第7次エネルギー基本計画案に対する提出意見
2025年1月24日
NPO法人原子力資料情報室
NPO法人原子力資料情報室は1月26日まで募集中の第7次エネルギー基本計画案に関するパブリックコメントに以下の意見を提出しました。
該当ページ | 該当行数 | 該当項目/文章 | 意見 | 理由 |
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全体 | 全体 | エネルギー基本計画はすべて文章で表現されているが、数値的根拠にかけ、政策の検証可能性に乏しい。また、政策の主眼が見えず総花的な記述となっている。この記述をすべて実践することは不可能である。また、例えば「わが国土はすぐに使える資源に乏しく、国土を山と深い海に囲まれるなどの地理的制約を抱えており」という表現が頻出するが、他国との比較がなく、単なる印象論に過ぎない。抜本的に改めるべきだ。最低でも、今回参考資料として示された資料はエネルギー基本計画本文に示すべきである | ||
1ページの冒頭、11ページ、14ページ、16ページ | わが国土はすぐに使える資源に乏しく、国土を山と深い海に囲まれるなどの地理的制約を抱えており | 日本の国土は4枚のプレートがひしめき合っている、世界的にも稀な変動帯の真っ只中にあり、地震、津波、火山噴火、地殻変動が恒常的な国土であることをはっきりと認識しなければならない。プレートテクトニクスが教えるところである。それを、「わが国土はすぐに使える資源に乏しく、国土を山と深い海に囲まれるなどの地理的制約を抱えており」という認識は、基本的に間違っている。スタートラインでの発想に誤りがある。 | ||
9 | 14 | 中間貯蔵施設への除去土壌等の輸送等を着実に実施していくとともに、福島県内の除去土壌等の県外最終処分に向けて、除去土壌の再生利用の推進及び全国での理解醸成活動を行う等、福島の環境再生に引き続き全力で取り組んでいく。 | 除去土壌は放射性物質なので再生利用するのでなく、集中保管(管理)するべきだ。 | 再生利用によって、再生利用する場合よりも多くの被ばくがもたらされるが、被ばくする人にとっての合理的な理由がない。 |
14 | 5~7 | 我が国のエネルギー政策の要諦は、安全性(Safety)を大前提に、エネルギー安定供給(Energy Security)を第一として、経済効率性の向上(Economic Efficiency)と環境への適合(Environment)を図るという、「S+3Eの原則」にある。 | エネルギー政策の要諦としてS+3Eを示すのであれば、定量化して各エネルギー源を比較衡量すべきである。 | エネルギー政策の要諦としてS+3Eを示しているが、安全性(Safety)、エネルギー安定供給(Energy Security)、経済効率性の向上(Economic Efficiency)、環境への適合(Environment)のうち、定量化されているのは経済効率性のうちコストのみである。そのため、S+3Eは恣意的に操作可能な概念となっている。 |
14ページ、16ページ | エネルギー政策の基本的視点、基本的考え方 | 我が国は世界でも稀な変動帯に位置しており、地殻変動、地震、津波、さらに異常気象による集中豪雨の頻発は、原子力発電所の存在自体を危うくする。「安全性の確保」を実現する方法はない。去年の能登半島地震が教えるところだ。もし珠洲原発が造られていたならば、どれほど悲惨なことになったであろうか。そう考えると、「S+3E」の原則は不可能である。原発からは撤退すべきである。 | ||
24 | 21~23 | 事業期間中の市場環境の変化等に伴う収入・費用の変動に対応できるような制度措置や市場環境を整備する。 | これ以上、国民負担を求める制度は導入するべきではない | 電源投資への制度措置はすでに容量市場メインオークションや長期脱炭素電源オークションなどで導入済みである。これらの制度の検証もないままに新制度が必要とすることは、屋上屋を架すことになりかねない。また、これらの制度が消費者にどのような影響を与えているのかも検証するべきである。制度措置を検討する前に、現状調査、事業者の行動が合理的なのか、また、すでに導入された制度の有効性、もし有効でないなら何が問題なのかの検証が必要である。 |
