【連載】水道水のセシウム濃度調査 第1回 共同研究がスタートしました

『原子力資料情報室通信』第520号(2017/10/1)より

【連載】水道水のセシウム濃度調査 第1回 共同研究がスタートしました

原子力資料情報室は、NPO法人新宿代々木市民測定所1)と協力し、東京の水(水道水と河川水)に含まれる放射性セシウムを低濃度まで調査する共同研究をスタートさせました。今号から毎月報告していきます。よろしくお願いします。
2011年3月の東京電力福島原発事故によって、環境中に大量の放射性物質が放出され、広範囲に広がりました。その当時、東京の水道水が放射性物質で汚染され、話題になったことを記憶している方は多いと思います。水道水を子どもに飲ませないよう指示がされ、ペットボトルの水が配布されました。
それから6年半が過ぎ、水道局が発表している水道水に含まれる放射性物質の濃度は不検出(検出限界は1キログラム(kg)あたり0.5~0.9ベクレル(Bq)程度)が続いています。ですから、水道水への関心は低くなっているのではないでしょうか。
一方、原子力規制庁は全都道府県の上水(蛇口水)に含まれる放射性物質の濃度を非常に低い濃度まで調査し公表しています2)。検出下限値はヨウ素131、セシウム134、セシウム137のすべて0.001 Bq/kg未満です。
公表されているデータのうち、最近の3年分(2013年4月から2016年6月)の結果をまとめました(図)。この3年の間で、47都道府県のうち一度でも放射性セシウムが検出された自治体は、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県です。地図上で色分けすると、福島県を中心として東日本の広い地域の水道水から放射性セシウムが検出されていることがよく分かります。西日本では検出されていないことからも、東京も含め、東日本は広く放射能汚染地域だという厳しい現実を突きつけられるようです。
地図左上の数値は、2016年6月における放射性セシウム137の濃度(単位はmBq/kg)です。国が定めた飲料水に含まれる放射性物質の基準値は10Bq/kgですから、比較すれば遥かに低い値です。しかしよく見ていくと、最も放射性物質で汚染された水道水は東京都(採取地:葛飾区)であることに気付きます。このひとつ前の2016年1~3月の測定データでは、東京都の値は1.7mBq/kg(採取地:新宿区)でした。採取地点の変更により数値が大きく変化したのか、水道水の元となる河川水の汚染が違うのか、調べたくてもデータが不足していて答えにたどり着けません。そこで水中セシウムの濃縮処理と、高精度のゲルマニウム半導体検出器によるガンマ線測定を用いて自分たちで調査することにしました。

(つづく)

図 水道水中のセシウム137濃度
(原子力規制庁の公表データをもとに作成)

1)新宿代々木市民測定所(http://www.sy-sokutei.info/wp/)
市民の意思決定に役立つ、正確な情報(測定値という客観的な事実)を提供することを目的として活動。微量の放射性物質まで高精度に測定できるゲルマニウム半導体検出器を2台設置。食品だけでなく、尿、母乳、大気粉塵の放射能測定をおこなっている。
2)http://radioactivity.nsr.go.jp/ja/list/194/list-1.html

 (谷村暢子)