟性なり戦略性を加えていくかという発想に立たざるを得ない」という噴飯物の発言があった。2011年からの原子力政策に確実性など一体どこにあったのか。むしろ巨額の費用を浪費しエネルギー政策の足を引っ張るものが原子力だった。他にも反論したいところは多々あったが、事務局が長々と私の意見書についてコメントした結果、発言する余裕はなかった。
 取りまとめ資料は基本政策分科会に報告される。年末にはエネルギー基本計画の素案が出るだろう。パブリックコメントには多くの市民の意見提出を求めたい。

(松久保 肇)

43回原子力小委員会資料:www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/genshiryoku/043.html

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