25 | 1~2 | 政府の信用力を活用した融資等、脱炭素投資に向けたファイナンス円滑化の方策等を検討する | ファイナンス円滑化にあたっては、たとえばGX推進機構などの実施主体は最低限、国際水準の環境社会配慮が求められる。 | |
33~35 | 原子力発電 ①総論 ②今後の課題と対応 例えば「東京電力福島第一原子力発電所事故への真摯な反省は、決して忘れてはならない原子力政策の原点である。原子力の活用にあたっては、安全性の確保が大前提であり、「安全神話」に二度と陥らないとの教訓を肝に銘じなければならない。」など。 | 安全性の確保を前提とするなら原発の運転は不可能だ。対策をすれば事故が起こらないとは言えず「残余のリスク」が必ず残るからである。事故が起こらないと判断することが「安全神話」に陥っていることだ。 | 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会原子力小委員会 原子力の自主的安全性向上に関するワーキンググループによる「原子力の自主的・継続的な安全性向上に向けた提言 (平成26年5月30日)」では、「PRAを含むリスク評価を網羅的に実施しても、なお想像し得ない事態が起こりえること、対策を実施しても残余のリスクが存在していることを忘れてはならない」と記述している。また、現在でも原子力規制委員会には「東京電力福島第一原子力発電所における事故の分析に係る検討会」が設けられ、事故原因の調査を実施している。つまり、原発事故の原因は究明されておらず、現在行われている対策も不十分である可能性が高く、また考えうるすべての対策を実施した場合でも残余のリスクが残る。 | |
33~35 | 原子力発電 ①総論 ②今後の課題と対応 例えば「東京電力福島第一原子力発電所事故への真摯な反省は、決して忘れてはならない原子力政策の原点である。原子力の活用にあたっては、安全性の確保が大前提であり、「安全神話」に二度と陥らないとの教訓を肝に銘じなければならない。」など。 | 「安全神話」に陥った原因を国と電力会社がきちんと説明しない限り、「優れた安定供給性云々」には説得性がない。すでに再び、「安全神話」に陥っているのではないか。第二の福島原発事故に向かって進もうとしているのではないか、と恐れる。新規制基準に適合しても、「安全性を担保したのではない」と規制委員会自身が語っているではないか。 | ||
34 | 1~4 | 原子力は、燃料投入量に対するエネルギー出力が圧倒的に大きく、数年にわたって国内保有燃料だけで発電が維持できる準国産エネルギー源として、優れた安定供給性と技術自給率を有する自律性が高い電源であり、他電源と遜色ないコスト水準で変動も少ない。 | 国内保有燃料で数年発電ができるが、燃料は輸入に頼らざるを得なく燃料供給の難易度やコストは国際情勢の影響を強く受けるため「準国産エネルギー」というのは詭弁である。 さらに、ロシアのウクライナ侵攻に伴う資源をめぐる状況の大きな変化は、ウラン供給を大きく揺るがしている。 ウラン産出においてはロシアのシェアは6%程度に過ぎないが、ウランを燃料に加工するために必要な濃縮工程で約4割、転換工程で約3割を握る。さらに、2023年にニジェールで軍事クーデターがあり、これまでフランスが確保していたニジェールのウラン採掘権を軍事政権は撤回、ロシアに譲渡する方針を打ち出している。世界の供給の4割を占めるカザフスタンはロシアが主導する集団安全保障条約機構(CSTO)の加盟国で、ロシアとの距離が近い。西側にとってウクライナ侵攻後、ウラン燃料供給の半分が突然不安定化したことになる。結果、ウラン価格、ウラン濃縮価格、ウラン転換価格はいずれも大きく上昇した。 そうでなくとも、現在採掘されているウランは枯渇性資源であり、特に安価に採掘できるウラン資源は急速に減少している。ウラン燃料が値下がりする要因は少ない。それにもかかわらず価格が比較的安定していた2008年から2010年度調達実績を用いて推定することは将来見通しを誤る。 | |
