原発での仕事で「多発性骨髄腫」東電を賠償提訴

原発での仕事で「多発性骨髄腫」東電を賠償提訴

週刊金曜日「金曜アンテナ」2004/10/15
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 東京電力福島第1原発などで働き、そのときの被曝が原因で、骨髄のがんである「多発性骨髄腫」を発症した長尾光明さんが10月7日、東京電力に約4400万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。原子力損害賠償法に基づく、治療費や慰謝料を求めるものだ。

 長尾さんは東京電力の孫請けである石川島プラント建設の社員として、1977年から82年まで原発の配管の定検作業などに従事。東京電力福島第1原発や中部電力浜岡原発などで作業した。

 退職6年後から体に変調が起こり、頚椎骨折するなどして98年、多発性骨髄腫と診断され、昨年1月、福島県の富岡労働基準監督署に労災を申請した。長尾さんの被曝総量は70ミリシーベルト、年平均被曝線量も白血病の労災基準の3倍以上。今年1月、白血病以外の病気で初めて労災認定された。

 長尾さんが働いていた当時、福島第1原発は事故・故障が相次ぎ、燃料棒破損によるプルトニウムなどの深刻な汚染が起きていた。これらの汚染実態について、東京電力は明らかにしようとはせず、長尾さんの被曝についてもいっさい責任を認めない。長尾さんは、損害賠償請求を通して東京電力の責任を明らかにすることを決意した。この裁判を支えるため、よこはまシティユニオン、関西労働者安全センター、原子力資料情報室、原水禁が責任団体となり、「東京電力を告発する長尾原発裁判を支援する会」が発足した。みなさんのご協力をお願いしたい。(原子力資料情報室 渡辺美紀子)