2004年11月9日保安院交渉・要請書と質問書

2004年11月9日保安院交渉・要請書と質問書

原発の配管点検に関する保安院への緊急要請書

 美浜3号機事故では、28年間一度も点検されなかった部位が破断しました。同時にこの事故を契機に、点検リストに入っていても点検が十分になされていない部位が非常に多くあることも明らかになりました。予想外に減肉の進んでいる例も次々と明らかになっています。配管の実態がどうなっているのかが確実に把握されているとは言えない状況にあります。
 関電の原発では、点検リストに載っていながら、運転開始以来一度も検査されたことのない部位が11基で約11,500箇所もあることが明らかになりました。しかし、他の電力会社では、そのような部位がどれだけあるのかさえ明らかにされていません。
 また、点検したことがある部位でも、前回点検からすでに10年ほどの間点検していない部位もあります。事実、敦賀2号では、運転中の10月15日に2次系配管で漏えいが起きましたが、その部位は1990年3月の前回点検から14年以上も点検されないままになっていました。
柏崎刈羽原発は地震でも、強い余震が何度も起こる中でも停止されないまま、7号機だけはついに自動停止しました。配管にも微少な亀裂が入っている可能性があるため、すべてを止めて直ちに調査する必要があります。さらに、地震はどこでも起こる可能性があるため、すべての配管の実態を緊急に調査する必要があると考えます。
これらの理由から次の点を緊急に要請します。

要 請 事 項
1.柏崎刈羽原発をすべてすぐにとめて配管などの点検をするよう指示してください。点検については、安全に関わる重要箇所以外は、余震発生の終息が宣言されてから行なうようにしてください。
2. 配管の偏流の起こる部位で、運転開始以来一度も点検したことのない部位がどれだけあるか、及び点検しなかった理由について各事業者から報告を求めてください。
かつ、その部位を直ちに点検するよう指示してください。
3.点検したことはあるものの、前回点検から相当長期(例えば8?10年以上)にわたって点検がなされていない配管部位がどれだけあるか各事業者から報告を求めてください。
かつ、その部位を直ちに点検するよう指示してください。
4.これら事業者からの報告内容について直ちにすべて公表してください。

2004年11月9日
賛同:

【北海道】反核・反原発全道住民会議、岩内原発問題研究会【宮城】原子力発電を考える石巻市民の会、みやぎ脱原発風の会【福島】脱原発福島ネットワーク【新潟】柏崎原発反対地元三団体、みどりと反プルサーマル新潟県連絡会、プルサーマルを考える柏崎刈羽市民ネットワーク【東京】福島老朽原発を考える会、原子力資料情報室、ストップ・ザ・もんじゅ東京、東京電力と共に脱原発をめざす会、ふぇみん婦人民主クラブ【中部】浜岡原発を考える静岡ネットワーク、核のゴミキャンペーン・中部【福井】原発設置反対小浜市民の会、原子力発電に反対する福井県民会議【関西】美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会、日本消費者連盟関西グループ、原子力防災を案じる阪神間住民の会、脱原発へ!関電株主行動の会、さよならウラン連絡会、グリーン・アクション、脱原発わかやま【中国】原発はごめんだヒロシマ市民の会、原発いらん!下関の会、米子市政研究会、広島県芸南地区火電阻止連絡協議会、原発に反対する上関町民の会、上関原発を建てさせない祝島島民の会【四国】原発さよなら四国ネットワーク、原発さよならえひめネットワーク、原発なしで暮らしたい松山の会、愛媛環境ネットワーク、伊方原発反対八西連絡協議会有志、伊方原発反対八幡浜市民の会、八幡浜原発から子供を守る女の会、放射能を憂慮する市民の会、阿部悦子と市民の会、新社会党愛媛県支部【九州】脱原発ネットワーク・九州、九電消費者株主の会、北九州から脱原発社会を考える会【個人】あさのはじめ、岩川保久、末田一秀、さとうみえ、真野京子

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美浜3号機事故に関する「中間とりまとめ」等を踏まえた質問書

経済産業大臣 中川昭一 様
原子力安全・保安院長 松永和夫 様

2004年11月

[1]関西電力が9月27日と29日に発表した「対策」について
1.「中間とりまとめ」の当面の対策や、中川経産大臣による関電への厳重注意文書では、「的確な外注管理の実施」を行うことが主要な対策の一つになっています。しかし、関西電力は27日に、「肉厚測定作業を除く2次系配管肉厚管理業務は、当社が自ら全て実施することとし、必要なシステムを含め、協力会社から当社に移管する」(12月末までに実施)との独自の方針を発表しました。