34 | 1~4 | 原子力は、燃料投入量に対するエネルギー出力が圧倒的に大きく、数年にわたって国内保有燃料だけで発電が維持できる準国産エネルギー源として、優れた安定供給性と技術自給率を有する自律性が高い電源であり、他電源と遜色ないコスト水準で変動も少ない。 | 原子力の「技術自給率」については、福島原発事故以降、現場経験のない技術者・技能者が増加しており、緊急時の安全確保の対応の信頼性が年々低下していると指摘されている点からも、安定供給性や信頼性のある電源とは言えない。 | 原子力分野の人材の現状については、実務経験の場が減少、従事者の高齢化、原子力特有機器の製造や調達、不具合への対応等の経験を通じて知見を得る機会の減少、2025年にはプラント建設経験者の多くが退職、原子力関連の従業員の約6割が40歳以上であるとともに、20代の数が少ないことが報告されており、安全運転への信頼性が低下している。(出典)「今後の原子力分野の人材の確保及び育成に向けた 基盤的調査 報告書 」2021 年3月31日 エム・アール・アイリサーチアソシエイツ 技術・安全事業部 |
34 | 5~8 | 国民からの信頼確保に努め、安全性の確保を大前提に、必要な規模を持続的に活用していく。 | 過去のエネルギー基本計画に記載のあった「可能な限り原発依存度を低減する」との記述を復活させるべきである。 | 1月16日、環境NGOの連合体「ワタシのミライ」主催の集会「緊急開催! こんな結論でいいの?気候危機と日本の責任」において、当該記述について、経産省担当者は原子力依存度が「震災前から下がる一方で必要な原発は活用していくという方針に変わりはない」と述べている。一方で、削除する理由として、原子力産業への学生の参入の妨げ、原子力産業を構成する企業の撤退を促しかねないこと、また立地自治体からの削除が要請されたと述べている。原子力を含むエネルギーのステークホルダーは原子力産業や原発立地自治体に限定されるものではなく、国民全体がステークホルダーである。 原子力文化財団が毎年実施している「原子力に関する世論調査」では、原発を増加または維持すべきという回答が19.1%、原発を徐々に廃止または即時廃止すべきという回答が46.7%と圧倒的に脱原発を求める声が大きい。よって、原発依存度を低減させていくという記述は国民世論に沿うものであり、維持するべきである。 |
34 | 8 | DXやGXの進展等により増加が見込まれる電力需要、特に製造業のGX、定格稼働するデータセンターや半導体工場等の新たな需要のニーズに、原子力という電源の持つ特性は合致することも踏まえ、国民からの信頼確保に努め、安全性の確保を大前提に、必要な規模を持続的に活用していく。 | 定格稼働するデータセンターや半導体工場等と、一定出力で発電する原子力の特性が合致するというのは、全体の特徴の一部が似ているのみであり、原子力発電が必要という根拠にはならない。 | 近年、新規建設されている大規模データセンターは、再生可能エネルギーでの運用を目指す(すでに実施されている)ものが多数報告されている。 例を挙げると、・ジャパン・リニューアブル・エナジー株式会社・NTTデータグループの三鷹データセンターEAST・京セラコミュニケーションシステムが北海道や石狩市と連携して2019年4月に始めた「ゼロエミッション・データセンター」のプロジェクトなど。 このようなデータセンターの電力消費に合致させるためには、変動する再エネの出力を補う出力可変な電源や調整力が必要であり、定格出力の原子力は適さない。 |
