余剰プルトニウム 削減目標を具体的に示せ
『原子力資料情報室通信』第531号(2018/9/1) より
余剰プルトニウム 削減目標を具体的に示せ
原子力委員会は7月31日に「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方」(以下、「考え方」)を決定した。2003年の同名の考え方の改定版と言える。03年バージョンは、利用目的のないプルトニウムを持たない原則への国際的な理解を深めるために透明性の確保が重要だとして、プルトニウム保有量をkg単位で示すと同時に、電気事業者が六ヶ所再処理工場においてプルトニウムを分離する前に利用計画を公表し、原子力委員会がこれを承認するとしていた。利用計画を明確にすれば余剰ではないとの立場だった。
今回の「考え方」ではさらに踏み込んでプルトニウム保有量の削減を盛り込んだ。六ヶ所再処理工場は04年にウラン試験に入ったものの、現在に至るも竣工せず、福島原発事故によってプルサーマル計画も計画通りには進展しないことが明らかとなっている。特にプルトニウム保有量が最大の東京電力の利用見通しが無くなった。事故でプルサーマル燃料はメルトダウンし、福島県内10基の原発の廃炉となった。柏崎刈羽原発においてはプルサーマル燃料32体が3号機に運び込まれたまま使用されずに18年が経過している。同炉は07年の中越沖地震以降停止したままであり、実施見通しはまったくない。
プルトニウム保有量は03年の「考え方」当時に40.6トンだったが17年末には47.3トンに増加している。海外の目は厳しさを増しており、また、再処理の保有を求める他国が日本を事例に再処理技術開発の正当性を主張している。韓国、イランなどがその事例である。
原子力資料情報室は余剰プルトニウムへの削減と根本的な解決策としての再処理廃止を求めて、17年2月に国際プルトニウム会議を主催し、続いてNPO法人新外交イニシアティブと協力して米国議会への働きかけを3度にわたって行ってきた(本誌520号、530号参照)。他にも、例えば、長崎大学核兵器廃絶研究センター(鈴木達治郎センター長)やマンスフィールド財団などが核不拡散の観点から日本の余剰プルトニウムを問題としてきた。こうした活動から米国側でも余剰プルトニウムへの懸念を表明しやすくなったのだろう。報道によれば、米国側が保有量の削減を求めてきている。
こうした状況が背景となり、「削減」が「考え方」に盛り込まれた。第5次エネルギー基本計画にも削減の文言が入った。しかし、問題は確実に削減されるかどうかである。
原子力委員会が考える削減は、プルサーマルの確実な実施であり、それに見合った再処理量の調整である。この対応で保有量を必要最小限にするというが、曖昧である。文中に保有量は現状より増えないとの認識もしめされ、現状追認となりそうだ。先の報道によれば、米国からの削減要請に対して、日本側は上限確定案で対抗しているという。だからこそ、必要最小限量を具体的に示すべきであった。
「考え方」は六ヶ所再処理工場の稼働を正当化するために「削減」を盛り込んだと見ることもできる。しかし、六ヶ所再処理工場での処理量を減らしても同工場の運営費用は変わらず、結果は拠出金の取崩となり、近い将来に拠出金を使い切り、再処理されなかった使用済燃料が残る結果となるだろう。 これに関して経産省は責任をとれるのだろうか?
ところで、研究用のプルトニウムに関して「当面の使用方針が明確でない場合には、その利用又は処分等の在り方について全てのオプションを検討する」と言及しているが、東海再処理工場内に貯蔵されているプルトニウムについて処分の在り方を検討することを求めるとっかかりとしたい。
(伴英幸)