 関西電力のこの対策内容は、外注管理を的確にせよという貴院の指導内容と異なるのではありませんか。また、関電のこの措置によって、国の対策等は事実上意味のないものになるのではありませんか。

 貴職は、「品質保証、保守管理が機能していない」関西電力が、配管管理業務を行うことを認めるのですか。

2.9月29日に関電が発表した対策では、現行の管理指針の方式「余寿命が2年以下の場
合は取替計画を立案し、耐食性材料(SUS304等)等と取替えるものとする」に替えて、「余寿
命が5年以下の場合は点検補修計画を立案するとともに、取替・溶接補修(内面肉盛補修)ま
での間は、毎年点検を継続する。なお、減肉が進行する場合は、余寿命がゼロとなる前に取替
・補修を実施する」となっています。すなわち、「取替」の替わりに「取替・溶接補修(内面
肉盛補修)」を行うことにしていますが、この点をどう評価していますか。

[2]福島第一原発5号機の減肉に関する貴院の見解(10月7日付)について

1.福島第一原発5号機の配管は、実際に測定した値と管理方針に基づく評価により、現在既に技術基準の必要最小肉厚を切っていると見なされ、電気事業法第39条に違反している可能性があり、直ちに運転を停止させるべきではないか。「仮に技術基準上の最小許容肉厚に達したとしても、これがただちに安全上の問題に結びつくことはない」との理由で運転継続を容認するのは、自らの規制の法的基準を否定し、原発の運転にあたり、法令を順守させるという保
安院の最低限の職務を放棄するものではないか。

2.保安院は見解において、減肉が局部的であるとしているが、いったいどうなれば「局部的」というのか。厳密にどのように規定されているのか。美浜3号機事故について保安院が作成した「中間とりまとめ」では、局部減肉の評価方法については今後の課題という位置付けになっており、現在は保守的に全周減肉とみなして判断することになっているのではないのか。

3.保安院は見解において、東電が評価に用いた0.6ミリ/年という減肉率が、保安院がPWRで解析した0.2?0.3ミリ/年より大きいことを理由に、減肉率が過大に評価されている可能性を指摘している。しかし、東電の評価は測定値に基づき算出した事実であるのに対し、保安院の解析は電力会社の側で選んだわずかな例の平均値をとったものである。このような数値を都合よく使って、事実を無視することはできないのではないか。

[3]「中間とりまとめ」の内容について

1.PWR管理指針等の評価について

 「中間とりまとめ」では、「PWR管理指針」は「概ね妥当なものと評価される」と結論づけています。これは前回確認したように、美浜3号機は別として電力会社が任意に提出した各原発につき1つの減肉データを基に出された結論です。また、BWRについは、「BWRの減肉率はPWRを下回っている」と結論されています。

(1)なぜ、電力会社が任意に選んだ少数の減肉率データだけから、PWR管理指針は概ね妥当だという一般的な結論が出せるのですか。各原発について最大減肉率を示すデータを徴収し、それで管理指針を見直すことをなぜしないのですか。

(2)女川原発1・2号機の減肉について

ステンレス鋼に取替えても年間3ミリに至る激しい減肉が止まらないという事例が明らかになった以上、美浜原発3号機事故「中間とりまとめ」の「PWRとBWRでは減肉の傾向が異なり、BWRの減肉率はPWRを下回っている。」との記述は削除すべきではないか。BWRの減肉管理のあり方については、女川や福島の事例を含めた上で検討をやり直す必要があるのではないか。

美浜原発3号機事故調査委員会では、配管の減肉管理のあり方が検討課題となっているのに、この女川の件を取り上げようとしないのはなぜか。現在の減肉管理の範囲外の事例であるのならば、なおさらこの問題を議論し、減肉管理の見直しに反映させるべきではないか。

2.二次系の定期事業者検査の実際について

 福井県知事から経産大臣に出された「要請書」(9月24日付)では、「今回の事故については、二次系設備の管理を事業者の自主的な点検に任せるという国の制度自体にも問題があると考えている」と記されています。このことに関連して、以下を質問します。

(1)「中間とりまとめ」のP30では、「事故における破損箇所を含む二次系配管は、・・平成15年10月から電気事業法に基づいて事業者に義務付けられた定期事業者検査の対象となっている」とあります。破断した配管部位が、国の法律等のどこで検査対象と規定されているのか、具体的に示してください。

(2)保安院は、平成15年11月14日付通達「原子力発電所に属する蒸気タービン及び補助ボイラーに係る電気事業法施行規則第94条の3に基づく定期事業者検査の解釈について(原院第2号)」(以下「通達」という)を出しています。