35 | 3~11 | 原子力防災体制の構築・充実については、自然災害との複合災害も引き続き想定しつつ、道路整備等による避難経路の確保等を含め、政府全体が一体的に取り組み、これを推進する。災害対策基本法及び原子力災害対策特別措置法の規定により、防災基本計画及び原子力災害対策指針等に基づき策定される地域防災計画・避難計画について、「地域原子力防災協議会」の枠組みの下、国と関係地方公共団体等が一体となって、地域ごとに解決すべき課題を検討し、その計画の具体化・充実化を進める。これらの地域防災計画・避難計画を含む地域の「緊急時対応」については、原子力災害対策指針等に照らし、具体的かつ合理的であることを同協議会において確認し、内閣総理大臣を議長とする「原子力防災会議」で了承していく。 | 地震などの自然災害と原発事故が同時に起きた際の避難や放射線防護が、地域防災計画通りにいかないことは、能登半島地震の際にあらためて確認された。避難道路は使えず、家屋は損壊し屋内退避に適さない状態になった。大雪の際に避難できるのかなど、立地地域それぞれの課題があり、解決していない。 原子力発電の受益者と受苦者は地理的に離れており、事故の被害の不公平さを考えれば、実現可能性の高い避難計画がない限り、原発の稼働はしてはならない。 | 志賀原発周辺では、重大事故時の避難ルートとして、国道、県道あわせて11路線を指定しているが、能登半島地震において7路線が通行止めとなった。港湾施設も多くが損壊し、海路を使った避難も困難な状況だった。道路の寸断により多くの孤立集落が発生したほか、孤立していない地域においても上下水道や電気等のライフラインの被害により日常生活を送ることが困難となり、避難も屋内退避も不可能な状況であった。 |
36 | 1~4 | 東京電力福島第一原子力発電所事故から13年が経過した今もなお、国民の原子力や行政・事業者に対する不信・不安は払拭できておらず、この状況を真摯に受け止め、その反省に立って信頼関係を構築するためにも、原子力に関する正確で客観的な情報提供や、丁寧な広聴・広報を進める必要がある。 | 正確な情報が届かないので国民が原子力に理解がない、というモデルは間違っており、一方的な情報発信に注力するのでなく、国民の意見を真摯に受け止める場を積極的につくるべきだ。マスメディアの広告などで原子力の活用を訴えている一方、国民の意見を広く集めるためのこのパブコメにかんする広報はみられない。限られた予算を後者にも活用にし、広く国民の声に耳を傾けてほしい。 | 原子力への情報量と原子力への態度の調査分析によれば、情報量がある程度まで増えると、「わからない」が増え、「徐々に廃止」が増加した。(2023年度 原子力に関する世論調査調査結果(日本原子力文化財団)による) |
36 | 25~ | 核燃料サイクルの推進 | 核燃料サイクルの推進は見直すべきだ。 | 利用目的のないプルトニウムは持たないという原則のもと、保有量を適切に管理し削減に取り組むならば、現時点で大量のプルトニウムを保有している状態で、再処理政策を進めるべきでない。また着工から27回も竣工を延期してきて、30余年過ぎた。それでもなお、竣工の目処がつかない。異常事態だという認識が政府にも当事者たちにもみられない。政策に誤りがあった以外に考えられないことである。 |
36 | 31 | 核燃料サイクルの中核となる六ヶ所再処理工場とMOX燃料工場の竣工は、必ず成し遂げるべき重要課題 | 状況に応じた政策の柔軟な見直しを妨げるので削除するべきだ。 | 六ヶ所再処理工場の稼働は遅れに遅れつづけており実現可能性のあるものだとはいえない上、放射能汚染された設備のメンテナンスの構造上の困難さ、事業者の信頼性の低さから、稼働後においても信頼性の高い運用の期待ができない。政府が頑なに政策変更しないために、限られた資本が核燃サイクル政策につぎ込まれ、成果を出さないまま数十年が経過し続けている。 |
36 | 37~40 | 使用済MOX燃料の再処理については、国際連携による実証研究を含め、2030年代後半を目途に技術を確立するべく研究開発を進めるとともに、その成果を六ヶ所再処理工場に適用する場合を想定し、許認可の取得や実運用の検討に必要なデータの充実化を進める。 | 使用済MOX燃料は再処理せずに直接処分するべき。 | 使用済MOX燃料を再処理したとしても回収できるプルトニウムは高次化が進んでおり、経済性は低下する。動力炉・核燃料開発事業団のレポートによればプルサーマルでのプルトニウムリサイクル回数は「1~2回に制限される」とあるように、技術的にもリサイクル回数は制限される。 参考:「プルトニウム多重リサイクルによる同意体組成変化の解析」https://jopss.jaea.go.jp/pdfdata/PNC-TN9410-97-100.pdf |
37 | 20~22 | 中間貯蔵施設等に貯蔵された使用済燃料は六ヶ所再処理工場へ搬出するという方針のもと、そのために必要となる同工場の安全性を確保した安定的な長期利用を進める。 | 六ヶ所再処理工場の長期利用は削除するべき | 2024年10月16日の第41回原子力小委員会の資料3で事務局は「六ヶ所再処理工場については、運転期間に関する法令上の上限は無い。また、同工場において、例えば、40年で維持や取替が困難となり、プラント全体の廃止が必要となる設備は想定されていない。」と報告している。だが、六ヶ所再処理工場は従来40年稼働を前提として国民に説明し費用を回収してきた。一方、六ヶ所再処理工場は1993年に着工したが、32年経過した今日もなお建設中である。仮に日本原燃の主張通り2026年度中に竣工できたとしても、すでに施設が経年劣化していることも報告されている。また、アクティブ試験を実施した結果、線量率が高く、耐震補強工事が必要だが、アクセス困難な区画が存在するとも報告されている。 エネルギー政策はS、すなわち安全性が大前提とされている。六ヶ所再処理工場は大量の放射性物質を取り扱う、特に慎重な運用が求められる施設である。竣工前から経年劣化が進むうえ、補強工事すらままならない施設で中間貯蔵期間である50年後の安全性が担保されているとは到底考えられない。 |
38 | 8~10 | 2024年に地質関係専門家による評価を行い、最新の科学的知見を踏まえてなお、我が国において地層処分が技術的に実現可能であることを改めて確認してきたところである。 | 日本で地層処分が技術的に実現可能であることは改めて確認されていない。 | 2023年10月には地学研究者300人余りが日本で地層処分は現時点では不可能という声明を出した。その呼びかけ人が2024年に地層処分技術ワーキンググループに参考人として参加し議論したが、政府やNUMOの反論に時間を費やし、各委員の発言は2分程度だった。個別具体的な問題が十分議論されたとは言えない。まだ専門家の間で、安全性への見解が分かれているといえる。 したがって「地層処分が技術的に実現可能であることを改めて確認してきた」という表現はおかしい。政府の審議会に地層処分に批判的な専門家をもっとたくさん委員に加え、開かれた議論をすべきだ。 |
38 | 12~15 | 最終処分事業の実現が社会全体の利益であるとの認識に基づき、その実現に貢献する地域に対し、敬意や感謝の念を持つとともに、社会として適切に利益を還元していく必要があるとの認識が、広く国民に共有されることが重要である。 | 最終処分事業の実現が社会全体の利益であるとの認識は誤っている。 | 原発推進と一体化した最終処分事業が社会全体の利益であるという合意は国民の間にない。処分事業の前提となる核燃料サイクルは、青森県六ケ所村の再処理工場も動いていないなどすでに破綻している。破綻した政策を前提とした最終処分事業が社会全体の利益になるはずがない。2012年の日本学術会議の報告書が指摘するように、既存の政策枠組みの白紙撤回と再検討をすべきだ。 |