この通達では、PWRの「2次系配管検査」の検査の方法について、「外観検査及び非破壊検査を実施する」と指定されています。その「非破壊検査」の内容は、「配管の代表部位について肉厚測定を行い必要最小肉厚以上あることを確認する」とだけ書かれています。

 ・「配管の代表部位」とは何を指すのですか。
 ・肉厚測定の頻度などは何も書かれていませんがなぜですか。
 ・電力会社の「管理指針」についても触れられていませんがなぜですか。
 ・配管の健全性は、上記内容で確保されるという考えですか。

この「通達」では、BWRのタービン設備の配管検査について、「漏えい検査」のみが指定されています。その「漏えい検査」の内容は、「漏えいまたはその形跡、き裂、変形等の有無を目視により確認する」と規定されています。配管の健全性は「目視検査」のみで確保されるという考えですか。

(3)2次系配管の検査については、基本的に電力会社にまかせ、国として2次系配管の検査を軽視していたことが、今回の美浜事故の原因の一つでもあります。そのことを踏まえ、2次系配管を「定期検査」の対象とすべきではないですか。

3.2次系配管の未点検箇所の検査について

 貴院の8月11日付け原発に関する報告徴収では、「点検リスト漏れ」の有無を報告させただけです。リストに記載されていても、例えば関電の11基の原発では、未だ一度も検査されたことのない部位が約11,000箇所もあり、その大部分はその他系統に属すると見なされています。その他系統は減肉が起きないはずの部位ですが、大飯1号では、まさにその他の部位で大幅な減肉が発生しました。減肉の検査をしない限り、配管の実態を把握することはできず、対策も立てることができません。

 全ての電力会社に対し、2次系配管の未点検箇所がどれだけあるかを早急に報告徴収し、そのすべてを直ちに点検するよう指示すべきではありませんか。

 点検した部位であっても、前回点検からすでに10年以上経過している箇所もあるものと考えられます。そのような部位についても実態を掴み、直ちに点検するよう指示すべきではありませんか。

4.美浜発電所の保安規定違反について

 「中間とりまとめ」26?27頁では、現在の美浜発電所の保安規定では、「「点検リスト」を作成しなければならないことを規定しています。しかしながら、「『点検リスト』として体系的に作成し、統一的に管理するという基本的対応が未整備であった」と書かれています。このことは、美浜発電所が保安規定に違反していることを示していると思われますが、貴院としてもそのような評価ですか。

5.大飯1号の違法運転について

 大飯1号では、今年6月からの定検で、2次系主給水管エルボ部で国の技術基準を大幅に下回るほどの減肉が見つかりました。大飯1号は恐らく5年以上もの間、違法状態で運転していました。このような違法運転について、貴院は関電に対しどのような処分を行ったのですか。

6.保安院からの指示による点検について

「中間とりまとめ」表5の「保安院からの指示による点検状況」欄にある対象25例について、どのような問題があったために点検の指示を出したのか、それぞれについて具体的に明らかにしてください。

貴院は「中間とりまとめ」で、大飯1号を除く19箇所のうち美浜1号と2号の3箇所を除く他の16箇所については「いずれも問題がないことを確認した」と述べています。しかし、例えば大飯2号では4年前に余寿命ゼロで違法運転をしている場合もあったのではありませんか。なぜ、16箇所は問題がないと判断できるのですか。

7.ランクCへの格下げについて

 貴院は9月27日、美浜1号、高浜3号、大飯2号の3基の「定期安全管理審査の評定結果」をBからCに格下げしました。

 Cランクとは、「当該審査を受けた組織は、定期事業者検査の実施につき重大な不適合があり、品質マネジメントシステムが機能していない」と規定されています。このことは、関西電力の品質マネジメントシステムが機能していないために取られた措置と理解してよろしいですか。

 ランクCへの格下げは、関西電力には原発を運転する的確な能力がないということと同意義と理解していいですか。その場合、関電の運転許可を取り消すべきではありませんか。

 高浜3号もランクCに格下げになりました。貴院は今年2月に高浜3・4号でのプルサーマル再開について行った立入検査等の結果、「社長をトップとした品質保証体制は整っている」との評価を行いました。この2月の貴院の評価は間違っていたということになりますが、この点について貴院の責任を明らかにしてください。