38 | 12~15 | 最終処分事業の実現が社会全体の利益であるとの認識に基づき、その実現に貢献する地域に対し、敬意や感謝の念を持つとともに、社会として適切に利益を還元していく必要があるとの認識が、広く国民に共有されることが重要である。 | 社会として適切に利益を還元していく必要があるというが、その手段は交付金の交付であり、再検討をすべきだ。 | 社会として適切に利益を還元するという名目で政府は交付金を与えているが、金銭的便益を提供することで調査を誘導するのは健全でないし、地域分断の要因にもなる。実際に北海道寿都町では片岡町長の応募の理由の1つは交付金の獲得だったが、それにより地域分断が生じた。最終処分を誘致する考えがないのに調査で得られる交付金ほしさに調査に応募した首長がいたし、これからも現れる可能性がある。これでは税金の無駄遣いだ。交付金の交付は廃止の方向で再検討すべきだ。 |
38 | 16~19 | 北海道寿都町と神恵内村では、2020年の調査開始以降、原子力発電環境整備機構(NUMO)による調査と並行し、住民の方々が参加する「対話の場」を設置し、最終処分に関する議論を深め、地域の将来像等についても御議論いただいてきた。 | 寿都町の対話の場は不公正に運営された事実が抜けており、したがって最終処分に関する議論が深まったという表現も誤りだ。 | 寿都町の対話の場メンバーは調査推進派の住民が大部分で偏りがあった。地層処分に批判的な専門家の意見も聞きたいとの要望があったにもかかわらず、それを無視し続け、バランスのとれた情報提供はされなかった。対話の場はNUMOの一方的な事業説明に終わり、最終処分 に関する議論を深めたとは言い難い。 |
38 | 16~20 | 北海道寿都町と神恵内村では、2020年の調査開始以降、原子力発電環境整備機構(NUMO)による調査と並行し、住民の方々が参加する「対話の場」を設置し、最終処分に関する議論を深め、地域の将来像等についても御議論いただいてきた。 | 「地域の将来像等についても御議論いただいてきた」という文言は実態を表していない。対話の場で地域の将来像を議論すべきかについては再検討を要する。 | 地域の将来像に関する議論について、寿都の町民から「交付金を前提にした金のかかる事業ばかり出る。住民参加や地域社会全体の利益という視点がない」という意見も聞いた。「町を分断した当事者であるNUMOが町づくりの議論にかかわるのは許せない」という住民の痛切な思いも聞いたことがある。そもそも最終処分場が建設されるのかわからず、文献調査受け入れは最終処分地選定に直結するものではないと政府は説明しているにもかかわらず、なぜ事業者のNUMOが調査段階から町づくりの議論に参加する必要があるのか大いに疑問だ。文献調査と町づくりは切り離して考えるべきだ。 |
38 | 22~25 | 2024年6月には、佐賀県玄海町においても文献調査を開始している。引き続き、「対話の場」等のあらゆる機会を通じ、周辺市町村等も含めた理解活動を推進し、地域との共生の重要性を踏まえ、調査地域において、将来のまちづくりに資する情報の収集分析や、適切な支援制度の活用促進等に取り組む。 | 玄海町で対話の場を運営するのなら、監督やチェックを行う第三者機関の設置が必須だ。「周辺市町村等も含めた理解活動を推進」という表現は対話の場の理念にそぐわない。 | 寿都町の対話の場が不公正な運営を続けていたにもかかわらず、なかなか改善されなかった教訓を踏まえれば、対話の場の監督やチェックを行う第三者機関の設置は必須だ。「周辺市町村等も含めた理解活動を推進」というが、対話の場は経産省やNUMOの考えを理解してもらう活動ではない。地層処分に対する賛成/反対のバランスがとれた情報提供により、地域住民が主体的な合意形成を行うのが対話の場の目的のはずだ。対話の場の理念をはき違えている。また周辺自治体が文献調査への懸念を表明していることを考慮し、佐賀県民であれば対話の場の傍聴をできるようにすべきだ。 |
38 | 22~26 | 2024年6月には、佐賀県玄海町においても文献調査を開始している。引き続き、「対話の場」等のあらゆる機会を通じ、周辺市町村等も含めた理解活動を推進し、地域との共生の重要性を踏まえ、調査地域において、将来のまちづくりに資する情報の収集分析や、適切な支援制度の活用促進等に取り組む。 | 「将来のまちづくりに資する情報の収集分析や、適切な支援制度の活用促進」には疑問がある。文献調査と町づくりは切り離して考えるべきだ。 | 文献調査受け入れは最終処分地選定に直結するものではないと政府が説明するならば、なぜ将来のまちづくりに関する取り組みをいろいろ実施しなければならないのか意味が分からない。文献調査と町づくりは切り離して考えるべきだ。そもそも玄海町でどのように対話の場を進めていくかについて政府の審議会でまだ議論されていない。そんな中、エネルギー基本計画でこのような方針を決めてしまうのはおかしい。 |
38 | 26~29 | 全国のできるだけ多くの地域が地層処分事業に関心を持ち、文献調査を受入れていただけるよう、理解活動を積極的に行う。具体的には、対話型全国説明会の開催とともに、全国の地方公共団体を個別訪問する全国行脚の実施等を通じ、国主導の働きかけを強化する。 | 現在のようなやり方ならば、理解活動は積極的に行うべきではない。したがって対話型全国説明会も全国の地方公共団体を個別訪問する全国行脚の実施も中止すべきだ。 | NUMOが行う理解活動は、自分たちが一度決定した事項を国民に理解させるだけの取り組みだ。異論を受け付けず、政策変更を含めた議論をせず、一方的に決定事項を国民に受け入れさせるやり方は、安全神話と言われた原発事故前の原子力推進活動と発想が同じだ。必要なのは政策の変更の可能性を含めた議論だ。対話型全国説明会で核燃料サイクルの破綻や地層処分に対する批判的な意見が出ても、原発推進の経産省はそれを反映することはしない。それではやる意味がない。経産省ではなく原発の利害関係のない第三者機関が議論を主導しなければ、国民の間に健全な社会的議論が広がらない。2012年の日本学術会議の報告書が指摘するように、多段階の合意形成を目指すべきで、そのためには市民の参加と熟議を促進する第三者機関の設置が不可欠だ。また全国の地方公共団体を個別訪問する全国行脚は訪問した自治体名を公表すべきだ。非公表は秘密主義的で住民の不信をまねく。公表できないのなら実施すべきではない。 |
38 | 29~30 | 文献調査や概要調査の実施そのものが地層処分事業の議論を深める契機となる | そんなことはない。むしろ地域社会の分断を生み出す契機となっている | 経産省なNUMOが水面下で地域の一部の有力者と交渉するような秘密主義的な意思決定や交付金を与えて、経済的に豊かでない自治体を金で釣るような調査開始プロセスそのものが地域社会の分断を生み出す契機となっている。政府は文献調査実施地域の拡大を目論んでいるが、今の選定のやり方では地域の分断が進むだけだ。調査プロセス そのものを一旦停止する必要がある。 2012年の日本学術会議の報告書が指摘するように、処分を前提とせず高レベル放射性廃棄物を暫定保管し、総量を規制すべきだ。 |
38 | 34~37 | 処分の技術的信頼性の更なる向上に向け、引き続き、国、NUMO、JAEA等の関係機関が、全体を俯瞰して技術開発を着実に進め、最新知見を定期的に反映するとともに、その専門的な評価が国民に十分に共有されることが重要である。この際、幌延の深地層研究施設等における研究成果を十分に活用していく。 | 処分実施主体であるNUMOを幌延国際共同プロジェクトに参加させていることは、2000年に締結された「幌延町における深地層の研究に関する協定書」違反である。NUMOの参加を直ちに中止すべきだ。また幌延深地層研究計画の研究期間が2020年度に9年間延長されたが、約束の順守及び地域住民への配慮から、研究機関の再度の延長は行わないことを明確にし、研究の終了時期と施設埋め戻しの工程表を提示すべきだ。 | |