 貴院の「中間とりまとめ」では、事故の直接的原因として「関西電力(株)の品質保証、保守管理が機能していなかったこと」と指摘されています。また、貴院が行った高浜3号等の定期安全管理審査に係る評定では、事故後BランクからCランクへと格下げとなっています。その理由は「当該審査を受けた組織は、定期事業者検査の実施につき重大な不適合があり、品質マネジメントシステムが機能していない」というものです。しかし、関西電力は11月2日の市民との交渉の場で、「保安院の指摘は認められない」とはっきり述べ、「問題があったのは、配管の肉厚管理に関する品質保証だけ」との見解を明らかにしました。この関西電力の見解は、貴院の指摘をもないがしろにするものです。関電に対して、なんらかの指導を行うべきではありませんか。

8.老朽化対策について

 今回の事故の背景には、老朽化した原発で、基準を恣意的にゆるめたり、検査を手抜きしたり、定期検査を短縮する等の経済性最優先の運転があります。しかし「中間とりまとめ」では、事故の直接的背景として「3者による管理ミス」とだけ規定し、これら老朽原発の危険な運転の実態から目を逸らしています。福井県は9月24日付の経産大臣宛の要請書で、「正に美浜3号機の事故は高経年化対策を怠った事故である」と規定し、老朽炉に対する「安全対策に万全を期すよう」要請しています。
 福井県からの要請があるにもかかわらず、「中間とりまとめ」で老朽化対策が具体的に示されていないのはなぜですか。

9.点検リスト漏れの経緯について

 「中間とりまとめ」では、リスト漏れの経緯については今後調査を継続するとなっていますが、その内容について質問します。

 8月11日の日経夕刊及び12日の福井新聞によれば、三菱重工業(株)は日本アームに対して、1999年4月と2000年8月に、検査漏れの指摘や破断した配管部が減肉する可能性があるため検査が必要であることを文書で知らせ注意を喚起していたと報じています。この内容について貴院は三菱重工業(株)に調査を行いましたか。
調査した場合、その結果を明らかにしてください。

 泊原発1号機でも当該オリフィス下流部がリストから漏れていたにもかかわらず、1995年にはリストに復活したと「中間とりまとめ」には書かれています。その経緯を具体的に明らかにしてください。

 同様に、敦賀2号でも当該オリフィス下流部がリストから漏れていたにもかかわらず、2000年にはリストに復活したと「中間とりまとめ」には書かれています。その経緯を具体的に明らかにしてください。

 8月30日付の報告徴収では、日本アームに対する指示事項として、「保守点検を的確に遂行し得る能力を有していることの説明」という項目があります。この項目について、日本アームからどのような説明があったのですか。

 日本アームの説明を受け、貴院は日本アームに対し「的確に遂行し得る能力を有している」と判断したのですか。

 8月17日付「福井新聞」では、日本アームの社員の話として、高浜4号と美浜1号でも当初オリフィス下流部がリストから漏れていたが、その後確認され、それぞれ1998年と2002年に肉厚測定を行ったと記載されています。この内容について、貴院は調査しましたか。

10.作業者の安全確保について

 美浜3号機事故では、8月14日から定期検査が開始される予定でした。しかし、その前の原発が運転している状況の中で、定検のための作業が行われていました。そのため、多くの犠牲者を生み出すことになりました。
 定期検査の期間は、「電力系統から解列した日から検査の最終段階に行われる総合負荷検査終了の日まで」と決められています。明らかに定検の作業でありながら、解列前の作業を「準備作業」と呼ぶのは、単なる形式的な区別でしかありません。
 「中間とりまとめ」では、「運転中に定期検査準備作業のため作業員がタービン建屋で作業していたことが直ちに問題となるものではない」と、運転中の定検作業を容認しています。

 定期検査準備作業と定検作業とはどのように区別されるのですか。

 原発が運転している状況で、定検の作業を行うことは違法ではないのですか。

 いつから、原発が動いている状態で定検の作業を行うようになったのですか。監督官庁としてその実態を把握し、公表してください。

 福井県は、9月24日の経産大臣への「要請書」でも作業者の安全を第一に確保するよう要請しています。定期検査の作業はすべて、原子炉を止めてから行うよう、全ての電力会社に指導すべきではないですか。

 また「中間とりまとめ」では、「作業環境の潜在的リスクを周知する方策として、事前研修の実施」等をあげています。事前研修を受けていれば、今後死傷事故には巻き込まれないということですか。

[4]国の責任について

1.国の責任の内容について
 5名もの死者を出した美浜3号機事故に関する、監督官庁としての国の責任を明らかにしてください。中川大臣は、9月27日午前の記者会見で、「もちろん経済産業省、行政の責任者として責任をとらなければいけない」「経済産業省、行政にとっても一つのいい教訓になった」と述べています。この「責任」の内容を明らかにしてください。