39 | (エ)既設炉の最大活用 | 原発の寿命の60年延長に反対する。最も正しい選択は原発からの撤退だが、仮に使うとしても、一度決めた40年寿命にもどすべきである。原子炉圧力容器の中性子照射脆化を予測する手法に誤りがあったからである。 | ||
40 | 3 | 2040年より前に既設炉のうち300万kW以上が運転期間60年に到達し、その後に既設炉の脱炭素電源としての供給力を大幅に喪失していくことを踏まえつつ、 | 原子力発電の設備容量が喪失すると書いてあるが、他律的な要素により停止していた期間に限り、60年の運転期間のカウントから除外する制度が設けられたため、この記述は間違っている。 | |
40 | 8~9 | 脱炭素電源としての原子力を活用していくため、原子力の安全性向上を目指し、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・設置に取り組む。 | この記述では、原発の新設は必ず実施することになるが、原発も経済行為であることから、経済性のない原発建設はさけるべきだ。コスト検証WGでは原発の建設費が安全対策費込みで7200億円とされているが、英国で原発の建設費が4兆円超、米国で2兆円超、中国で1兆円超となっており、大幅な開きがある。諸外国の原発建設費は実際の建設費用もしくは実際の建設計画での見積だが、コスト検証WGの試算は実際に見積もったものではなく、過去の実績値に安全対策費を上乗せしたものに過ぎず、あてになるものではない。 | |
40~41 | また、我が国の原子力産業・人材基盤は、高い国産化率と技術を誇り、国内経済や雇用に対する貢献度も高く、既設炉の再稼働や革新軽水炉・小型軽水炉等の次世代革新炉の開発・設置に向けても不可欠である。震災以降の新規建設案件喪失で、この基盤が脅かされつつある中、将来的な建設期間長期化・コスト増加や、機器・部素材・燃料加工・廃炉を含めた産業基盤・技術の途絶、規制対応の面を含めた原子力人材の不足等を回避する必要がある。 | 原子力事業者の原子力関連支出高は2010年度の2.142兆円から2023年度は2.051兆円へと若干減少しているものの、鉱工業他の原子力関連売上高は1.8043兆円から1.9435兆円と増加、電気事業者と鉱工業他の原子力関連従事者数は46182人から50664人へと大きく増加している。「基盤が脅かされつつある」との記述に反して、原子力産業は福島第一原発事故後、膨張していることになる。一方、原発基数は事故前から大幅に減少した。2040年の電源構成比での原子力比率も20%程度を目途としており、事故前の規模には及ばない。すなわち原子力を持続的に活用するにしても、原子力産業の規模はむしろ縮小させる必要がある。 | 参考:「原子力発電に係る産業動向調査」https://www.jaif.or.jp/publication/nuclear-industry-trends-report/ | |
42 | 33 | 「LNG火力は、石炭・石油火力と比べて温室効果ガスの排出量が少なく」 | LNG火力の温室効果ガス排出量については、少なくとも米国産天然ガスは採掘・輸送などにおけるメタン排出量が極めて大きく、石炭火力よりも温室効果ガス排出量が大きくなるという研究論文が発表されている。 | 文献によれば、燃料源としてのLNGのCO2換算排出量は160 g-CO2eq/MJと、石炭の120 g-CO2eq/MJよりも多くなっている。 参考:Howarth RW. The greenhouse gas footprint of liquefied natural gas (LNG) exported from the United States. Energy Sci Eng. 2024; 12: 4843-4859. doi:10.1002/ese3.1934 |